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LINE MUSICの「全曲無料フル再生」 ポイントは差別化でなく「業界浄化」にあり

   音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC」が、無料ユーザー向けのサービスを強化した。

   「全曲無料配信」とも言える新機能は、競合との差別化を図るためと思いきや、主目的は別のところにあるようだ。

  • LINE MUSICが「浄化」に乗り出した
    LINE MUSICが「浄化」に乗り出した
  • LINE MUSICが「浄化」に乗り出した

これまでの無料再生は「30秒間だけ」

   LINE MUSIC(東京都新宿区)は2020年1月20日、同社運営の同名サービスに「独自フリーミアムモデル」を導入した。LINE MUSICには、無料と有料(月960円)の2プランがあるが、これまで無料ユーザーが楽曲再生できる時間は30秒間に限られていた。しかし20日以降は、約5900万の収録曲それぞれが、月1回までに限り、フルコーラスで聞けるようになる(1回フル再生すると、翌月1日まで30秒制限)。なお、オフライン保存などの機能は、引き続き有料会員に限られる。

   「フリーミアム」とは、フリーとプレミアムを組み合わせた造語。基本機能は無料で提供し、有料オプションを設けることで収益をはかる考え方で、00年代後半から使われている。今回の施策は「フリー」の部分を広げるものだ。

   ただ、競合サービスにも、フリーミアムが導入されている。たとえばSpotify(スポティファイ)の無料プランでは、LINEのように「月1回」の制限がなく、全曲をフルコーラスで聴取できる。一方で、無料版でのフルコーラス聴取はランダム再生に限られ、好きな曲を選んで、フルで聞くには有料プラン(月980円)に入る必要がある。

違法音楽サービスへ「明確にNo」

   このようなライバルの動向とあわせて見ると、今回のフリーミアム導入は「他社との差別化」ではないことがわかる。LINE MUSICが敵視したのは、ウェブ上にはびこる違法音楽サービスだ。同社の舛田淳社長は1月21日、「恐れるではなく、アーティスト、ファン含め音楽業界として、明確にNoを突きつけなければいけないということです」とツイート。はっきり対決姿勢を見せた形だ。

   Playストア(Google)やAppStore(アップル)といったスマホアプリサイトには近年、アーティストの許諾を得ずに楽曲を無料配信するアプリが相次いで登場している。これらは度々、両サイトのランキング上位にあがり、ユーザーからの「5段階評価」も高い。その一方で、著作権上の問題が指摘されていて、19年7月には日本レコード協会などの業界団体と、LINE MUSICなどの事業者がアップルに対して、アプリ審査の強化と、迅速な削除対応を要請している。

   違法サービスが支持される理由は、「タダで聞ける」ことにある。アプリ名でツイッター検索すると、10代と思われるユーザーを中心に、「お金がないから使う」といった擁護が見られる。今回のLINE MUSICの施策によって、音楽ストリーミング市場は浄化されるか。その成否は、まずターゲット層の著作権意識を向上させられるかにかかっていそうだ。

(J-CASTニュース編集部 城戸譲)