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東ティモールが新型コロナで「鎖国」状態 現地の状況は...?

   新型コロナウイルスの感染拡大で、赤道直下の小国、東ティモールが孤立状態になっている。空路でつながっているシンガポール、インドネシア、オーストラリアの3か国が、トランジット(乗り継ぎ)を含めて外国人の入国を認めなくなった上、東ティモールも自国民を含めて入国を認めなくなったためだ。

   2020年4月14日時点で確認された感染者数は6人にとどまっているが、東ティモールの医療体制は脆弱で、新型コロナに対する警戒感は強い。

  • 東ティモールの首都、ディリでは商店の8割が休業し、閑散としている(写真は浦善孝神父提供、3月31日撮影)
    東ティモールの首都、ディリでは商店の8割が休業し、閑散としている(写真は浦善孝神父提供、3月31日撮影)
  • 東ティモールの首都、ディリでは商店の8割が休業し、閑散としている(写真は浦善孝神父提供、3月31日撮影)
  • バスの運行も禁止され、運休が続いている(写真は浦善孝神父提供、3月31日撮影)

滞在する日本人はJICAやNGO関係者が多い

   東ティモールはポルトガルの植民地支配やインドネシアによる統治を経て02年に独立。「アジアで最も新しい国」として知られる。

   農業が主な産業で、人口は約120万人。大半がカトリック教徒だ。「海外在留邦人数調査統計」によると、東ティモールに滞在する日本人は18年10月時点で135人。日本はオーストラリア、アジア開発銀行(ADB)に次いで多額の援助をしていることもあって、国際協力機構(JICA)や非政府組織(NGO)関係者が多い。

   首都ディリの日本大使館によると、新型コロナの感染拡大で出国する人も多く、現時点で東ティモールにとどまっているのは約70人。全員と連絡が取れる状態だと説明している。

5人以上の集会やバスの運行は禁止、学校も立ち入り禁止に

   東ティモールは、新型コロナウイルスの感染者がいる国からの外国人の入国を3月18日から禁止しており、その3日後の3月21日に国内で初の感染者が確認された。3月27日にはル・オロ大統領が「非常事態」を宣言。これにともなって、商業施設の営業は認められるものの、3月29日以降は、マスクを着けて入店前には手を洗い、他の人と2メートル程度距離を開けることを求められるようになった。5人以上の集会(葬儀は10人以上)、バス等の集団旅客移動手段の運行は禁止され、学校は休校に。学校施設への立ち入り禁止もできなくなった。

   4月10日には、インドネシアから陸路で入国してきた11人のうち1人の感染が判明。このケースとは別に、4月13日と14日に2人ずつの感染が確認された。累計の感染者数は6人で、そのうち最初に確認された1人については、すでに退院しているという。

   4月13日には、自国民を含めて入国を認めない措置が始まった。事実上の「鎖国」で、毎週水曜日に2時間だけインドネシアとの国境を開けて東ティモール人の帰国を受け入れたり、医薬品などを運ぶための飛行機がオーストラリア北部のダーウィンまで週3便運航されたりする以外は、事実上国外との接触は断たれることになる。

「商店は8割閉店」でも「人の殺到は見かけない」

   日本大使館では、

「現時点では買い占めなどは起きていない。スーパーに、ものはある」
「米が入りにくくなっているという話は聞くが、政府も備蓄があるという点を強調している」

などと話しており、現時点では特段の混乱は起きていない模様だ。

   首都ディリ郊外にある「聖イグナチオ・デ・ロヨラ中学・高校」で事務長を務める浦善孝神父(56)は、ブログで閑散とした首都のメインストリートの様子を伝えている。浦神父によると、「商店は8割ぐらい閉店している」が、「店に人が殺到するような様子はディリで見かけない」という。

   浦神父が勤務する学校でも、学期の途中で休校を求められたため定期試験ができず、日本と同様の成績処理の問題が浮上している。さらに、非常事態宣言で帰省する教職員もおり、4月15日支給の4月分の給与を前倒して3月末に支払った。休校が長引いた場合(1)授業料を規定通り徴収できるか、それとも割り引く必要があるか(2)その場合は教職員への支給額はどうするのか、といった問題への対応が必要だという。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)