J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

東京五輪「開催」が「中止」を上回る 世論調査で「風向き」変わる?海外ではなお懸念も

   東京五輪・パラリンピック開催に向けて逆風が吹くなか、読売新聞は2021年6月7日朝刊で、全国世論調査の結果「五輪を開催する」が50%に達したと報じた。

   読売新聞社が6月4~6日に実施した全国世論調査によるもので、東京五輪・パラリンピックについて「開催する」が50%、「中止する」は48%で、「開催する」が「中止する」をわずかに上回った。

  • 画像はイメージ
    画像はイメージ
  • 画像はイメージ

5月時点では「中止」が「開催」上回る

   日本国内の大手新聞社による世論調査の結果は、海外通信社などが速報で報じ、AFP通信は「7日に発表された最新の世論調査で国民の半数が大会開催を支持していることが明らかになった」と報じた。

   一方、TBSは7日、JNNが5~6日に実施した世論調査の結果を報道。「開催すべき」が44%で、「中止すべき」の31%を上回り、「延期すべき」は24%だった。

   東京五輪・パラリンピックの開催を巡る世論調査は各メディアで実施されており、メディアによって数字にばらつきがみられるケースもある。

   読売新聞とJNNの直近の世論調査では「開催」が「中止」を上回っているが、各メディアが5月に実施した世論調査の結果では「中止」が「開催」を上回っていた。

   各メディアの世論調査を時系列で振り返ると、共同通信は5月15、16両日に実施した全国電話世論調査の結果を16日に報じた。調査の結果、「中止するべきだ」が59.7%、無観客で開催が25.2%、観客数を制限して開催は12.6%だった。

朝日新聞調査では「今夏に開催」が14%

   朝日新聞デジタル版によると、朝日新聞は5月15、16日に電話による全国世論調査を実施。東京五輪・パラリンピックの開催に関して3択で聞いたところ、「中止」が43%、「再び延期」が40%、「今夏に開催」が14%で、「中止」が最多を占めた。

   17日に報じられた産経FNN合同世論調査では、「中止する」が56.6%、「観客をいれないで開催する」が26.3%、「観客を制限して開催する」は15.5%にとどまった。

   毎日新聞(WEB版)は5月22日に全国世論調査の結果を報じている。毎日新聞と社会調査研究センターによる調査の結果、「中止すべきだ」が40%、「再び延期すべき」は23%。また、観客の有無に関しては海外からの観客を入れずに開催する方針に「妥当だ」が20%、「国内の観客も入れずに無観客で開催すべきだ」が13%だった。

   各メディアによる5月時点の世論調査では「中止」が「開催」を上回っており、この背景には「緊急事態宣言」、「まん延防止等重点措置」の期間延長が影響しているとみられる。

   緊急事態宣言の期間は目まぐるしく動いた。東京、京都、大阪、兵庫では4月25日から発令。当初5月11日までだったが、2度の延長を経て6月20日まで期間が伸びた。愛知、福岡では5月12日から、北海道、岡山、広島では5月16日から発令。いずれもその後6月20日まで延長した。沖縄も5月23日から6月20日まで宣言下に置かれている。まん延防止等重点措置も5県で期間延長され、5月16日からは群馬、石川、熊本が対象地域となった。

ワシントン・ポストはIOC痛烈批判

   また、国際オリンピック委員会(IOC)が開催にこだわる「理由」も、世論が「中止」に傾いたひとつの要因とみられる。

   米ワシントン・ポスト(電子版)は5月5日のコラムで「東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて前進させているのは金だ」と指摘し、IOCのバッハ会長を「ぼったくり男爵」と表現した。バッハ会長を揶揄した「ぼったくり男爵」はSNSを通じて日本国内で急速に広まった。

   一方で5月下旬には国際オリンピック委員会(IOC)の幹部による「問題発言」が繰り返された。

   IOCのジョン・コーツ調整委員長(71)は5月21日に海外メディアに対して緊急事態宣言下でも五輪は行われると明言。翌22日にはトーマス・バッハ会長(67)が国際ホッケー連盟のオンライン総会にビデオメッセージを寄せ、「東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない」と述べた。

   さらにIOCの最古参委員であるディック・パウンド氏(79)は、5月25日に英紙「イブニング・スタンダード」(電子版)に掲載された記事内で「前例のないアルマゲドンに見舞われない限り、東京五輪は計画通りに進むだろう」と持論を述べ、日本国内で波紋を広げた。

欧州では五輪開催に懐疑的

   東京五輪・パラリンピック開催まで50日を切り、IOCは開催に向けて大会の「安心・安全」をアピールし続けている。ここにきて国内の世論調査に変化が見られ始めたが、海外では開催に向けて懸念が払しょくしきれていないようだ。

   共同通信の6月8日の報道によると、大手世論調査会社ユーガブが7日に欧州5カ国(英国・フランス・ドイツ・デンマーク・スウェーデン)の世論調査の結果を公表。各国1000人から2000人規模を対象に実施された調査では、大半が予定通りに大会が開催されることに懐疑的な見解を示したという。

   7月23日に開幕を迎える東京五輪・パラリンピック。開催に向ける風向きは変わっていくのか。今後の展開に注目が集まる。