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リザードンが200万円?! 希少な1枚は「一種の資産」...ポケモンカード市場が超高騰する理由

   全世界でプレイされるトレーディングカード「ポケモンカード」だが、今コレクションとしての価値もうなぎ上りのようだ。レアカードであれば数万円単位での取引も珍しくはないが、昨今は数百万円台での取引も発生しているという。過熱するコレクター市場を取材した。

  • 左が「かいりき」の初版リザードン、右がそれ以降の「かえん」リザードンで、その違いだけでこれだけ買取価格が違うこともある
    左が「かいりき」の初版リザードン、右がそれ以降の「かえん」リザードンで、その違いだけでこれだけ買取価格が違うこともある
  • 左が「かいりき」の初版リザードン、右がそれ以降の「かえん」リザードンで、その違いだけでこれだけ買取価格が違うこともある
  • 裏面が通常と異なるポケモンカードがある。旧デザインで「旧裏」と呼ばれる右のカードがそれだ

なぜ「かいりきリザードン」がレアなのか?

   2021年6月中旬、東京都内のポケモンカード買取専門店が「『リザードン(かいりき)』200万円買取!」とツイートした。その他のカードでも数十万円単位の買取が可能とツイートしており、様々な中古カード買取店の店頭で見かける売値(数千円~数万円が大半)と比べても極めて高額だ。

   古書・同人誌・玩具などあらゆる中古コレクターズアイテムの買取を行っている「まんだらけ」(東京都中野区)が、ポケモンカード買取市場の現況について取材に応じた。

   1996年に最初のカードが発売され、以後バージョンチェンジを繰り返しているポケモンカードは、多種多様なカードが中古市場でもコレクターの熱視線を浴びている。まんだらけカード部門責任者の田嶋宏一郎さんが解説する。

「欲しい人がいればニーズが生じますから、最新のカードから初版の古いカードまで様々なカードが取引されます。そして古いカードで状態が良いまま残っているものは枚数が少なく、市場に出回る機会が少ないです。それが初版のような古いカードに高値がつくシンプルな理由です。またそれ以後も、限定品のようなカードが発売されていますのでそれらもプレミアムな価値がつきます。一方で、価格というのは常に変動しますから、ある買取店でいくらの査定価格になったから別の買取業者でも同じ価格、という相場のようなものはありません」

   「リザードン」はもともと人気が高い。その中でもレア度が高いのは、初期の一部カードだ。本来「かえんポケモン」と書かれているリザードンだが、初版カードだけ「かいりきポケモン」と書かれて発売されていた。これは「かいりきリザードン」と呼ばれ、超高額買取の理由となっている。こういった「エラーカード」も珍重される。

「実際に数百万円の買取価格になることは極めて稀」

   またポケモンカード界隈では「旧裏」という用語もある。2001年にカード裏面のデザインがリニューアルされたが、古いデザインのカードが「旧裏」として珍重されているのだという。

   もちろん買取価格にはカードの状態が大きく影響するので、「200万円」という買取価格はあくまで「超美品」の場合。その点はまんだらけも含めて買取業者の間ではシビアに査定される。「初版のリザードンでしたら、当社でも買取例があるのは1年に数枚程度です。その時点で貴重ですが、コレクターの方々は本当に微細な傷跡にもこだわります。一般の方がこれ美品でしょ?と思うものでも、なかなか査定で美品扱いになることは少ないです。10段階の査定基準で、かなり状態がよい8や9の基準で買取可能なケースは稀ですね」(田嶋さん)という。

   そしてカードはゲームで使い続ければ当然摩耗するため、はじめからコレクション目的で収集していないと状態を保つことは難しい。初期はプレイ目的のユーザーが多く、コレクターが少なかったために美品そのものが少ないことも美品カードの価値を高めている。

   田嶋さんは「実際に数百万円の買取価格になることは極めて稀です」とも話す。

プレミアがプレミアを呼び「バブル化」の様相か

   20年以上の歴史があるポケモンカードは海外版の展開も活発だった。海外でも熱烈なコレクターがいて、ここ1~2年で相場も上昇していると田嶋さんは分析する。米オークションサイト「Goldin auctions」では数万ドルの額で取引されるポケモンカードも現れた。

   2021年6月6日に米フロリダ州でボクシングの元世界王者フロイド・メイウェザー・ジュニア氏とエキシビションマッチで対戦したボクサーでYouTuberのローガン・ポール氏は、初期版のリザードンのカードを着用してリングに登場し注目を浴びたが、そのカードの推定時価は約100万ドルとも言われている。

   「当社の『まんだらけオークション』でも、以前は高くても数十万円程度で落札されていたのが、今や300万円台で落札されたケースもあります」と田嶋さんも話すように、過熱気味の中古ポケモンカード市場。価格高騰の背景をこう推察する。

「本職のコレクターの他にも、カードのプレミアに目をつけて参入してきた投資家のような人々も取引に参加しているのではないでしょうか。少ないカードを求める人が増えれば当然相場は上がり、そういった話題性自体がまた相場を引き上げることもあります。自然に市場価格が上がるような希少なカードは、持っているだけで一種の資産のようになります」(田嶋さん)

   所有していること自体がステータスになるレアカードは、話題が話題を呼んでバブル的な人気を博しているようだ。「トレーディングカードという文化を根付かせた」(田嶋さん)とも言われるポケモンカードであるが、このフィーバーはいつまで続くだろうか。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)