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トヨタの「超小型EV」、165万円からのインパクト 「政府戦略」追い風に評価されるか

   トヨタ自動車が超小型の電気自動車(EV)「C+pod(シーポッド)」を開発し、2020年12月から法人や地方自治体などに限定販売を始めた。一般ユーザー向けには2022年を目途に販売する計画という。

   政府は同じく12月、2050年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの国内排出量を実質ゼロにする「グリーン成長戦略」を発表した。自動車については2030年代半ばまでに軽自動車を含む乗用車の新車販売を全て電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動車とし、エンジン車の販売をゼロとする方針を明らかにした。

  • トヨタが「C+pod」を発表した
    トヨタが「C+pod」を発表した
  • トヨタが「C+pod」を発表した
  • 「C+pod」の内装

長距離よりも「街乗り」メイン

   トヨタはこの政府方針に呼応する形でシーポッドの発売を発表した。とりわけマスコミでは、軽自動車のEV化はコストアップになるため、実現が困難とする報道が相次いでいた。トヨタはそんな周囲の懸念を、超小型EVを市販することで払拭するのが狙いとみられる。

   シーポッドは全長2490ミリ、全幅1290ミリ、全高1550ミリと、現行の軽自動車より一回り以上、コンパクトなのが特徴だ。軽よりも小さいことからトヨタは「超小型」と表現している。

   乗車定員は2人と、軽の4人に比べると半分で、荷室も限られる。全長と全幅の小ささゆえに、衝突安全性が気になるが、トヨタは「軽自動車向けの安全基準を基に、新たに設定された超小型モビリティー用の安全基準に適合しており、万が一の事故に備え、あらゆる方向からの衝突に対して安全性を追求している」と説明する。

   EVで気になるリチウムイオンバッテリーの容量は9.06kWh(キロワット時)と小型だが、1回の満充電で走ることができる航続距離は150キロ(WLTCモード)と、電池の容量の割には良好だ。これは電池容量の少なさゆえに、車両重量を670キロと比較的低く抑えていることが奏功しているのだろう。

   ただし、シーポッドは最高速度が時速60キロで、高速道路は走れない。このため航続距離の計算も、高速道路を含まないWLTCモードとなっている。

   航続距離150キロについて、トヨタは「安心して日常使用できる」と説明している。シーポッドのような超小型EVを街乗り専用のコミューターと考えれば、買い物や通勤で1日に150キロ走るケースは少なく、スマートフォンのように毎日もしくは週に何度か充電することで、日々の使用に支障が出ることは考えにくいということだろう。

   ガソリンエンジンの軽自動車であれば、街乗りだけでなく、休日など高速道路を走って遠出することも可能だ。この点、シーポッドはエンジン車の軽にはかなわず、割り切る必要がある。

さまざまな制約はあるが...

   シーポッドの気になる価格は165万円(税込)から。この価格であれば、現行の軽と遜色ないばかりか、地方自治体などの補助金を考えれば、むしろ有利だろう。

   2人乗り、最高速度60キロなどの制約はあるが、シーポッドは、困難とされた軽のEV開発の未来を探る有力な選択肢となるだろう。

   シーポッドのコンセプトは日本だけでなく、急速なEVシフトが進む中国や欧州でも通用するだけに、超小型EV市場で主導権を握ろうとするトヨタのしたたかな戦略を感じさせる。

   トヨタはハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHV)、燃料電池車(FCV)、EVと電動化を全方位で進める世界でも数少ないメーカーだ。とりわけ日本では軽が人気で有力市場となっており、今回の超小型EVがどう評価されるか注目される。