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電通、「アマビエ」商標出願→取り下げ ネットでは物議、広報「活用を再検討」

   広告代理店大手の電通が「アマビエ」の文字商標の出願を取り下げたことが2020年7月6日、分かった。同社広報がJ-CASTニュースの取材に明かした。取り下げ手続きをしたのは同日付という。

   アマビエは疫病退散祈願の妖怪として、新型コロナウイルスの蔓延以降、各所でモチーフとして活用されている。その中で電通が商標出願していたことに、インターネット上では「名称を独占しようとしてる」「理解できるけど...」などと賛否の声があがっていた。

  • 『肥後国海中の怪(アマビエの図)』(京都大学附属図書館所蔵)
    『肥後国海中の怪(アマビエの図)』(京都大学附属図書館所蔵)
  • 『肥後国海中の怪(アマビエの図)』(京都大学附属図書館所蔵)

6月15日に商標出願

   特許情報プラットフォームに6月30日付で公開された情報によると。電通は6月15日付で「アマビエ」の文字商標を出願。商標の対象となる商品・サービスは第9類のアプリケーションソフトウェアなど、第35類の広告業など、第38類の電気通信(放送は除く)など、第42類のポータルサイトの提供などで多岐にわたる。

   妖怪アマビエは江戸時代後期のものとみられる瓦版に絵と文が書かれており、疫病が流行したらその姿を描くようにという旨の言葉があった。そのため新型コロナウイルスが蔓延する昨今、イラストを描いてネットに投稿する「アマビエチャレンジ」が流行するなど、疫病退散にご利益がある妖怪として人気を博している。

   江戸時代の元絵を所蔵する京都大学はデジタルアーカイブで公開し、ツイッターで3月6日「ご活用ください」と使用を呼びかけた。厚生労働省もアマビエをモチーフにしたアイコンで感染拡大防止を啓発している。

   そうした中で電通の商標出願が明らかになると、ツイッター上では「庶民の疫病退散の習慣を登録して金儲けか...」「信じられない」「思いつく限りのジャンルで名称を独占しようとしてる」などと反発する声が相次いだ。一方で「商品化した後で第三者に権利を主張されて敗訴するのを防ぐ為だというのは理解できるけど、印象悪い」との指摘もあった。

   J-CASTニュースが7月6日、電通にアマビエ商標出願の理由などについて取材したところ、広報担当者は次のような経緯で出願を取り下げたと回答した。

「当社取引先において『アマビエ』という名称を使うキャンペーンを検討していました。現時点では商標登録されていなかったものの、今後、第三者が商標登録をする可能性を考慮した結果、キャンペーン中に権利侵害が発生する可能性があるため登録を試みました。しかし『アマビエ』の活用については再検討することとなったため、商標の出願取り下げの手続きを行いました」

「あくまでトラブルを避けるため」

   一方、仮に商標登録されたとしても「商標の独占的かつ排他的な使用は全く想定しておりませんでした」とネット上で指摘されているような懸念は否定した。

   今回の商標出願の経緯を担当者は「前提として、今回の件に限らず他のキャンペーンでも、取り上げるものが商標登録されているかどうかを確認しています。もし既に商標登録されていたらトラブルになるためです。登録されていなかった場合も、企画が進んでいる間に登録され、トラブルになるケースも考えられます。そのため商標登録を試みています。たとえば、クライアント様とともに制作したロゴなどがそのまま第三者に使用されると、お客様の権利も侵害されることになります」と説明。「あくまでこのようなトラブルを避けるために商標出願しました」と話した。

   「再検討」の背景にネットでの批判があったかどうかについては、取材時点で広報レベルでは「把握していない」と話した。

   なお「アマビエ」を商標出願している企業は電通以外にも複数ある。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)