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セレッソ大阪「名波浩監督」説が浮上する背景 「崩壊」招く危険な賭けか、「飛躍」目指すチャレンジか

   サッカーJ1で5位につけるセレッソ大阪のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(63)が今季限りで退団し、後任候補に元日本代表の名波浩氏(47)らの名前があがっていると2020年11月20日、日刊スポーツが報じ、驚きが広がっている。

   名波氏といえばジュビロ磐田のレジェンドで同クラブの監督も務めたが、現役時代には期限付きでC大阪に所属したことがある。磐田の監督を務める前には、C大阪の監督候補だったと報じられたこともある。

  • セレッソ大阪のホーム、ヤンマースタジアム長居
    セレッソ大阪のホーム、ヤンマースタジアム長居
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得点力アップのため?

   19年からC大阪で指揮をとるロティーナ監督はこの年、いきなりJ1で5位の好成績。今季も暫定5位につけている。8~9月には6連勝を達成するなど上位争いを続けており、一時は首位川崎フロンターレと勝ち点差5の2位に上った。堅固な守備を構築し、昨季失点数はリーグベストの25点。今季もここまで失点数リーグ4位と守備力の高さは健在だ。

   ロティーナ監督の戦術や考え方がチームに定着してきた中で飛び出した退団報道に、ネットユーザーは衝撃。ツイッターでは「ロティーナ今季限りなん? 長期で指揮とってもらってもっとロティーナサッカーを浸透させて欲しかったな」などと残念がる声があがる。

   C大阪は前任の尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督(現・ジェフユナイテッド千葉)も2季で契約満了として退任している。1季目の17年は天皇杯とルヴァン杯の2冠に輝き、J1リーグも3位でアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得。翌18年は無冠ながらリーグ7位という成績を収めた中での退任となっていた。

   前出の日刊スポーツは「悲願のJ1初優勝へは、もう1ランク上の攻撃力が必要と判断した」と報じており、問題は成績そのものより攻撃力にあるのかもしれない。得点数は昨季12位の39点どまり。今季も得点数は現在11位の39点で、チームのトップスコアラーは奥埜博亮(31)の7ゴール。ACL出場圏内の3位以内を目指すには、得点力アップが1つのカギとなっている。

   ただ、クラブがFW陣の補強をしていなかった事情もあり、「ロティーナ監督がいい。FW補強してあかんかったらその時は考えたらええと思うけど。安定して結果出してるやん」として続投を望む声はなおある。

   後任監督には、元韓国代表の黄善洪(ファン・ソンホン)氏(52)の招聘や、小菊昭雄コーチ(45)の内部昇格といった候補が報じられているが、ひと際注目されたのが名波氏だ。06年に期限付きでC大阪に所属した経験がある。

2013年に「最有力候補」報道

   実は13年にも、名波氏がC大阪の新監督候補だと報道された。スポーツニッポン13年11月1日の記事によると、当時名波氏はC大阪にとって「最有力候補」で、チームの刷新を図るにあたり「クラブOBだけでなく外部招へいも検討。幅広くリストアップする過程で、最上位に浮上したのが名波氏だった」という。同2日の日刊スポーツも「『名波セレッソ』の誕生は今後、急加速するものとみられる」と報道した。

   13年のC大阪は最終的にJ1を4位という上位で終えており、さらに計8シーズンにわたって指揮をとってきたレヴィー・クルピ監督の後任として名波氏の名前が飛び出したことになる。結局名波氏は当時C大阪の監督にはならなかったが、クラブの監督候補リストに入っていたのであれば、経験を積んだ名波氏を今回招聘することはあながちゼロではなさそうだ。

   名波氏は08年に現役引退後、14年途中からJ2・ジュビロ磐田の監督に就任すると、翌15年にJ2の2位でJ1昇格。17年こそリーグ最少30失点で6位の成績を収めたが、その後は振るわず。18年は16位と低迷し、J1参入プレーオフを制してどうにか残留したが、19年も復調せず、シーズン途中に監督を辞任した。磐田はこの年最下位でJ2に降格した。

   監督として小林祐希(28)や川辺駿(25)らを見出し、他方では中村俊輔(42)や川又堅碁(31)ら実績ある選手もチームに溶け込ませた。チームに一体感をもたらすモチベーターとしての評価が高い一方、時間をかけて戦術を浸透させるという点ではロティーナ監督を支持する声は多い。システムもロティーナ監督が4-4-2を敷いてきたのに対し、名波氏は磐田時代3バックを好んでおり、C大阪が安定してきた4バックから3バックへ仮に移行するとなれば一定の時間はかかる。

来季は4チームがJ2降格

   来季Jリーグの昇降格ルールも無視できない。今季は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でJ1からJ2への降格こそないが、J2からJ1へ2チームが昇格し、その分来季はJ1から一気に4チームが降格する異例のシーズン。チーム作りを誤れば多くのチームが残留争いをする可能性をはらむ。また降格がない分、今季はじっくりと戦術構築に取り組むチームも少なくない。

   C大阪でいえば過去3度のJ2降格を経験。それも00年はJ1で年間5位(当時は2ステージ制)だったのが、翌01年に最下位16位(同)。05年もJ1で5位だったが、翌06年は17位。13年もJ1で4位の好成績から翌14年は17位で降格した。前年上位から急転直下の降格圏ということが3度あったから、今季のチーム状態が良くても来季を楽観視はできないだろう。

   ツイッター上では、ロティーナ監督退団と名波新監督の可能性が浮上したことに、さまざまな声があがっている。

「今年はコロナの影響で、J1のクラブは降格無しの関係で、来年はJ1からJ2に4クラブ降格する年なのに、そこで敢えて守備を整備するのが上手いロティーナ監督ではなくてジュビロをJ1からJ2に降格させた名波監督にするって、セレッソのフロントはチャレンジングだな」
「監督をかえることに反対はしないが後任に全く正反対の名波氏をもってくるとチームが崩壊する可能性がある」
「セレッソ大阪というクラブが名波監督を迎えるならば、それは見守っていきたいとは思いますね」
「モチベーターというか人心掌握力って意味では日本人監督の中で最高だとは思うけどねぇ、名波さん。戦術指導できるヘッドコーチで良い相方が見つかれば相当強い監督になると思うんだけど」

   サッカーマガジンWebによると、ロティーナ監督自身は20年11月20日、翌21日のホームでのサンフレッチェ広島戦に向けた前日会見で自身の去就には言及しなかったという。