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ゴーン会見、欧米メディアの反応は 「説得力ある主張を」「逃走劇は本題にあらず」

   前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(63)が2020年1月8日に逃亡先のレバノン・ベイルートで開いた記者会見では、朝日新聞、テレビ東京、小学館の3社を除く日本メディアの大半が締め出された。自らに批判的なメディアを排除することで、同情的な世論の形成を狙った可能性もありそうだ。

   その結果、ゴーン被告は日本の司法制度をめぐる問題点をアピールするのは一定程度成功したとみられる。ただ、欧米メディアからはゴーン被告の説明不足を指摘する声も相次ぎ、自らの無罪主張は必ずしも浸透しなかったようだ。

  • 欧米メディアはゴーン被告の主張をどう受け止めたのか(2014年撮影)
    欧米メディアはゴーン被告の主張をどう受け止めたのか(2014年撮影)
  • 欧米メディアはゴーン被告の主張をどう受け止めたのか(2014年撮影)

「多くの法律専門家が、日本の司法制度をめぐるゴーン被告の懸念を共有」

   日本の司法制度をめぐるゴーン被告の主張に一定の理解を示したのがワシントン・ポストで、「ゴーン被告、日本の司法制度を『腐敗している』『非人道的』と非難」の見出しを掲げた。記事では、起訴が日産と検察の共謀によるものだというゴーン被告の主張に「主張は不合理で事実に反する」などと反論する東京地検の斎藤隆博次席検事によるコメントを紹介した上で、

「それでも多くの法律専門家が、日本の司法制度をめぐるゴーン被告の懸念を共有している。一方で、多くの外国企業の幹部は、実力とコネのある日本のビジネスパーソンが、日本の司法制度で似たような扱いを受けることは考えられない、と話している」

などと指摘した。

   BBCはゴーン被告のプレゼンテーションぶりを高く評価。どういった論点に注目が集まるかを含めてゴーン被告側がコントロールに成功していると分析している。

「目を引くパフォーマンスだった。ゴーン被告はもはや自動車業界のスターではないが、真実が何か、容疑の有無にかかわらず、今でも明らかに会見場を引き込む方法をわかっている」
「彼の主張は詳細に調べられるだろうし、間違いなく日産と日本政府は反応するだろう。だが、彼は間違いなく議論の主導権を握っている。ドラマチックな逃走劇と結び付けて、見事にそうしてみせたのだ」

「もし真剣に潔白を証明したいのなら...」

   だが、こういった見方は少数派だ。ゴーン被告は2時間30分にわたる記者会見で、無罪を示す具体的な証拠や書面を示すことはなかった。この点を念頭に説明不足を指摘する声も出た。ニューヨーク・タイムズは、「カルロス・ゴーン、犠牲者なのか悪党なのか」と題した論説記事で、

「もしゴーン被告が真剣に潔白を証明したいのであれば、劇場型記者会見で行ったよりも、はるかに説得力のある主張をする必要がある。日本は、司法制度に根本的な再考が必要かどうか、吟味する必要がある」

として、ゴーン被告と日本側双方の説明責任を指摘した。

   ブルームバーグは、

「公平を期して言うならば、少なくともゴーン被告は、記者会見を司法からの逃走をめぐるドラマチックな詳細を披露する場には使わなかった(おそらく、ネットフリックスの映画のためにとっているのだろう)。なぜならば、それがどんなにエキサイティングなものであろうとも、それが本題ではないからだ」

などとして、記者会見では「本題」にあたる、自らの容疑をめぐる疑問に答えられていないことを指摘。メディアや法廷での説明が必要だとして、次のように記事を結んだ。

「いずれにしても、法の裁きは下されなければならない」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)