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個人よりもメダル優先? 配慮欠く陸連「出場制限」案、選手のモチベ低下懸念も...

   日本陸上連盟は2019年12月16日、都内で理事会を行い、2020年東京五輪の100メートル、200メートル代表選考基準について選考要項を提案した。

   原則として個人種目はひとり1種目のみとするもので、400メートルリレーでのメダル獲得を目的としたもの。来年3月までに方針が決定される見通しだが、陸連の一方的な提案に対して選手、関係者から不満の声が上がり波紋を広げている。

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400メートルリレーでの金メダルを優先するあまり

   個人種目を制限してまで陸連が目指すのは400メートルリレーでの金メダル獲得だ。個人種目の競技日程を考慮し、リレーに出場する選手の肉体的負担を軽減させるのが大きな目的となる。現場から反発の声が上がるのは覚悟の上での提案だというが、当の選手から早速、反論の声が上がっている。

   100メートル、200メートル、リレーの3種目で代表入りを目指すサニブラウン・ハキーム(20)=フロリダ大=は、陸連のリレー重視の選考要項に反論する形で持論を展開。五輪はあくまでも個人種目があってこそのもので、リレーはその次に来るものと説明。また、個人で成績を残すことでリレーに対するモチベーションが上がるという独自の見解を示した。

   男子400メートルリレーは、日本の陸上競技でメダルが望める数少ない種目のひとつで、しかも自国開催の五輪ということで陸連が強化種目とするのは当然のことだろう。実際のところ、リレーは5大会連続で入賞しており、2008年北京五輪、16年リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得。東京五輪では競歩、マラソンと並んでメダル獲得が期待される種目となる。

選手の「価値観」への尊重欠く判断

   選手にとって五輪でのメダル獲得は最大の目標となるが、その一方で各個人が設定している目標はそれぞれ異なる。100メートル、200メートルに出場する日本選手の大きな目標となるのは決勝進出だろう。今回の陸連の提案は、メダルが全てであるといわんばかりの強引なもので、選手への配慮に欠けたものだと言わざるを得ない。

   日本オリンピック委員会(JOC)は、東京五輪での金メダル獲得目標を史上最多の「30個」に設定し、金メダル獲得数で世界3位を目指している。これまで日本が獲得した金メダルの最多は、1964年の東京五輪と2004年アテネ五輪の16個。過去最多となる数字のほぼ倍の数を設定していることから、JOCの意気込みがみてとれる。

   他競技の関係者は「どの競技もそれなりの重圧がある。金メダルの可能性があるリレーに全力を注ぎたいという陸連の気持ちはよくわかるが、選手の選択肢を限定してしまうのは行き過ぎだろう。選手のモチベーションも心配ですね。陸連の今回の提案は、メダル至上主義といわれてもしかたないもの。再考に値する事案だと思います」と指摘する。