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かわいさの裏で社会風刺? ショートアニメ「PUI PUI モルカー」が大人の心を掴んだ理由 

   テレビ東京系の子ども向け番組枠「きんだーてれび」内で放送されているショートアニメ「PUI PUI モルカー」がネットでブレークしている。

   モルモットが「モルカー」という自動車になった世界を舞台にした作品なのだが、これがネットユーザーの間でカルト的人気を獲得。放送時間帯にはSNSのトレンドに上ったり、数多のファンアートが流行したりしている。何が人々の心をつかんだのか。

  • 一見かわいいほのぼのとしたアニメだが...(公式サイトより)
    一見かわいいほのぼのとしたアニメだが...(公式サイトより)
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フェルトとモルモットの相性のよさ

   「PUI PUI モルカー」は「きんだーてれび」の火曜日の枠で放送中。第1話は2021年1月5日に放送された。

   作中の世界では、マイカーもパトカーも救急車も、全てモルモットがモデルになったモルカーになっていて、メインとなるモルカーには名前もついている。つぶらな瞳のモルカーは意志を持ち、本物のモルモットのように鳴き、野菜を食べて積んでいる荷物を「排泄」もする。一方、現実と同様に人がちゃんと乗ることができ、2話では銀行強盗に乗っ取られたこともあった。

   表情も性格もさまざまで、時にはドライバーの意志を無視して「暴走」もするモルカーだが、その可愛い見た目と表情豊かなしぐさが子どもだけでなく大人のネットユーザーにも注目されるようになり、二次創作イラストが多数描かれている。ツイッターの公式アカウントのフォロワー数は1月15日時点で15万人にまで達した。

   また本作は1コマずつ静止画を撮影してつなげたストップモーションアニメで、フェルトで編んだモルカーと人形を使って撮影、その上で車内のドライバーは生身の人が演じているという手の込んだつくりになっている。

   監督の見里朝希さんはストップモーションアニメ「マイリトルゴート」(2019年)でイタリアの「ASFF:As Film Festival 2018」の短編アニメーション部門最優秀賞を受賞、高い評価を受けている新進のクリエイターだ。

   もともと子ども向け番組枠で放送が始まったはずが、なぜここまで多くの人が魅かれるようになったのか。その理由を、アニメ評論家の藤津亮太さんはJ-CASTニュースの取材にこう解説した。

「見里監督の『マイリトルゴート』でのフェルトの素材感を生かしたスタイルは、本作にも受け継がれています。フェルトの柔らかさ、あたたかさとその柔らかさを伝える動き(顔や体の伸縮、歩く仕草などなど)がモルモットというモチーフと合致して、とてもかわいいキャラクターが出来上がっています。鳴き声、仕草などモルモットらしさを徹底しているのも、モルモット好きな人をはじめ、動物好きの人にアピールしたと思われます。
また、作品の世界観に想像の余地があり、『自家用車だけじゃなくて救急車があるなら、こんな車もありそう、こんな使い方をされそう』と、自分なりのモルカーの妄想をふくらませられる余地があるのが、大人に受けている理由でしょう」

表面的にはほのぼのしているが...

   可愛いモルカーはアニメファンの創作欲を刺激したが、本作にハマってしまう理由はそれだけではないようだ。銀行強盗や渋滞が発生し警察が出動するなど、表面的なほのぼのとした空気の裏にシュールさが潜む。

   実は見里監督の前作「マイリトルゴート」は、童話の「オオカミと7匹の子ヤギ」を題材にしながら、作中の動物に仮託して児童虐待を描いた意欲作と評価されている。「PUI PUIモルカー」もモルカーの仕草と作中の人間の行動のギャップに「闇」を感じるという感想も見受けられ、社会風刺的なメッセージを読み取るアニメファンもいる。

    まだ第2話までしか放送されていないが人気上昇中の「PUI PUIモルカー」、19日放送予定の3話は「ネコ救出大作戦」と予告されているが、どんな展開を見せてくれるか、興味は尽きない。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)