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東京22区の区立小中、今夏のプール授業行わず 更衣室の「密」、健康診断などがネックに

   東京23区のほとんどが、区立小学校・中学校で2020年夏季にプールでの水泳指導を行わないことがわかった。

   J-CASTニュースでは7月2日から3日にかけて、各区の教育委員会の教育指導課などに「今年の夏に区立小中学校で水泳指導を実施するか、また実施する・しないについて理由はあるか」と質問した。渋谷区以外の22区が「水泳指導を実施しない」と回答し、渋谷区は「各学校長が判断する」との方針だ。

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文科省は「条件付きで実施可」の立場

   例年であればプールでの水泳指導が始まる季節にさしかかった。新型コロナウイルス対策として、スポーツ庁や文部科学省は、児童生徒間の距離を「1〜2m確保」し、更衣室の利用について少人数に留めるなどの対策を講じた上であれば、水泳の授業の実施に問題はないとしている。

   水泳の指導を行うかについては、各区の公式サイトで公開されている、学校再開に向けた基本方針などで示されているケースが多い。一方で中央区や港区など、水泳に関する記述が見当たらない区でも実施されないことがわかった。

   取材に対し、実施しない理由として最も多く挙げられたのは、更衣をめぐる問題だ。水着への着替えを行う際に更衣室が「密」となってしまうなどと15区が回答した。新宿区の指導主事の担当者は「空き教室を使おうにも、現在すでに(密を避けるために)授業を分散してほぼすべての教室を使っており、更衣室の確保が難しい」と語る。

   次に14区が「事前の健康診断ができていない」ことを理由として挙げた。臨時休校の影響に加え、感染防止の観点から学校での集団検診が難しく、健康診断が間に合っていないと語る区は多い。板橋区の指導室の担当者は「特に心疾患や、耳鼻咽喉。またプールには塩素が入っているためアレルギーの有無を把握しなければならない。そういう意味で、健康診断ができていないから、水泳指導の実施は難しいという話になっています」と説明した。

コロナ、熱中症、プール熱...「緊急時対応」にもリスク

   また、実際のプールでの指導でも、やはり生徒間の距離が密になる恐れがあるようだ。北区の教育指導課の担当者は「特に小学校においては複数のクラスや学年の合同で授業を行うことがほとんどですが、そうなると文科省が提案するような2mの間隔を空けることはできません」と説明する。続けて、「緊急事態時の対応」についてもリスクが伴うと語った。

「例えばプール中に倒れる児童が出た場合、それがコロナなのか熱中症なのか、プール熱というのもありますが、教員が症状を見分けることができない。そうなると、溺れたりした際に、人工呼吸を行ってもよいのかという判断もうまくつかないんですね。また、救急車を呼ぶことになると思うのですが、今度は搬送先の問題があります。病状が分からなければ、コロナに対応している病院に搬送すればいいのか、そうでないのかについても判断がつかない。こういった緊急事態対応の難しさについて医師会も指摘しているため、プールは中止としております」

   板橋区の担当者は基本的に水泳指導を実施しないとしている。一方で、児童生徒の人数が少ない一部の学校では9月中に健康診断が完了し得るところがあり、そうなると水泳指導が行われる可能性が存在すると説明した。また、江戸川区の指導主事の担当者は「水泳の心得については教える」としている。

   渋谷区については前述の通り、教育指導課の担当者が「各小中学校の学校長が判断する」と説明した。