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介助必要な子の親から、感謝の声が... ユニクロが「160cmサイズ」の子ども用ボディスーツを作ったきっかけ

   アパレル大手ユニクロの、ある子ども服に感謝の声が集まっている。上下一体で股下にボタンがついた、新生児や乳児がよく着る「ボディスーツ(ロンパース)」だが、同社商品は160センチメートルというかなり大きめサイズまで展開。これに購入者から「寝たきりの子に160を購入しました」「障害児を持つ親としてとても嬉しい商品」といったレビューが寄せられている。

   ツイッター上で2020年10月中旬ごろから話題を集め、非使用者からも「介助の必要な子どもたちには選択肢のひとつになるはず」といった声があがるなど反響が広がった。ユニクロに商品開発の経緯を聞いた。

  • ユニクロのキッズ用「コットン前あきクルーネックボディスーツ(半袖)」。カラーはグレー(左)、ピンク(右)と、ホワイト、ネイビーの4色。サイズは110~160の6種。税抜き990円
    ユニクロのキッズ用「コットン前あきクルーネックボディスーツ(半袖)」。カラーはグレー(左)、ピンク(右)と、ホワイト、ネイビーの4色。サイズは110~160の6種。税抜き990円
  • ユニクロのキッズ用「コットン前あきクルーネックボディスーツ(半袖)」。カラーはグレー(左)、ピンク(右)と、ホワイト、ネイビーの4色。サイズは110~160の6種。税抜き990円

「かぶり着用が出来ない子には本当に悩みの種でした」

   注目されたのはキッズ用「コットン前あきクルーネックボディスーツ」。上半身はボタンがついて前開きになっており、長い裾の下には股下を覆ってボタン止めできる。頻繁におむつ替えする乳児がよく着るロンパースと同様の形状だが、注目すべきはそのサイズ。110センチから10センチ刻みで160センチまでと、乳児用とは言えないかなり大きめサイズまで展開している。

   発売されたのは9月7日。ユニクロECサイトの同商品ページには10月16日時点で、66件のレビューが集まっている。参考までにベビー用の類似商品「コットンクルーネックボディスーツ」は同4件であることを見ても、キッズ用の需要の高さがうかがえる。

   ではどのような層が買い求めているかというと、その一端は寄せられたレビューの言葉に表れている。たとえばこんな声だ(後ろのカッコ内はレビュアーの購入サイズ)。

「胃瘻(いろう)や呼吸器があり、かぶり着用が出来ない子には本当に悩みの種でした。ユニクロさん、大きめサイズ、値段の抑え、完璧です。ありがとうございました」(150サイズ)
「寝たきりの子に160を購入しました。サイズやお値段はとてもよくユニクロさんありがとう!って気持ちです。 ただ大人の女子なので胸の部分を柔らかい素材の二枚重をつけていただけたら、とても有難いです。 どうぞ宜しくお願いいたします」(160サイズ購入者)
「肢体不自由の子がおります。 ロンパース下着が必須です。 まさか、UNIQLOさんで販売してくださるとは!!即購入させていただきました」(160サイズ)
「子どもが脳性麻痺の障害児で、股のところにボタンがついていると抱き上げた時にお腹が出なくて安心でした。ただ、大きめサイズがないので今までシャツとパンツを縫い合わせてボタンを自分で付けてミシンで作っていました。 本当にありがとうございます。入院時にも重宝すると思います」(110サイズ)
「ホントに助かります!ありがとうございます。障害児には欠かせません。生地もしっかりしています 少し大きめで長く着れそうです」(140サイズ)

   障害があったり、胃ろうで直接胃に栄養を投与したりする子どもを持つ親にとって、ロンパースの機能をもった服が欠かせないという声が数多い。こうした商品とレビューは13日ごろからツイッターでも話題となり、「障害児ママ同士で一気に拡散し合って、みんな大喜びでした」「レビューみて泣きそうになった。ここ数年マタニティウェアに新生児ウェア、介護障害児向けウェアまでラインナップするユニクロって素晴らしい」「介助の必要な子どもたちには選択肢のひとつになるはず」といった書き込みがあった。

スタートは「お客さまからのご要望」

   こうした需要は予め汲んでいた。ユニクロの広報担当は16日、J-CASTニュースの取材に「お客さまからのご要望で、子ども用サイズのボディスーツが欲しいという声をいただき、商品開発がスタートしました」と話す。

   もともと同商品を含む「前あきインナー」シリーズは、股下のボタンはない形のウイメンズ、メンズ商品もラインアップして同時に発売した。発表資料によると、開発のきっかけとなったのは「『もっと着心地のいい、カラーバリエーションもある前あきインナーがほしい』というかぶりの衣服を脱ぎ着することが難しいお客様からの一通のお手紙」。実際に医療機関や施設を訪れ、「腕が上がりにくい、入院や通院をしている、乳がん手術後、障がいがある、ご高齢、そんな方々の切実な声を聞き、開発を進めてきました」とさまざまな立場の人から要望を聞いてきたという。

   その中で、子ども用サイズのニーズの高さを把握した。広報は取材にこう話している。

「市場調査の中で、このような商品が世の中にあまりないこと、また、あっても高額であることがわかり、実際に必要とされる方のご意見を直接伺ったときに、お母さまが手作りされていたりしているといったお話を伺いました。

こういった声を受けて、子どもの下着として買い替えやすい価格で、着ている子どもが快適に過ごすことができ、さらには、親御さまにとっても着替えさせやすい商品を作りたいと思って実現に至った商品となります」

   機能性も高い。頭から「被る」のではなく「前あき」という構造そのものが「親御さまにはだいぶお着替えがしやすいようです」と言うほか、「動いてもはずれにくく、着脱も簡単なプラスチックスナップボタン仕様にしたり、長時間着用しても快適なよう、ぬいしろが肌にあたりにくい仕立てになったりしております。オムツを重ね付けしても、股の部分を長めに設計しているので、しっかりとおしりをカバーしてくれます」としている。

   ネット上で反響があがっていることについては「今後もお客様の声に応え、商品開発を行ってまいりたいと思います」と話している。