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「暇だから機種変更」「家族総出で...」 「不要不急の来店」で疲弊する携帯ショップ店員

   ソフトバンク、NTTドコモ、KDDIの携帯キャリア3社は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて各販売店での営業時間を短縮し、携帯電話・スマートフォンに関する手続きはオンラインサイトを活用するよう利用者に呼びかけている。

   ただ、業界全体で店舗の営業そのものを取りやめるような動きは出ていない。J-CASTニュースの情報提供フォームなどには、販売店で働く店員から「不要不急の来客」が絶えないことに対し疲弊の声があがっている。

  • 都内のソフトバンク店舗。来店を「予約制」にするなどの対策を掲示していた(1日撮影)
    都内のソフトバンク店舗。来店を「予約制」にするなどの対策を掲示していた(1日撮影)
  • 都内のソフトバンク店舗。来店を「予約制」にするなどの対策を掲示していた(1日撮影)

ソフトバンクとドコモは業務を限定

   携帯キャリア3社の公式サイトには、現在の販売ショップの対応が掲載されている。

   ソフトバンクは2020年4月17日からソフトバンクショップとワイモバイルショップの営業時間を短縮し、21日からは店舗業務を「スマートフォンや携帯電話などの修理、機種変更および新規契約」の受付に限定している。機種変更と新規契約については21日から、オンラインショップ上での手続きに必要な事務手数料を無料化し、積極的な利用を呼びかけている。

   NTTドコモは4月8日からドコモショップの営業時間を短縮している。21日からは業務を「故障」「故障に伴う機種変更」「新規契約」「付属品販売」などに限定。これら以外の手続きは、原則ウェブサイト上で受け付けるとしている。

   KDDIも全国のauショップの営業時間を短縮している。業務内容については、スタッフ出勤数によって「初期設定やSIMロック解除などの各種サポート対応をお断りさせていただく場合がある」とするものの、他2社のように明確な業務の限定はしていない。また、来店客には「マスクの着用」「検温」を求め、「不要不急のご来店はお控えいただき、可能な限りオンライン手続きのご利用をお願い致します」と呼びかけている。

「『不親切だ!売りっぱなしか!』と罵声」

   業務内容の限定度は会社によって異なるものの、オンライン上でできる手続きを推奨し、不要不急の来店を防ごうとする点は3社とも共通している。

   しかし、J-CASTニュースの情報提供フォームには、携帯ショップの店員だという複数の読者から、悲痛な内容のメールが寄せられた。中でも目立ったのは「不要不急の来店客が後を絶たない」という声だった。

   大阪府在住のショップ店員は、店頭の受け付け業務を縮小しているにもかかわらず、機種の操作説明を受けるために訪れる高齢者が多いと話す。

「来られたお客様へは事情を説明してお引き取り願う様にはしていますが...そうすると『不親切だ!売りっぱなしか!』の様な罵声を浴びせられる」

   といい、押し問答をするよりも接客を終わらせた方が早いと語る。

   この他にも「不要不急」の来店を嘆くものとして、

「故障などの本当に困っているお客様は来店せず、家族総出で来店される、最新機種を買うお客様ばかり」
「時間が出来たからと家族で機種変更に来る方も多くいる。スタッフを減らしたり時短営業をしていて受付が出来ないことに対して『そんなの勝手だ!』とのご指摘の声も多い為、現場のストレスは相当な状態です」
といった声が寄せられた。

   また、ある女性店員は「来店するお客は不要不急の操作、暇だから機種変更に来た、プランの見直しに来たという案件ばかり。緊急を要する故障は一日1件あるかないか」と多様な業務に追われる実情を語った。

「家族に感染させてしまう恐怖を感じて勤務」

   兵庫県の男性は、業務内容を絞ってでも営業を続けることに疑問を呈した。男性によれば、新規契約と機種変更の受付は1件あたり1時間半〜2時間、長くて3時間〜4時間かかる業務だといい、

「機種変更と修理はオンラインや電話でも対応できます。新規契約は原則対面契約にはなっていますが、オンラインやFAXで対応しようと思えば出来るはず」

   と、速やかな店舗の休業を求めた。

   男性は続けて「正直、携帯電話が使えなくなったとしても『不便』なだけであり、死には至りません」と訴える。男性の家には生後1ヶ月の新生児がいるという。

「家族に感染させてしまう恐怖を感じて勤務しています。(子どもが)感染すると命を落としかねません。こんなの絶対おかしいです」

現場の声は把握しているのか

   接客に苦慮する現場の声は、本部に届いているのだろうか。J-CASTニュースが5月1日にキャリア3社の広報担当者に取材すると、いずれも「現場の声は把握している」と答えた。(ソフトバンク、KDDIはメール、NTTドコモは電話での取材)

   その上で、現場への配慮についてソフトバンクは「ウィルス感染拡大防止のための対策備品の配備なども行っている」と回答。KDDIも「マスクやカウンターパーテーションなどの必要な備品の配備に加えて、接客時間の短縮、社会的距離の確保(ソーシャル・ディスタンス)、衛生対策等の感染拡大防止の工夫をお願いしている」と答えた。また、NTTドコモは「スタッフに対して出勤の意思確認をしている」とした上で、店舗では対面接客用フェンスの全店舗への設置や座席間隔を開けた利用客応対を行っているとした。

   「不要不急」の来店客には、どう対処するよう指示しているのか。ソフトバンクとNTTドコモは「店頭でのポスター・張り紙」を通じたオンライン手続きへの案内を掲げた。一方、KDDIは「不要不急かどうかについては、お客さまごとの状況や状態によって異なる。全てのお客さまがウェブで手続きを完結出来る訳ではないことから、ご来店のお客さまに対して、店頭でそのまま受付をすべきか、ウェブ等へ誘導すべきかの仕分けを行なっている」と答えた。

店舗営業続ける理由は

   3社とも携帯電話・スマートフォンに関する多くの手続きがオンライン上などで可能だが、店舗の営業を続ける理由はどこにあるのか。ソフトバンクは「故障など通信確保が必要なお客さまや、店頭でしか受付できない手続きもあるため」、NTTドコモは「通信を運営している事業として『通信の確保』は社会的なインフラであり、対応していかなければならない」、KDDIは「どうしても店頭でないと対応できないお客さまもいらっしゃるため、あえて受付業務は縮小していない」と回答した。

   今後、店舗の営業体制はどうしていくのか。取材した1日の時点で、ソフトバンクとNTTドコモは休業や業務の縮小について「現時点では予定していない」と回答。その上で、ソフトバンクは「今後の状況を見ながら必要に応じて随時対応を検討していく」とした。また、KDDIは「ウェブ、カスタマーサポートの利用促進のお客様への告知を積極的に行ない、来店頻度の低減に取り組んでいく」と答えた。

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