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コミティア実行委員会に聞く 日本最大級「創作オンリー」継続にかける思い

「コミティアなんとか存続してほしい...」

   日本の漫画文化が危ういと、漫画家やイラストレーターたちが不安を募らせている。

   コミティアは、自費出版された作品(同人誌)を始めとするオリジナル作品の売買を行うことができる日本最大級のイベント。コミティア実行委員会は6月30日、9月開催予定の「COMITIA 133」の発表とともに、今後のコミティア継続に向けたクラウドファンディングを活用した支援を呼び掛ける見通しを明かした。

  • 東京ビッグサイト
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コミティアがなくなれば、日本の漫画文化は...

   そもそもコミティアは、一般的な同人誌即売会と異なり、オリジナル作品「創作」に限定した日本最大級の同人誌即売会である。従来の会場は同じく日本最大級の同人誌即売会「コミックマーケット」と同じ東京ビッグサイトで、プロ・アマチュア問わずたくさんの人々が「創作」を通した交流を行うことができる。コミティアで頒布した作品が注目され、商業デビューした作家も多数おり、「日本のマンガ界に貢献、底上げしてきた」として2013年、コミティア実行委員会代表である中村公彦さんは文化庁メディア芸術祭功労賞を受賞している。

   コミティア実行委員会は6月30日、「COMITIA 133」を東京ビッグサイト青海展示棟で9月21日に開催予定と発表。新型コロナウイルス感染症などによる深刻な事態となった場合、開催を中止または延期する可能性があるとしたうえで、7月1日に出展を行う個人または団体である「サークル」の受付を開始した。

   この発表内で、もし2020年内のコミティアが全て中止になった場合、今後の開催を継続することは難しくなると言及。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で5月に開催予定だった「コミティア132extra」を中止による、経営への深刻なダメージが響いているためだ。コミティアの開催以外からの収益を確保する必要があると判断し、今後はクラウドファンディングを活用した支援呼び掛けを予定している。

   今後への危機感をにじませた発表は、大きな反響を呼んだ。コミティアが無くなれば、プロ・アマチュア関係なく日本の漫画文化が衰退してしまう可能性があるだけでなく、大規模の同人誌即売会を支えてきた同人誌印刷業界の存続も危うくなる。危機感を抱いた漫画家やイラストレーターたちの中には、コミティアへの支援を申し出る声も。

   編集部は、開催継続に向けた取り組みに注目が集まるコミティア実行委員会に、メールでのインタビューを依頼。7月2日、回答を得た。

コミティア実行委員会は営利を目的としないボランティア組織

   ――「COMITIA133のサークル募集を開始するにあたって」という特設ページを公開し、支援の募集を呼び掛けるに至る、きっかけや背景などについてお聞かせ願えますか。

緊急事態宣言がいったん解除されたとは言え、予断を許さない状況の中でサークル募集を開始する訳ですから、こちらの状況や対策を参加者の方に丁寧に説明しなければいけないと考えました。告知の大半が開催に向けた対策について書かれていまして、支援の募集の呼びかけを主とした告知ではありませんでした。
クラウドファンディングの実施については中止となってしまったCOMITIA132extraの返金に関するお知らせの中で触れてはいたので、今回の告知で大きな反響を呼んだことに驚きつつ、たいへん感謝しています。一方で詳細がまだ固まっておらず、説明不足な告知になってしまったことは反省点でした。今後、決まったことは速やかに公開してゆきます。

   ――2月のCOMITIA131以降、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けていると存じますが、業務や売上にはどれほど大きな影響を与えていますか。

2月のCOMITIA131では一般参加者は2割くらい減っていて、近年見ないくらいのカタログが売れ残りました。そこから不安を抱えつつ5月の「COMITIA132extra」の準備を進めていましたが、世間の状況を受けて4月1日に中止を発表することになりました。 コミティア実行委員会は営利を目的としないボランティア組織ですが、大きなイベントを運営するためには事務所を構えて人を雇い、関係企業との折衝や日常的な業務をこなす必要があり、コミティア実行委員会とは別に有限会社コミティアとして法人化されています。その事務所の家賃や人件費は最低限に抑えてはいますが、コミティアの維持費の中でも大きな比重を締めており、座して待つだけではいかないところがあります。
今後予定している9月、11月、そして来年以降の開催についても、コロナ禍の影響が見通せません。中止になる可能性はもちろん、予定通り開催できたとしても収益は大きく下がる見込みです。会場の指示により大幅な入場者数制限を設ける必要があるからです。会場費は据え置きのまま、来場者を減らす必要がある訳です。さらに感染症対策で経費負担が増えることも懸念点です。

   ――行政からの支援について、可能であればどのような経緯でどんな支援を受けていらっしゃるのか詳細をお聞かせ願えますか。

特別な支援を受けている訳ではなく一般的な持続化給付金、家賃支援給付金などの申請をしています。国の補助による金融機関からの無利子の融資も受けました。こちらは長いスパンで返済してゆかねばなりません。

「たとえ小さい規模になったとしてもイベントを開催することが...」

   J-CASTニュース既報(「エアコミケからバトン...『エアコミティア』開催へ進む準備 ハッシュタグで創作つなぐ」、5月8日配信)の通り、コミティアは、同じくコロナの影響で中止となったコミックマーケットの準備会を中心として設立された「がんばろう同人」プロジェクトに参加している。

   ――コミックマーケット準備会による「がんばろう同人」プロジェクトへ参加などの、即売会同士での連携の経緯をお聞かせ願えますか。また、このプロジェクトではどのような取り組みを行いましたか。

元より「DOUJIN JAPAN 2020」というプロジェクトで、コミックマーケット準備会やコミティア実行委員会を含めた東京ビッグサイトを利用する7団体が定期的に会合を持ち、情報交換などをしていましたので、自然な流れで参加させていただくことにしました。 コミティアではCOMITIA132extraの開催予定日だった5/17に、「エアコミティア」という、ツイッターのハッシュタグを利用したオンラインイベントを行っています。

    ――参加者の連絡先の把握などの検討を進めているとのことですが、今後のウィズコロナ時代でのイベントのあり方・展望などをお聞かせ願えますか。

同人誌即売会の場合、会場の方針が第一にあった上で、各自で対策を行うという形なので、私達が代表して言えることはありません。ただ、たとえ小さい規模になったとしてもイベントを開催することが、同人誌即売会を支える関連企業、特に同人誌印刷所の支援にもなると考えています。同人誌文化の発展の影には作品を「安くて短納期、自由な装丁で綺麗に」仕上げてくれてきた同人誌印刷所の存在があります。このままだと、何かしら取り返しのつかない壊れ方をしてしまうのではないかと心配しています。

参加者や作家へのメッセージ

    ――インターネット上では、「COMITIA存続してほしい」といった声が高まっておりますが、現時点で参加者や作家が、COMITIA開催継続に貢献できることはありますでしょうか。また、伝えたいメッセージがありましたらお聞かせください。

皆様の温かい支援の気持ちにどれほど救われたか判りません。コミティアについて語ってくれてる方を見かけると胸が熱くなります。「COMITIA132extra」の中止にした時もサークル参加費を全額寄付したいという声を多くの方からかけていただきました。あらためて心から御礼を申し上げます。
そういった好意的な声はもちろん、反対の厳しいご意見も含めネット上での言葉には出来るだけ目を通し、今の状況と向き合うようにしています。
どうすれば今後もコミティアが存続できるか、精一杯知恵を絞っています。具体的な支援方法については、準備中のクラウドファンディングでご説明できるかと思います。その際はぜひご協力いただけたらと思います。今しばらくお待ちください。