J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「今その商品は必要なのですか?」店員は問いかける 家電量販店、感染におびえながら働く人々のメッセージ

   新型コロナウイルスの感染拡大で、短縮営業に留まった大手家電量販店の店員らから、不要不急の客が次々に来店して感染が怖いと、ツイッター上やJ-CASTニュースの情報提供フォームにSOSが相次いでいる。

   いったん休業したのに再開したり、感染者が出た店を2日の休業に留めたりしたことに、不満の声も多い。大手のヨドバシカメラとビックカメラの2社に話を聞いた。

  • 笑顔で接客も、心の中は…(写真はイメージ)
    笑顔で接客も、心の中は…(写真はイメージ)
  • 笑顔で接客も、心の中は…(写真はイメージ)

「フラフラしてる市民のたまり場でしかない。でも働くしかない」

   ヨドバシカメラは、横浜店で2020年4月7日にメーカー販売員が陽性と分かったが、臨時休業は2日後の9日からだった。同社は事実確認に時間がかかったと説明したが、様々な憶測を呼び、休業や時短に取り組んでいないことも批判された。

   同社は、直後に全店の短縮営業を発表し、緊急事態宣言の出た東京都などで休業も検討していると明かした。その後、14日から7都府県の16店で休業したが、10日ほど経った24日には営業を再開した。同社サイトによると、生活必需品やそれに準じた商品を扱う家電、テレビ、オーディオ、パソコン、自転車などの売場に限定して、感染防止対策を取ったうえで営業している。

   これに対し、情報提供フォームには、店の関係者だとする人からの疑問や批判が相次ぎ、ツイッター上でも同様な声が寄せられている。

   ヨドバシ内の専門店で働いているという京都府内のある会社員は19日、「京都駅周辺ほぼ閉まっている中、ヨドバシは開いています」として、フォーム投稿でこう疑問を呈した。

「店内は自粛しない市民が用もないのにフラフラしてるだけです。専門店もヨドバシが閉まらない限り休店しないと会社から言われてます。発症者が出たら閉まる。では遅い。本当にスーパーのように必要な場所でしょうか」

   専門店で働いているというこの会社員は、ヨドバシについて、「フラフラしてる市民のたまり場でしかない。でも働くしかない」と締め括っていた。

「強い要望受け、休業要請対象外の売り場を再開」

   また、夫がヨドバシに勤めているという都内の女性は4月24日、16店の営業を再開したことをこう指摘した。

「GW前に、いま一番自粛を強めなければいけないのに自社の利益しか考えていないようです。社員は捨て駒です。顧客第一とうたいながら、これでは客のことすら考えてませんよね」

   そのうえで、「競合店が休業する中この有様。ヨドバシカメラの考える顧客第一とは何なのでしょうか」と問いかけている。

   ヨドバシの広報担当者は30日、J-CASTニュースの取材に対し、16店の営業再開までの経緯をこう説明した。

「14日から休業したのは、緊急事態宣言が出て周りが閉まっているためお客さまが集中したことや、休業要請の話が出てきたのでいったん休業しようと考えたことがあります。従業員とお客さまの安全のためです。そして、24日に営業再開したのは、生活必需品などへの要望があり、どうしても必要だというお客さまに対応するため、要請対象外の売り場を再開させました」

   iPhone SEのSIMロックフリーモデルが24日に発売されているが、「そのこととは関係がありません。準備が整いましたので、状況を見て再開したということです」と話した。

   また客が集中することにならないのかについては、「従業員が入口でそのようなお客さまを案内しており、店内が過密ということはありません。状況によっては、入場制限させていただいています」と説明した。

   全店休業については、今のところ考えていないとし、今後については、状況を見ながら営業していくとしている。

ビックカメラは、短縮営業の店で感染例が

   一方、ビックカメラは、緊急事態宣言を受けて、4月8日から直営店では、45店のうち10店で休業に入った。それから増えて、30日現在では、18店が休業し、残りの27店は短縮営業している。

   しかし、営業継続の店では、感染者が出ており、池袋西口店で16日に社員が、有楽町店で21日に取引先スタッフがそれぞれ陽性と分かった。有楽町店では、2日休業して24日に営業再開したことに対し、ツイッター上などで疑問や批判も出ている。

   都内の店で働いている社員だという女性は27日、情報提供フォームへの投稿でこう現状を明かした。

「ビックカメラは売り場、社員の休憩スペース共に窓もなく、人の数に対して狭く、お客様対応の際には1mも距離がなく、まさに三密です。さらに休業になった店舗から応援も来るので従業員の数が増え、密は増すばかりといった現状です」

   そして、こう訴えている。

「現在需要が高まっているマスク、体温計、消毒液、テレワーク機材、Switchといった商品は軒並み品切れなのに、それを求めて来たお客様が何も買わずに帰る、という不要不急としか思えない方も多くいらっしゃいます。お客様のためにも、従業員のためにも、会社のイメージのためにも、一日でも早く休業にして欲しいと願うばかりです」

「新たに創設した休みが取りやすい制度を使って、自宅待機が出来るようにもしております」

   また、外部派遣の携帯販売員だという埼玉県内の女性は4月26日、店内の状況をこう説明した。

「そごうやルミネ、マルイなどは休業の中ビックカメラだけ営業しています。その為3密をすべて満たしているような毎日です。マスクもしない、集団(親子)での来店。今その商品は必要なのですか?携帯や時計買いに来るお客様も普通にいます。ビニールは引いてますが、お客様との距離は30cmとかなり近いです」

   そして、「消毒もしてますが見ず知らずの人と話すのが怖くて仕方がありません。開けているからそこに人が来るんです。耐えられません」と漏らしていた。

   店の休業を増やした理由について、ビックカメラの広報・IR部は30日、入居するショッピングモールなどが休業したり、15日から最寄りの駅エリアで1店に集約することにしたりしたためだと取材に説明した。

   店や周囲の休業で客が集中しているかについては、「店内が過密になってしまっては本末転倒で、1店に絞ったからといってそんなことはありません」と話した。全店休業するかについては、「現状できる範囲内で対応しています」と説明し、今後については、都などの対応が変わらなければ営業を継続するとしている。

   有楽町店の営業再開は、iPhone SEモデルの24日発売に合わせたのではとの指摘がツイッターなどで出ているが、そのようなことはないと否定した。

   短縮営業する店があることについて、「お客様と従業員の安全確保を第一に、社会生活を維持するうえで必要な生活関連品等をお客様に提供してまいりたいと考えております」と理由を説明した。そのうえで、感染防止対策などについては、こう述べた。

「休業や営業時間の短縮する店舗を全国に拡大した上で、出勤日数の削減、入退店時の検温、マスク着用・手指消毒・館内消毒の徹底、レジカウンターへの透明シートの設置やレジでソーシャルディスタンスの確保等を行っております。また、様々な事情で不安を抱えている従業員には、電話相談窓口を設けるほか、新たに創設した休みが取りやすい制度を使って、自宅待機が出来るようにもしております」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

   <J-CASTニュースでは、新型コロナウイルス流行に伴い、「私たちの状況を取り上げてほしい、取材してほしい」といった声を受け付けています。https://secure.j-cast.com/form/post.htmlからご連絡ください>