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立命館、学生などに「総額25億円」の緊急支援 1人最大12万...政府へ働きかけも

   学校法人立命館は2020年4月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大にともない、総額25億円の緊急支援を実施すると発表した。法人が運営する大学~小学校の学生・生徒・児童全員に一律3万円ずつ支給することに加え、家計が急変した大学生には最大9万円を支給。1人あたりの支給総額は最大12万円となる。

   このほか外出自粛中の諸活動を支援するため、オンラインでの各種プログラムも整備する。さらに政府に対しても、「効果的な支援策の検討と実施を強く訴えていきたい」との方針を示している。立命館の広報は取材に「学びや諸活動の機会が十分確保できていない現状があり、家計が急変した学生もいる中で、速やかに必要な支援をしていきたい」としている。

  • 立命館のウェブサイトより
    立命館のウェブサイトより
  • 立命館のウェブサイトより

ウェブ授業の環境整備で一律3万円、家計急変の学生にはプラス最大9万円

   支援対象は、立命館大学や立命館アジア太平洋大学、立命館中学校・高校、立命館宇治中学校・高校、立命館小学校など、学校法人立命館が設置・運営する大学・学校の学生・生徒・児童4万8580人(19年5月1日時点)。

   支援策は大きく3つ。1つ目は学園全体で5月7日からウェブ授業を実施するにあたり、ウェブでの受講環境整備支援として約16億円を支出する。具体的には、学生・生徒・児童全員に一律3万円を支給、さらに必要があればPCやルーターなどを無償貸与し、機器調達にあたる家庭の負担を軽減する。

   2つ目は、アルバイト就労ができなくなったり、家計急変によって学生生活が困難になったりする大学生(小中高生は除く)に対し、月額3万円を3か月分の最大9万円を支給する。総額は5億円程度。上記の一律3万円とあわせ、1人あたりの支給額は最大12万円となる。

   3つ目はオンラインでの学習・生活・諸活動の支援策として、約4億円で環境整備などを行う。オンラインでの就職活動支援、資格・語学講座受講支援といったプログラムや、コミュニティ支援を進める。

   こうした支援策の実施時期・方法は、今後速やかに体制を整えたうえで、支援対象の学生・生徒・児童全員に対して周知していくという。大規模な金額の支援に、ツイッター上では「感謝しかない!子供の将来守られました。私も明るい気持ちで頑張れる!」「こういう救いの手があると有難いよな」「支援が手厚くて驚かされる」などといった声があがった。

「政府に対しても、効果的な支援策の検討と実施を強く訴えていきたい」

   政府の緊急事態宣言にともない、立命館は4月8日から大学をキャンパス入構禁止と休講、小中高校を休校としている。27日の緊急支援発表には仲谷善雄総長名義のメッセージも掲載。学生らをこう激励した。

「キャンパスにおいて通常の学園生活を送れない状況が続いている中で、何よりも、夢を持って本学園に入学された学生・生徒・児童の皆さんが今、どのような思いで毎日を過ごされているかを心配しています。夢や目標から遠ざかっていくように感じられ、不安になっているかもしれません。ただ、今この状況だからこそしておくべきこと、この状況でもできることはあるかもしれません。改めて、皆さんそれぞれが学校において何を成し遂げたいのかを問い、自らの問題意識を高めてほしいと思います。また、学校や皆さん自身が世界や社会に対してどのような貢献ができるのかについて考える機会としてください」

   ウェブ授業についても「インターネットを介した形式であっても、授業の質を維持し、学生・生徒・児童の皆さんがそれぞれの学びの到達目標を達成できるよう、全力を尽くしていきます」と約束。支援については、

「今後も、状況の変化に応じて、必要な施策を検討し実施していきます。また同時に、政府に対しても、効果的な支援策の検討と実施を強く訴えていきたいと思います」

と国に働きかける方針を示している。

「家計が急変した学生もいる中で、速やかに必要な支援をするため」

   学校法人立命館の広報は28日、J-CASTニュースの取材に「立命館は7日の緊急事態宣言の対象となった大阪を含め、北海道から九州まで設置校があります。社会的責任を果たすため、入構禁止などの緊急措置をとった一方、学生・生徒・児童の学びや諸活動の機会が十分に確保できていない現状がありました。さらに家計が急変した学生もいる中で、速やかに必要な支援をするため、今回の決定・発表となりました」と話す。総額25億円という規模だが、財源は「今年度の収入予算に加え、今後はステークホルダーの皆様を対象にした寄付の取り組みをしたいと思っています」としている。

   上記2つ目の家計急変支援を受けられる大学生の具体的な基準などは、今後詳細を詰めて知らせていく。1つ目の一律3万円支給と別項目で設けたのは「設置する2大学とも、全国から学生が集まり、下宿生が多いです。政府や自治体の公的支援で親元の家計は一定程度カバーされる一方、アルバイトがなくなってすぐに生活費が必要になるなど、経済的に厳しくなっている大学生もいます。そうした状況に置かれている学生への支援です」と話した。

   上記3つ目の取り組みの1つとして、立命館は特設サイト「ビヨンド・コロナ」でオンラインコミュニティを用意しており、プログラミング教室や、各社会問題の研究会などをウェブ上で実施している。広報によると、同サイト上で在学生に悩みなどをアンケート調査したところ500件ほどの回答があり、就活の相談、食生活や生活リズムの維持、人とのつながりの希薄化など、幅広い声が寄せられた。これらをもとに「今後も新たなオンライン活用策を練っていく予定です。オンラインならではの、場所を越えたコミュニティづくりもやっていきたい」としている。

   新型コロナウイルス感染拡大に対する独自の学生支援は、複数の大学が打ち出している。早稲田大学は24日、所属の学生・生徒1人あたり10万円を支給するなど総額5億円の緊急支援を発表。明治学院大学は21日、1人あたり5万円の支給や、学費納入期限の延長などを発表している。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)