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NiziU新曲「Take a picture」に見る世界戦略 音楽作家が気づいた「ヒットの仕掛け」とは

【連載】MUTEKI DEAD SNAKEのBUCHIAGARU!! music

   9人組ガールズグループ「NiziU(ニジュー)」の勢いが止まらない。

   日韓合同のオーディションプロジェクトから生まれたグループで、2020年12月のデビューから1か月と経たずに、同年末の紅白歌合戦に出演。縄跳びダンスの振り付けでも話題になったデビュー曲「Make You Happy」は、累計再生回数2億回を突破している。

   そんなNiziUが21年4月7日にリリースしたのが、キャッチーなサウンドが印象的な「Take a picture」だ。以前からコカ・コーラのCMソングに使われていて、意識せずとも楽曲に触れている、といった人も多いはず。

   彼女たちの魅力が詰まったこの新曲には、どんな特徴があるのだろうか。音楽作家のMUTEKI DEAD SNAKE氏が解説する。

  • NiziUの2ndシングル「Take a picture/Poppin’ Shakin’」
    NiziUの2ndシングル「Take a picture/Poppin’ Shakin’」
  • NiziUの2ndシングル「Take a picture/Poppin’ Shakin’」

曲中の「シャッター音」に見る仕掛け

   現在大ヒット中のNiziU、結成前のオーディションプロジェクト「Nizi Project」の頃から見ていた身としては、「こんなに立派に成長して・・・」という謎の親目線で見てしまうのですが、毎回いろんな角度から楽しませてくれる素敵な楽曲をリリースしており、本当にいいグループだなと思います!

   今回はそんなNiziUの楽曲から、最新曲の「Take a picture」をピックアップして解説したいと思います。

◆楽曲のアイデアにBUCHIAGARU!!

   やはりこちらの楽曲を聴いて最初に印象に残るのは、カメラのシャッター音じゃないでしょうか?

   タイトルも「Take a picture」で、あ、写真撮る曲なんだな、みたいになんとなく思って聴いてみたら、想像以上に曲の中で写真撮ってるんですよ!笑

   過去の曲でも、デュラン・デュランの「Girls on Film」のように、写真をテーマにした楽曲で、効果音として部分的にカメラのシャッター音を入れてある曲はあると思うのですが、ここまで楽曲の全編にわたってフィーチャーした曲ははじめて聴きました。

   また、歌詞の中身も、AメロやBメロで写真を撮る理由を言って、サビで写真を撮る、という内容で、本当に「Take a picture」ですし、ここまで「Take a picture」というタイトルが似合う曲は存在しないのではないと思います。

   おそらくプロデューサーの方が、カメラのシャッター音をいっぱい使う曲を使おう、と思って制作をはじめたのではないかと思われますが、この曲のように一つのことがとにかく印象に残る、というのはヒット曲においてとても重要なことだと思います。

   ポップスの作品に関して言えば、3分~5分という長さが主流で、この短い時間の中に気合いを入れていろんなものを詰め込もうとしても、却って何が言いたいかわからず、逆効果になってしまうことが多い印象があります。

   そういう意味では、こちらの楽曲はコンセプトの時点ですでに勝っている曲だなと感じましたし、曲を制作する際には、リスナーに対して何を言いたいのか、何を残したいのか、ということをはっきりさせてから作ることが大事だなと改めて思わされました。

あえて「簡単な言葉」を使っている?

◆世界的ヒットを見据えた言葉選びにBUCHIAGARU!!

NiziU (c)Sony Music Entertainment (Japan) Inc./JYP Entertainment.
NiziU (c)Sony Music Entertainment (Japan) Inc./JYP Entertainment.

   また、この楽曲を聴いていて非常に感じるのは、「世界の誰が聴いても理解できるような楽曲にするんだ!」という強い意思です。

   曲の最初の「Wanna wanna wanna Take a picture now」という歌詞、これを直訳すると「今写真撮りてー!」って意味になりますが、別に訳さなくても「Take a picture」が「写真を撮る」って意味だということは、英語に詳しくない人でも多くの人が理解できると思うんですよね。

   その前の「Wanna wanna wanna」というフレーズも、別に意味がわからなくても、なんかワナワナ言ってるぞ・・・みたいな、なんかノリが良くて気持ちいいな・・・みたいな、言葉というより、単純にリズムとして捉えることができ、言語の壁というものを感じさせない言葉を選んでいます。

   そして、日本語部分でも、あえて子供でも理解できるような「好き」や「あげたい」といった簡単な言葉を選んで書かれており、全体を通して婉曲的な表現はほとんどせず、非常にストレートな言葉を使って歌詞が書かれています。

   解釈の幅の広い言葉を選び、読み手に色々な捉え方ができる余韻を残す、というのも作詞の手法の一つだとは思いますが、この曲のように、誰が聴いても一つの意味に終着するような言葉を選んで書く、というのは、簡単そうに見えてとても技術がいることだと思いますし、大人から子供までリスナーを選ばないので、とても親切だなと思います。

   また、これは僕の想像なのですが、簡単な日本語を選んで歌詞を書くことで、NiziUに興味を持ってもらった日本語圏以外のファンが歌詞の意味を調べたり、訳したりということをする場合に、すぐ正解に辿り着けるようにしているのかな?と思いました。

   人々の行動様式や趣味が多様な時代にヒットを生み出すために、一つの国だけに絞ってヒットを狙うよりも、全世界からファンを集めて人気を出し、世界的なグループに育っていくんだというメッセージを感じ、やはり売れている曲というものにはしっかりとした仕掛けが施されているな、と勉強させられました。