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台湾、パニック鎮めた「すごい」マスク購入システム 実名&アプリ連動で転売封じる

   新型コロナウイルスの報道が日に日に増加する中、台湾の防疫政策がネット上で注目を集めている。

   その中でも「マスク購入システム」が近未来的であることを、皆さまはご存じだろうか。

  • 左:「『マスクありますか』ってもう聞かないで!!店主の喉はもう限界です」と書かれた張り紙(筆者撮影)/右:アプリで最寄りの店舗を確認した結果。簡単にマスク情報が手に入る
    左:「『マスクありますか』ってもう聞かないで!!店主の喉はもう限界です」と書かれた張り紙(筆者撮影)/右:アプリで最寄りの店舗を確認した結果。簡単にマスク情報が手に入る
  • 左:「『マスクありますか』ってもう聞かないで!!店主の喉はもう限界です」と書かれた張り紙(筆者撮影)/右:アプリで最寄りの店舗を確認した結果。簡単にマスク情報が手に入る
  • 実際のアプリの利用画面

1月末までは争奪戦だった

   1月24日を「大みそか」とした春節の少し前から警戒態勢に入り、現在は全世界で不足するマスクを実名制で販売するなど先手先手の対策を打った台湾。2020年3月3日現在の感染者数は41人、死亡者は1人、小中高の一斉休校は終了し、ほぼ通常通りの生活を送っている人がほとんどだ。マスクや日用品の買い占めや高額転売も起こっていない。

   しかし、台湾とて初めから混乱がなかったわけではない。新型コロナウイルスが中国の武漢で発生したと報道されると同時に、ウイルスの流行を恐れた民衆はマスクを求め始める。

   マスクを販売している病院や薬局には連日長蛇の列が出来、ネットには「マスクが買えません...」といった声が溢れていた。ちょうど、現在の日本と同じ状況だった。

マスク買い上げで実名制販売

   この間にも、芸能人や野党による失言で様々な炎上騒動が起こり台湾メディアは、これを「マスクの乱」と名付けている。「そろそろマスクが通貨になる」と揶揄されていた2月6日、政府はマスクを全て買い上げ、実名制で販売すると宣言した。

   その方法・及びルールは台湾衛生福利部疾病管制署によれば下記の通りである。

(1)一人につき、一週間に購入できる数は2枚。
(2)身分証番号(日本でいうマイナンバーカードに相当)の下一桁により購入できる日数が異なる。
奇数(1、3、5、7、9):月曜日、水曜日、金曜日
偶数(0、2、4、6、8):火曜日、木曜日、土曜日
(3)日曜日は番号問わず、全ての人が購入可能。
(4)1人につき、1人分の代理購入が可能(ただし身分証は要持参)。
(5)販売店舗には、毎日大人用マスクが200枚、子供用マスクが50枚ずつ入荷する。

   この方法が実行されたのは2月6日。騒動が始まってから約2週間後だ。そこから約1か月経った3月2日現在は12歳以下の子供が一週間につき5枚、大人が3枚ずつ購入可能となっている。

リアルタイムの検索が可能

   また画期的な取り組みの一つとして「リアルタイム検索」が挙げられる。 今現在、どの店に、何枚マスクの在庫が残っているのかを、台湾に住む人々はLINEなどのアプリで検索することが出来る。

   まず、専用のIDを友達追加し、「マスク」と入力すると「現在地周辺の提携店舗のマスク在庫を検索する」というボタンが表示される。そして、「本日はこれらの身分証ナンバーの方が購入できます」という情報と共に最寄りの提携店舗が複数ピックアップされ、リアルタイムで在庫を教えてもらえるのである。

   こうすることによって、「行ったけど買えなかった...」という思いをせずに済む上、 無駄な外出や長蛇の列による感染リスクが大幅に低下する。

   最寄りのマスクがどこにあるのか知るまでかかった時間は約30秒。操作もシンプルでわかりやすい。この他にも、フェイスブックで同様のシステムが利用できるほか、iPhoneユーザーならば「Hey Siri、マスクの販売状況を教えて!」と言うだけで同じく最寄りの店舗在庫が表示される。

86%が「政府の対応に満足」

   現在、人口約2300万人の台湾で製造されるマスクは、現地大手ニュース番組「三立新聞台」によると一日に820万枚。医療現場で使用されるN95マスク及び防護服も十分に足りているそうで、今後は更に製造数が増える予定だという。

   これらの防疫に関する調査を台湾のニュースサイト・「ETtoday」が2020年2月27日から3月1日にかけて行ったところ、アンケートに答えた人の86%が「政府の対応に満足している」という結果が出た。

   ここ2週間が正念場だと言われる日本は、台湾に続くことが出来るのだろうか。

(フリーライター 室園亜子)