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竹花貴騎氏「カリスマ社長の虚実」 対談の石破茂氏も広告塔批判で「大変遺憾」、サイト掲載企業はJ-CAST取材に「契約の認識ない」

   IT企業の社長を務める竹花貴騎氏をめぐり、インターネット上で騒動となっている。

   経歴や経営実態にまつわる「疑惑」が浮上し、"広告塔"となった著名人らが対応に追われている。

  • 石破氏と竹花氏の対談動画(竹花氏のツイッターより)
    石破氏と竹花氏の対談動画(竹花氏のツイッターより)
  • 石破氏と竹花氏の対談動画(竹花氏のツイッターより)
  • 【画像】竹花氏とサッカーの槙野智章選手の対談動画

27歳にして「資産100億円超え」

   竹花氏は、若くして名を馳せた実業家として知られてきた。

   自身が公表したプロフィールや取材記事によれば、スペイン語、日本語、英語の3ヶ国語を操り、ハワイ州立大学卒業後、グーグルに入社。23歳で東証一部上場グループの最年少COO(最高執行責任者)を務め、リクルートホールディングス戦略室を経て17年にSNSマーケティング会社「Lim」を設立した。18年12月のリリースでは、「設立1年半ですでにライザップやソフトバンクなどの大手を始め7500社の集客実績を叩き出す」とアピールしていた。

   主催する有料オンラインサロン「MUPビジネスカレッジ」の会員は数万人を誇り、"日本最大級のオンラインビジネススクール"と自称する。27歳にして資産は100億を超える。

   篤志家の顔も持つ。竹花財団を立ち上げ、カンボジアで日本語学校の運営や、スラム街で暮らす子供たちの支援も行う――。

竹花氏のオンラインサロンのユーチューブページより
竹花氏のオンラインサロンのユーチューブページより

   しかし2020年10月ごろから、経歴や経営実態を偽っているとの疑惑がSNS上で相次ぎ、複数のネットメディアや週刊誌で取りざたされた(デイリー新潮「ビジネス系ユーチューバー『竹花貴騎氏』 大炎上が連鎖した背景とは?」、プレジデントオンライン「『Google出身で資産は100億円』ビジネス系YouTuberはなぜウソをつき続けられたのか」)

   竹花氏のサロン会員によれば、サロン内で疑惑の一部を認め、「今回の件で情熱だけではなく、コンプライアンス意識も、もっと持つべきだったと深く反省しております」などと謝罪したという。

「君は最後まで戦ってくれると信じています」

   こうした「経歴」をめぐる問題が注目を集める一方で、その手掛ける事業をめぐっても、トラブル、そして疑問点が噴出している。

   ウェブマーケティングに詳しく、『無料でカンタン! 儲かる飲食店に変わる「Googleマイビジネス」超集客術』の著書がある戎井一憲氏が今年2月、「動画で違反手口を公然と説明するMEO業者-どこがNGなのか解説します」と題したブログ記事で、竹花氏が設立したLimの事業内容を問題視した。

   同社では、人工知能(AI)を活用して自社サイトを検索上位に表示させるMEO(マップエンジン最適化)サービスと、インスタグラムのフォロワーを自動で増やすサービスを販売する。戎井氏はブログで、いずれもプラットフォームのガイドライン違反に当たると注意喚起した。

MEOサービスの紹介画像(Lim公式サイトより、現在は削除)
MEOサービスの紹介画像(Lim公式サイトより、現在は削除)
インスタサービスの紹介動画(Lim公式サイトより、現在は削除)
インスタサービスの紹介動画(Lim公式サイトより、現在は削除)

   すると10月12日に、戎井氏のもとにLimの代理人弁護士から通知書が届いた。記事の内容は事実無根だとし、削除と謝罪を要求した。応じない場合は、法的措置を講じると警告した。

   竹花氏も戎井氏宛てに、ツイッターで「内容はどうであれ、訴訟された側にもお金がかかりますので、あとは体力勝負ですね!笑」「誠意ある対応がないのであればいくらこの案件に投資をしても私は構いませんので。あと、メディアチームも動かしていますので、後から文句言わないでくださいね?」「過去、全員落ちましたが、君は最後まで戦ってくれると信じています」などと牽制していた。

   しかし11月2日、代理人弁護士からファクスが届き、「都合により」代理人を辞任するとの連絡があったという。この弁護士および所属する弁護士法人にJ-CASTニュースが辞任理由を質すも、回答はなかった。

大手企業との関係うたうが...

   Limの公式サイトでは、取引先は約1万6000社とうたい、2つのサービスの紹介ページでは「世界中の有名企業に信頼されています」などの文言とともに、大手企業のロゴが掲載されている(現在は削除)。

インスタサービスの紹介ページ(Lim公式サイトより、現在は削除)
インスタサービスの紹介ページ(Lim公式サイトより、現在は削除)

   そのうちの数社に確認すると、

「東芝デジタルソリューションズ株式会社で、以前(2018年)、Lim社の担当者から同社のサービスの紹介を受け、社内でサービス導入を検討した経緯はありますが、サービス導入には至らず取引は行っておりません」(東芝)
「過去に社内イベントでの生配信の動画撮影と配信をお手伝いしていただいた事がございます」「(2つのサービスについては)契約の認識はない」(RIZAPグループ)
「取引実績(当社からの発注の事実や支払い実績)の記録は全くありません。2017年9月頃に弊社社員がLim社から営業提案を受けたようですが、その後、当社側から同社への業務発注を行った事実もありません。よって当社はLim社が取引先であると認識していません。現在、同社のHPに記載されている当社名や当社ロゴの取り下げを正式に申し入れる検討を進めています」(ソフトバンク)

   取材後、MEOサービスの紹介ページを開くと、「現在サービスの受付は終了しております」、インスタサービスでは「サービスは受付停止しております」と表示された。

スポンサー降板、対談動画は削除

   竹花氏と過去に接点のあった人物や企業は対応に追われている。

   サッカーの本田圭佑選手が経営する「Now Do」では、竹花氏とサッカーの槙野智章選手の対談動画を8月30日に投稿したが、騒動を受けてか、動画は現在削除されている。

本田圭佑選手のツイッターより
本田圭佑選手のツイッターより

   竹花氏とスポンサー契約を結んでいた飲料ブランド「のむシリカ」は11月1日、「ご心配をお掛けしたお客様には大変申し訳ございません」と契約解除を発表した。

   自民党の石破茂元幹事長も、日本の将来について竹花氏と意見を交わし、その模様は動画で配信された。

   石破茂事務所は取材に、元テレビ朝日アナウンサーで東京都議会議員の川松真一朗氏から依頼を受けて対談したといい、それまで竹花氏については一切知らなかったという。SNS上では「石破議員にも結果的に広告塔になった責任はある」との声もあるが、「結果責任としては大変遺憾に思うが、事前に予見できたかというとかなり難しかったと言わざるを得ない」と釈明した。

竹花氏のツイッターより 
竹花氏のツイッターより 

   一方、川松氏によれば、竹花氏のオンラインサロンに入会していることもあり、石破氏に打診したという。「Limグループの事業内容やSNS上で展開されている批判・噂等につきましては、当然、存じ上げてる事ではなく、突然の報に現在はただただ困惑しておりますが、真相究明の為、情報収集を行っています」と今回の騒動は寝耳に水だったようだ。

   竹花氏にLimの経営実態などについて取材を申し込むと、「6月に香港法人NAVER TECH社に全事業の譲渡を行っており、経営に一切関与しておりません」と回答する立場にないとした。現在は「オンライン教育アプリ、動画制作会社のみをシンガポールで行なっております」という。

   実際、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」で6月1日に事業譲渡のリリースが掲載されていた(現在は削除されている)。登記簿上では、Limの代表は6月1日付で竹花氏から中村耕平氏に代表取締役が変わっている。竹花氏は6月4日に登記されたLim Consultingの代表に就任している。

Limのプレスリリースより
Limのプレスリリースより

   竹花氏から「(Limの)公式の問い合わせ先」と指定されたメールアドレスに質問事項を送るも、期日までに回答はなかった。

   (2020年11月11日13時追記)公開当初「Limの代表は6月1日付で竹花氏から中村耕平氏に、グループ会社のLim Japanも同日付で竹花氏から町田哲隆氏に代表取締役が変わっている」となっていた部分を、「Limの代表は6月1日付で竹花氏から中村耕平氏に変わっている」と修正しました。