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アイドル握手会「オンライン&対面」のハイブリッド型広まるか コロナ禍1年、AKB各グループの試行錯誤

   コロナ禍でアイドルの「握手会」イベントが開催できなくなって1年以上が経つ。握手会がファンとアイドルが直接話せる数少ない機会なのはもちろん、CDにイベント参加券をつける方式は、アイドル事業の収益の柱のひとつでもある。各地のアイドルグループでは、ファンとアイドルがコミュニケーションを取る場を確保しようと、試行錯誤が続いている。

   イベントの多くが「オンライン握手会」といった取り組みに移行しているが、一部では対面式のイベントも復活している。ただ、対面式の場合、新型コロナウイルスの感染状況によっては延期や中止のリスクも残る上、会場への移動で感染リスクを懸念するファンもいる。こういった背景を踏まえて、対面式とオンラインの両方を行う「ハイブリッド型」ともいえる取り組みも進みつつある。

  • 2020年はアイドルグループの活動が大きく制限された(写真は2020年11月のHKT48劇場・こけら落とし公演)
    2020年はアイドルグループの活動が大きく制限された(写真は2020年11月のHKT48劇場・こけら落とし公演)
  • 2020年はアイドルグループの活動が大きく制限された(写真は2020年11月のHKT48劇場・こけら落とし公演)
  • AKB48ではオンラインで握手会の代替イベントが行われている。写真は2020年10月に開かれたAKB48の「オンラインお話し会」の様子((c)AKB48)
  • SKE48は「現地でトーク会」を開催。「2.5m 程度の距離を空け飛沫防止シートが設置された状態」でメンバーと会話できるイベントだ。写真は「体験レポート」動画から((c)2021 Zest,Inc./AEI)

グループごとにイベント名もアプリもバラバラ

   握手会はアイドルとファンが至近距離で会話する上、握手で物理的に接触するため、感染リスクが高いと考えられている。握手会の開催が影響を受けた時期も比較的早く、新型コロナの感染事例が国内で確認された翌月にあたる20年2月頃から中止や延期が相次いだ。

   AKB48グループの場合、握手会のオンライン化が本格化したのは20年9月頃。姉妹グループごとに運営会社やレコード会社が異なるため、イベントの呼び方も使うアプリもバラバラだ。例えばAKB48は、事前に握手する相手や時間帯を指定してCDを予約する「個別握手会」の代替イベントを「オンラインお話し会」と呼び、「WithLIVE Meet&Greet」というアプリをスマートフォンにインストールしてメンバーと会話する。

   これに対して、NMB48とSTU48が開いているのは「オンライン個別お話し会」。名前は同じでも、使用アプリはそれぞれ「AERU WORLD」「Meet Pass」で、別々だ。HKT48とNGT48は、それぞれ「オンライン握手会」「オンライン個別おしゃべり会」を開催。名称は異なるが、利用するアプリは同じ「LINE Face2Face」だ。

   このような形で、現時点でも多くのクループが握手会の代替イベントをオンラインで続けている。

   異色なのがSKE48。握手はできないものの、対面にこだわった。20年7月に開催した「現地でオンライントーク会」では、ファンが会場に出向いた上で

「メンバーから一定の距離を(6m前後を想定)おいた場所に、お客様専用のタブレットを設置」

した状態で、タブレット端末越しにメンバーと会話した。これが10月には「現地でトーク会」になり、

「メンバーから2.5m程度の距離を空け、透明の飛沫防止シートを挟んで、お互いの顔が見える距離感で、お客様とメンバーが直接お話頂ける場」

に変化。「生声」で会話ができるようになった。

   ただ、対面型のイベントは感染状況の影響を受けやすいという弱点が残るのも事実だ。21年2月に愛知県内で予定されていた「現地でトーク会」は、愛知県に2回目の緊急事態宣言が発令されたことを受け、21年5月に延期された。

対面式再開でも「オンライン」をバージョンアップする理由

   SKE48以外にも対面型への動きがある。「オンライン握手会」を行ってきたHKT48は、新曲「君とどこかへ行きたい」(5月12日発売)や前作「3-2」(さんひくに、20年発売)の特典として「会場でおしゃべり会」「劇場でおしゃべり会」を開催。ウェブサイトでは

「お客様とメンバーとの距離を保ったレーンに、飛沫防止の透明なシート等を設置させていただきます」

と説明しており、SKE48の「現地でトーク会」に近い内容だ。

   ただし、HKT48がオンラインをやめて、単に対面型に回帰するわけではなさそうだ。4月20日に、新曲の特典として「オンライン握手会」も開くことを発表したからだ。システムもバージョンアップするといい、メンバーによる説明動画も公開された。これまではスマホからしか利用できなかったが、動画の説明によると、タブレット端末やPCからも利用できるようになる。PCにプロジェクターを接続してメンバーを壁に大きく映す、といった楽しみ方も紹介された。

   対面式が再び可能になろうとする中で、コストをかけてオンラインのシステムをバージョンアップするのは異例の対応だとも言える。ただ、HKT48では、「オンライン握手会」以外のオンラインイベントも多かった。

   例えば20年7~9月に有料で配信された、歌を中心にした無観客公演「THE LIVE」。20年夏は劇場公演ができない時期が続いたが、福岡市内のレッスン場からボイストレーニングの成果を配信した。

   劇場公演の影響は、メンバーが誕生日を迎える際に行われる「生誕祭」ができなくなる、という形でも現れた。そこで企画されたのがニコニコ生放送の番組「はかたんじょうかい」。メンバーがファンに感謝の言葉を述べたりする一方で、ファンは課金アイテムで応援したりグッズを買ったりできるようになった。

「劇場公演やコンサートなどと平行して、ご自宅で楽しんで頂けるイベントも」

   劇場公演は出演メンバーを減らした形式で続けてきたが、21年4月13日には、コロナ前にも上演され、16人が出演する「手をつなぎながら」公演がスタート。出演者数はコロナ前の水準に戻った形だが、今後は対面式とオンラインの両にらみで事業を展開していく構えのようだ。

   HKT48の運営会社「マーキュリー」は、対面イベントを再開しながらオンラインのシステムもバージョンアップする取り組みの経緯について、次のように説明している。

「ファンの皆様とメンバーが直接会える機会が減少している中で、少しでも身近に感じて頂けますように、『THE LIVE』『はたかんじょうかい』『オンライン握手会』などのオンラインイベントを開催してまいりました。これからも、ファンの皆様からのご意見を参考にさせて頂き、改善を繰り返しながら、劇場公演やコンサートなどと平行して、ご自宅で楽しんで頂けるイベントも実施させて頂く予定です。引き続き、HKT48への応援を何卒よろしくお願い申し上げます」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)