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もう国や銀行には頼らない! コロナ禍で「クラファン」やファクタリングで一息ついた人々

   新型コロナウイルスの感染拡大の影響で営業活動が止まり、資金難に陥った中小企業や個人事業主のあいだで、クラウドファンディングやファクタリングの存在感が増している。

   あまり時間をかけずに資金が調達できるため、こうした金融の仕組みを利用して、家賃の支払いなどの固定費に充てて当座をしのぎたいという経営者やオーナーが増えているもよう。ただ、その半面、ヤミ金のような高利貸しが存在。金融庁や日本ファクタリング業協会、弁護士らが注意を呼びかける事態にもなっている。

  • クラウドファンディングなら助けてもらえるかも......(画像は本文とは関係ありません)
    クラウドファンディングなら助けてもらえるかも......(画像は本文とは関係ありません)
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「クラファン」には資金だけでないメリットが見込める

   北海道の摩周湖近くでペンションを営むオーナーは、「『助けていただきたい』というのが本音です」と、クラウドファンディングで資金を調達するに当たり、こう綴った。

   コロナ禍による外出自粛制限や都道府県をまたぐ移動制限の影響をまともに受けてしまい、かき入れ時の5月連休にはほぼすべての予約がキャンセル。現在は政府の緊急事態宣言の解除で、ようやく営業を再開したが、お客はすぐには戻ってこない。

   目標金額は200万円。調達した資金は、固定費や営業再開に向けての修繕費に充てる計画で、資金を拠出してくれた人へのリターンは、北海道やペンションへ思いを馳せてもらえるような、小さな写真集だ。

   当初目標としていた200万円には、5月半ばに到達(期限は6月末まで)。調達した金額は300万円に迫っている。

   また、東京・新橋でナイトパブを営む男性も、4月の緊急事態宣言後、すぐにクラウドファンディングで300万円の調達を募った。やはり、当面の家賃などの固定費を支払うため、だった。「後日、雇用調整助成金も持続化給付金の手続きもしましたが、待っていられませんでした」と話した。

   「今の従業員とこれまでのように働きたい。そのために事業を維持したいという一心でしたが、そんな私のわがままのようなことでご支援いただけるのか、不安ではありました」と打ち明ける。ところが5月末の期限を待たずに、目標額に到達。「常連さんが声をかけてくれた」そうだが、中には100万円を用立ててくれた人がいたという。

   こうしたクラウドファンディングの利点は、「現在、どのくらいの人に支援していただけているか、が目に見えてわかるんです。それで、がんばらなきゃと思える。その効果も大きいです」(ペンションのオーナー)と話す。

   クラウドファンディングは、プロジェクトに賛同してくれる人が支援してくれる仕組みなので、事業が軌道に乗った後でも引き続き利用してもらえる可能性が高い。ファン獲得のメリットも見込めるわけだ。

早ければ、その日のうちに現金化

   政府は緊急経済対策として、雇用調整助成金や感染拡大防止協力金、持続化給付金などの給付金や助成金の支給や税制支援策などの手を打ってきたものの、決定まで時間がかかったり、手続きが煩雑でなかなか支給されなかったりと混乱。銀行などの金融機関も、貸出金の不良債権化を懸念して及び腰だったため、事業の縮小や廃業に追い込まれる中小企業などが後を絶たない。

   クラウドファンディングとともに、台頭してきたのがファクタリング事業者だ。ファクタリングは、売掛債権(取引先から代金を受け取る権利)を買い取って現金化するサービスで、銀行などでは対応しにくい、急ぎの資金調達ニーズに応えるサービス。早ければその日のうちに現金化できるのがメリット。コロナ禍の影響で急激に業績が悪化して資金繰りに窮する企業の利用が増えている。

   「とにかくすぐに現金が必要だった」――。2020年6月26日付の日本経済新聞「真相 深層 『債権買い取り』玉石混交」に、事例として登場した千葉県で建設関連業を営む男性は取材に対して、そう話していた。

   ただ、記事の見出しにあるように、「悪徳業者」も少なからずいる。ファクタリングは「債権譲渡」のため、原則として貸金業法や利息制限法などの規制対象にはならない。資金を用立ててはくれるものの、その中には実質的には年利換算で数百%にのぼる、法律の定める上限を大きく超える場合や、「貸し出しにはあたらない」として貸金業者に登録せずに営業する事業者もある。

   最近では、フリーランス向けの請求書の買い取りや、給与所得者を対象に、給料をもらう権利を売って「前借り」する形で支払いを受ける「給与ファクタリング」が現れ、かつてのサラ金のような厳しい取り立てでトラブルになっているケースも出てきた。

   「日本ファクタリング業協会」(東京都中央区)は、「ファクタリング被害110番」という情報コーナーをつくり、全国の被害の実例や訴訟の動きなどを紹介して、注意を呼びかけている。