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井上尚弥のKO防衛は「必然」か 世界ランク1位相手でも見つからない不安要素

   ボクシングのWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(28)=大橋=の次戦が2021年6月19日(日本時間20日)に開催されることが決定した。井上と契約する米興行大手トップランク社が5月5日に発表した。

   対戦相手は、IBF同級1位マイケル・ダスマリナス(28)=フィリピン=となり米ラスベガスで開催される。井上にとってWBA王座は5度目、IBF王座は3度目の防衛戦となる。

  • 井上尚弥
    井上尚弥
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舞台は2度目の本場ラスベガス

   「モンスター」の今年初戦がようやく決まった。相手は長らくIBFバンタム級1位の座を維持してきたダスマリナスだ。舞台は昨年10月のジェーソン・モロニー(オーストラリア)戦に続いて本場ラスベガスが用意された。前回は無観客で開催されたが、今回の防衛戦は有観客が計画されている。

   井上にとって約7カ月ぶりとなるリング。指名挑戦者でもあるダスマリナスはどのようなボクサーなのか。

   ダスマリナスは戦績30勝(20KO)2敗1分けのサウスポーで、2012年1月に19歳の若さでプロデビューしている。

   そのキャリアを振り返ると、ダスマリナスはプロ4戦目でKO負けを喫し、その後15連勝を飾っている。連勝の勢いそのままにマイナー団体のIBO世界スーパーフライ級王座に挑戦し12回判定負けを喫した。その後はWBCユースタイトル、フィリピン国内王座を立て続けに獲得し、16年4月に階級を1つ上げてバンタム級に転向した。

ダスマリナスにようやく訪れた権利行使の時

   ダスマリナスの過去の対戦相手をみてみると、世界的な選手はほとんど見当たらず、18年9月に対戦したマニョ・プランジ(ガーナ)が実力的に最上位の選手となる。プランジは現在WBAバンタム級2位にランクされ、18年当時は17戦無敗で、ダスマリナスはプランジを相手に引き分けている。

   そして翌19年3月に同国人であるケニー・デメシリョ(フィリピン)とIBFバンタム級挑戦者決定戦を行い、判定勝利を収めた。ダスマリナスはこの試合で井上への指名挑戦権を獲得し、以来、井上への挑戦機会を待ち続けていた。新型コロナウイルスの影響もあり、試合期間が空いたものの、ようやくダスマリナスに「権利」を行使する時がやってきた。

   サウスポースタイルのダスマリナスは、左のパンチに威力を秘める選手だ。左の使い方がうまく、ボディーやアッパーなどを打ち分け、中間距離からパンチを放ってくる。左に関していえば荒さもあり、大振りのフックになるケースもみられる。また、ガードは決して良い方ではなく、井上の強打がヒットする確率は高いだろう。

井上陣営はダスマリナス攻略法も

   ダスマリナスはスパーリングパートナーとしてたびたび来日しており、井上の実弟・拓真のパートナーを務めた経験を持つ。おそらく井上陣営は拓真とのスパーリングを映像などで徹底的に分析し、すでに攻略法を見出しているだろう。世界戦においてイージーな試合はないが、4団体統一を目指す井上にとってダスマリナス戦は単なる通過点に過ぎないだろう。

   約7カ月ぶりの井上のファイトを多くのファンが期待しているが、その興味はもはや勝敗ではなく井上がどのようにしてダスマリナスを倒すかに向けられている。技術、キャリア的にも脂がのり切っている井上の早期KO勝利は十分に考えらえる展開で、最も現実的な結果なのかもしれない。

   ダスマリナス戦をクリアすれば、次は4団体統一に向けて始動する。

   井上のライバル王者らに目を向けると、WBO王者カシメロ(フィリピン)は8月にWBAレギュラー王者リゴンドー(キューバ)と対戦する。WBC王者ウバーリ(フランス)は5月にドネア(フィリピン)との防衛戦を控えている。世界のバンタム級は井上を中心に回っており、いずれの王者も井上との対戦を望んでいる。そして世界のボクシングファンがダスマリナス戦に注目している。