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黒歴史「7pay」から1年... PayPay連携を選んだセブン、巻き返しなるか

   今や小売業にとってコード決済(QRコード決済、バーコード決済)戦略は、売り上げを左右しかねないほど重要になってきている。

   国内でコンビニエンスストアを2万店以上展開して、小売業をリードするセブン-イレブン・ジャパンは、自社の販売促進アプリ「セブン-イレブンアプリ」内の決済機能として、ソフトバンク系のコード決済「PayPay」(ペイペイ)を2020年10月以降に搭載する。コード決済戦略で出遅れたセブンにとって、ペイペイの導入は挽回のきっかけとなるか。

  • 7pay騒動から約1年、「自前偏重」からの脱却象徴?
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独自アプリ内でPayPay導入

   セブン-イレブンアプリにペイペイが搭載されることで、アプリ画面上にペイペイの支払いバーコードが表示され、全国のセブン-イレブン店舗で決済が可能になる。この動作によって、アプリの会員コードを提示すると受け取れる「バッジ」やセブンマイル(税抜き200円購入で1マイル)と、ペイペイによる支払いで受け取れるペイペイボーナス(支払額の最大1.5%)も同時に受け取ることができる。

   もちろんセブン-イレブンの店舗では、現在使えるクレジットカードや交通系ICカードなどの電子マネー、各種コード決済サービスも引き続き利用できる。ただ、現状ではレジ前でセブン-イレブンアプリを提示して店員にコードを読み取ってもらい、即座にスマートフォンを操作してコード決済アプリに切り替えて再びコードを読み取ってもらうことは、利用客にも店員にも後ろに並ぶ客にとって面倒で仕方が無い。1度の読み取りで両方できるようになれば、セブン-イレブンの店舗を頻繁に利用していて、既にセブン-イレブンアプリで特典を手に入れている人にとっては、便利になるだろう。

   注意すべきなのは、セブン-イレブンアプリに搭載したペイペイ機能を使えるのはセブン-イレブンの店舗だけで、それ以外のペイペイ加盟店では、通常のペイペイのアプリで決済する必要がある。いわばペイペイという「財布」を二つ用意することになるが、ペイペイの還元プログラム「PayPayステップ」の加算対象としては両方を合算する。

「自前主義」からの転換?

   セブンのコード決済で記憶に新しいのは、2019年7月1日にサービスを開始した独自コード決済「7pay」(セブンペイ)の失敗だ。セキュリティ対策の甘さを突いた犯罪集団による不正利用が相次いだため、わずか3カ月でサービス終了に追い込まれ、業界トップの信用に傷が付いた。今回のペイペイとの連携に関する発表は、マスコミが夏休みモードに入っている2020年8月中旬にプレスリリースを出した程度。セブン-イレブン・ジャパンの社長も登場する華々しいイベントでサービス開始を告げたセブンペイとは大きな違いだ。セブンペイは触れられたくない「黒歴史」に違いない。

   結局、セブンペイが担うはずだった機能をペイペイが受け持つことになったが、過去の成功体験をひきずって自前主義になりがちだったセブンが、「不得意な分野は社外に頼る」というビジネスにとって当たり前のことを、身をもって知る機会にもなった。

   同じグループ内には自前で進めるものの、なかなか伸びない事業もある。こちらも、社外のノウハウを積極的に取り入れる度量を持てるようになれば、打開策も見えてくるかもしれない。