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パソナへ委託のコロナ給付金事務に市職員が多数応援 福岡市と同社に「疑問視する声」への見解を聞いた

   コロナ給付金10万円を一律支給する事業で、福岡市が業務委託した人材派遣大手パソナの給付金支給事務に対し、市の職員が多数応援に来ていた、としんぶん赤旗が報じて注目を集めている。

   J-CASTニュースは今回、市やパソナに事実関係の確認を行ったうえで見解を求めた。総務省にも話を聞いた。

  • 10万円給付金の委託事務への市職員派遣をめぐり、疑問の声も出たが…(写真はイメージ)
    10万円給付金の委託事務への市職員派遣をめぐり、疑問の声も出たが…(写真はイメージ)
  • 10万円給付金の委託事務への市職員派遣をめぐり、疑問の声も出たが…(写真はイメージ)

公募にパソナ1社だけが応募し、審査を経て決定

   新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府の特別定額給付金は2020年4月、予算の組み替えが行われるほど迷走し、当時の安倍晋三首相は同17日、すべての国民に一律10万円を支給することを会見で表明した。

   そんな中で、福岡市でも、給付金支給の事業が行われ、市は同23日、プロポーザル(事業提案)方式で業務委託先を公募した。

   市の特別定額給付金課にJ-CASTニュースが10月20日に取材して聞いたところによると、この公募には、パソナ1社だけが応募し、審査を経て決まったパソナと約7億円で随意契約を結んだ。プロポーザル方式では、複数応募の場合でも、この契約の形になるという。

   契約では、パソナの責任者に日当約7万円が支給されることになった。それ以外の一般事務は、同約1万5000円だった。そして、広いスペースを確保するため、パソナは民間施設を事業費で借りて、5月1日から給付金のオンライン申請受け付けを始めた。

   パソナから1日20人ぐらいが派遣されたが、それ以外にも、市職員が同じ人数ぐらい応援に来た。6月1日から郵送申請が始まると、パソナ側は100人超、市職員は多いときは同じ人数近くに増えた。

   市職員が多数応援に来たことは、しんぶん赤旗が10月19日に大きく報じ、ネット上でも話題になっている。

「1週間で数万件にも上る膨大な量をさばき切れず」

   こうした報道もあって、ツイッター上などでは、「お金もらって引き受けた仕事なのにできなくて、市職員がお手伝いとは」「これでは行政はパソナの奉仕者ではないか」といった疑問の声も一部で出た。

   職員を応援に出したことについては、市の特別定額給付金課は、取材にこう説明した。

「市民から想定の2、3倍の申請が集中して、時間がない中で、迅速に対応しないといけませんでした。1週間で数万件にも上る膨大な量があり、業務委託だけではさばき切れず、人手が足りないため、職員を出しました。適正に行われており、問題はないと認識しています」

   なお、福岡市では、20年4月20日にコロナで国が要件を緩和した住居確保給付金の支給事業も、パソナに業務委託しており、市職員もパソナスタッフと同数近く計22人が応援に出ていた。生活自立支援課によると、要件緩和の結果、申請が20倍以上にも増えたため、業務委託の人数を増やすなどした契約変更までの間、緊急措置として行ったという。

   パソナグループの広報部は10月21日、業務委託されているにもかかわらず、市職員が多数応援に来たことについて、取材に対し次のように説明した。

総務省の見解は?

「特別定額給付金業務については、当初の想定より全体の業務量が大幅に増加したことをうけ,福岡市様と調整・協議を行った結果,福岡市様が行う業務と弊社が行う受託業務を明確に区分した上で,弊社が受託した業務を誠実に履行したものであり,市の職員に業務を手伝ってもらったものでも,業務の肩代わりをしていただいたものでもなく、全く問題ございません。
特別定額給付金業務については想定できない部分も多く、短期間の中で、状況に応じた迅速な対応が求められることから、当該業務委託における具体的な業務内容については、契約書の仕様書に定める業務計画書において、主な業務内容を定めた上で、福岡市様との間で必要な都度、調整・協議して定めることとされたものであり、このような契約は法的に全く問題ではございません。
特に、オンライン申請及び郵送申請に関する処理については、申請内容の不備の状況などが不明なこともあり、当該業務計画書において、各々の一連の事務処理プロセスについて福岡市様との間で調整・協議し、福岡市様の業務及び弊社の業務の内容を定めることとされております。
実際、申請開始以降、オンライン申請、郵送申請のいずれにおいても、申請内容に誤記入が多いなど、申請内容の確認に膨大な事務作業と時間を要することが判明し、当初の想定より全体の業務量が大幅に増加することが見込まれました。
このため、一日でも早い給付に向け、迅速に作業を進めるため、福岡市様と調整・協議を行った結果、福岡市様が行う業務と弊社が行う受託業務を明確に区分した上で、双方が人員体制を強化して対応することとしたものであり、契約上、全く問題ございません」

   また、総務省の特別定額給付金室は10月22日、支給事務を民間に委託することは問題ないとしたうえで、福岡市が職員を多数応援に出したことについても、こう話した。

「市民から早く支給してほしいと要望があって、業者との話し合いやっているのであれば、問題はないと考えています」

   同様な理由から、職員を応援に出している他の自治体もいくつか聞いているという。

   なお、緊急措置として行った給付金のため、随意契約でもいいとしており、この契約の形を取った自治体は多いとした。パソナが支給事務をしているケースは、それほど多くはないという。日当については、国から基準は出しておらず、自治体の判断になるそうだ。