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井上尚弥の4団体統一の行方は? 専門家が指摘する井上の「世界的ブランド力」

   ボクシングのWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)が世界4団体統一王者へ向けて突っ走っている。ボクシング史上6人目の4団体統一王者の期待が高まるなか、果たして井上が4団体の王座を統一することは可能なのか。J-CASTニュース編集部は、ボクシングの専門家である協栄ジムの金平桂一郎会長(55)に今後の展望に関して話を聞いた。

  • 井上尚弥
    井上尚弥
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4団体統一王者は過去5人だけ

   バンタム級最強を証明するために主要4団体全ての王座の統一を目指している井上。現在、井上はWBAとIBF王座を保持しており、残るはWBCとWBO王座となる。2021年中にも4団体王座統一を目指すことになるが、複数の王座を統一し、その王座を維持していくのは非常に困難である。過去、世界の主要4団体の統一王者となったのは5人だけで、この数字から見ても険しい道のりであることが分かる。

   井上が目指している4団体統一はどれほどの偉業なのか。史上初の4団体統一王者となったのは、ミドル級のバーナード・ホプキンス(米国)だ。2004年9月、当時3団体統一王者だったホプキンスはWBO王者オスカー・デラホーヤ(米国)を破り4団体の王座を統一。翌年05年にジャーメイン・テイラー(米国)に敗れ王座を失い、勝利した無冠のテイラーが一気に4本のベルトを手に入れた。

   4団体の王座を統一したという観点からいえば、4冠王者を破ったテイラーは当てはまらないかもしれないが、4団体統一王者としてカウントされている。ホプキンスに次いで4団体を統一したのはテレンス・クロフォード(米国)だ。スーパーライト級時代の17年8月にWBA、IBF王者ジュリアス・インドンゴ(ナミビア)を破り王座を統一し、その後、階級をウエルター級に上げて王者になっている。

次戦がIBFの指名試合になる可能性も

   18年7月にはオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)が、WBA、IBF王者ムラト・ガシェフ(ロシア)を破りクルーザー級で4団体統一王者になっている。さらに直近ではライト級のIBF王者テオフィモ・ロペス(米国)が、WBA、WBO、WBCの3団体統一王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)との統一戦(2020年10月17日)を制して4団体統一に成功している。

   このようにボクシング界において複数の王座を統一、維持することは困難とされている。そのひとつの要因となるのが、王座を保持する団体から下される指名試合の指令である。井上もこれに直面している。

   各団体によって指名試合の期限は異なるが、王者はおおむね1年間に約1試合のペースで指名試合をクリアしなければならない。井上陣営にとって王座統一戦を優先させたいところだが、IBFの指名試合がのびのびになっており、次戦がIBFの指名試合になる可能性もある。

「井上選手の世界的価値は上がっています」

   このような状況のなかで井上は2021年中に4団体の王座を統一することが出来るのか。金平会長は、その可能性について次のように言及した。

「過去に複数の王座を統一しているのはビッグネームばかりです。ビッグネームだから王座を統一することが出来たのか。王座を統一したからビッグネームになったのか。私は前者だと思います。承認団体は、ビッグネームが自分の団体の王座を争うことでビジネス、ブランド力においてメリットをもたらすと考えるでしょう。井上選手の世界的価値は上がっていますし、ブランド力は団体を勝っている。統一戦を許可するにあたっては各団体の条件は付くとは思いますが、おそらく認められると思います。このままケガなく順調にいけば王座を統一するでしょう」(金平会長)