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朝日新聞が「神田伯剌西爾」を「神田伯刺西爾」と誤記→謝罪 一体どこが間違っている?

   「神田伯刺西爾」とあるのは「神田伯剌西爾」の誤りでした――。

   朝日新聞は2021年1月8日付の朝刊(東京最終版)で、5日付朝刊に掲載した喫茶店の名前に誤りがあったことを説明し、謝罪した。一見しただけではわかりづらいが、どこを間違えたのだろうか。

  • 朝日新聞が「神田伯剌西爾」を「神田伯刺西爾」と誤記し謝罪(1月8日紙面より)
    朝日新聞が「神田伯剌西爾」を「神田伯刺西爾」と誤記し謝罪(1月8日紙面より)
  • 朝日新聞が「神田伯剌西爾」を「神田伯刺西爾」と誤記し謝罪(1月8日紙面より)
  • 朝日新聞が間違えた「剌」と「刺」

漢字の「偏」をよく見ると...

   朝日新聞が謝罪したのは、1月5日付の朝刊社会面に掲載した『飲食店ばかり、また 更なる時短へ「死活問題」「支援を」 緊急事態宣言、検討』という記事。4都県への緊急事態宣言再発出で飲食店へ時短要請が出されることを受け、東京・神保町にある喫茶店の店長に思いを聞いていた。同紙が取材した喫茶店の名前として表記されたのは、「神田伯刺西爾(ぶらじる)」。本文中と、写真横の説明の2か所に記されていた。

   しかし3日後の1月8日、朝日新聞は朝刊社会面に「おわび欄」を掲載。訂正内容は次のようなものだった。

「5日付社会面に掲載した、緊急事態宣言による飲食店への影響を報じた記事で、東京都千代田区の喫茶店『神田伯刺西爾』とあるのは『神田伯剌西爾』の誤りでした。『刺』ではなく『剌』でした」

   「刺」と「剌」――。これだけ見て、一体どこが違うのだろう、と思った人もいるだろう。しかし、漢字の偏(へん)の部分をよく見てみる。誤りだった「刺」では真ん中にある「口」の下の部分が開いているのに対し、正しい「剌」では「口」が閉じているのだ。よく見ないと気がつかないようなわずかな違いだが、朝日新聞は「執筆の際に誤記しました。写真説明とともに訂正します」とし、謝罪した。

「刺」と「剌」、読み方・意味の違いは?

   では、「刺」と「剌」の読み方、意味の違いはどういったものだろうか。日本漢字能力検定協会が運営する漢字・日本語検索サイト「漢字ペディア」によれば、「刺」は漢検4級に相当する常用漢字だ。読み方は、音読みで「シ」「セキ」、訓読みで「さ(す)」「さ(さる)」「そし(る)」「とげ」「なふだ」。意味には「さす。つきさす」「そしる。なじる。相手を非難する」「とげ。はり」「なふだ」がある。ページでは丁寧にも「『剌(ラツ)』は別字」と参考書きが記されていた。

   一方の「剌」は常用漢字ではなく、漢検1級に相当する漢字だ。読み方は音読みで「ラツ」、訓読みで「もとる」「そむく」。意味は「勢いよくとびはねるさま。『潑剌(ハツラツ)』」と「もと(る)。そむ(く)。『剌謬(ラツビュウ)』」の2つがあると説明されている。こちらのページにも「『刺』は別字」と参考書きが記されていた。

   「刺」と「剌」は、国語辞典『広辞苑第七版』(岩波書店)ではどう説明されているのか。「刺す」を引くと「こことねらいを定めたところに細くとがったものを直線的につらぬきとおす」「つきこむ。つきとおす」「刃物で人をついて殺傷する」など、詳細に意味の説明がなされている。

   一方の「剌(らつ)」は「亜剌比亜の略」とだけ記載されており、これ以外に詳しい意味は載っていない。「亜剌比亜」は「アラビア」を漢字で表したものだ。また、「はつらつ」で引くと「溌剌」が出てきたものの、「もとる」「そむく」と引いても「剌る」「剌く」という漢字はそれぞれ出てこず。「剌謬」も出てこなかった。