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次世代J-POPの象徴? ずっと真夜中でいいのに。の新曲をプロが絶賛する理由

【連載】MUTEKI DEAD SNAKEのBUCHIAGARU!! music

   リアルでは顔を出さず、ネットの世界を中心に活動する次世代アーティスト。その代表格の1つが、2018年6月に活動をスタートした「ずっと真夜中でいいのに。」だ。

   ボーカル・作詞作曲を担当するACAねさんが率いる音楽ユニットで、特定のメンバーを固定せずに活動。注目のきっかけとなったデビュー曲「秒針を噛む」は、公開から3年で9600万回以上の再生回数を誇る。ずとまよ・ZTMYの愛称でも知られる。

   最近では、菅田将暉さんが主演する映画「キャラクター」の主題歌(ラッパー・Rin音さんとのコラボ曲)を担当するなど、さらに活動の幅を広げている。21年5月には、幕張メッセでのワンマンライブも成功させた。

   そんな「ずとまよ」の楽曲を、プロはどう見ているのだろうか。音楽作家のMUTEKI DEAD SNAKE氏が。新曲「あいつら全員同窓会」を通じて解説する。

  • ずっと真夜中でいいのに。の魅力をプロが解説
    ずっと真夜中でいいのに。の魅力をプロが解説
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同じメロディでも全然違う...サビのアレンジに注目

   現在大人気の「ずっと真夜中でいいのに。」の新曲「あいつら全員同窓会」。

   グループ自体は知っていたもののあまり楽曲は知らなかったのですが、たまたまストリーミングで音楽を聴いていたときに流れてきたこちらの楽曲を聴き、今ではすっかり「ずっと真夜中でいいのに。」にハマってしまいました。

◆シンプルかつ洗練されたアレンジにBUCHIAGARU!!

   こちらの楽曲を聴いて最初に、アレンジが洗練されていてかっこいい!と思いました。

   静かなイントロからAメロから始まり、Bメロでは太く煌びやかなギターが入り、そのままギターのフレーズで盛り上げつつストリングスのフォールでサビが始まる...というように徐々に楽器を増やして効果的に盛り上げる構成になっており、その時点でかなりテンションが上がります。

   ですが、僕がとくに大好きだなと思ったのはサビが始まってからのアレンジの展開です。

   「あいつら全員同窓会」のサビは、歌詞もメロディも同じものを2回繰り返すという構成になっています。そのため、アレンジも同じものを繰り返すと、ちょっと単調な印象を受けてしまうと思います。

   では、こちらの楽曲のサビのアレンジがどうなっているかといいますと、1回し目では全体の演奏を休符多めで抜き気味に演奏しており、カナダのシンガーソングライター・Carly Rae Jepsenのヒット曲「Call Me Maybe」を彷彿とさせるようなアレンジがなされています。

   そして、2回し目は最初と打って変わって全体の演奏のボルテージが一気に上がり、イメージさせる景色を一気に変化させ、歌詞もメロディも同じであるにもかかわらず違うサビが始まったような印象を与えます。

   このような展開をつけることによって、リスナーの耳を惹きつけて飽きさせずに楽曲を聴かせることができますし、何より2回し目のストリングスの一つ一つのフレーズがエモーショナルで、思わず胸が締め付けられてしまいます。

   このような楽曲を聴くと、楽器の数や音数を増やすことよりも、一つ一つのアレンジのアイデアや、フレーズが大事なのだなと改めて気付かされます。

最後の最後まで予想を裏切る展開

◆裏切りのギミックにBUCHIAGARU!!

   また、こちらの楽曲ではリスナーを裏切る仕掛けが多く用意されています。

   先ほども述べたサビのアレンジもその裏切りの一つなのですが、まずそもそもサビの転調が突然でハッとさせられますよね!

   また僕が大好きなのが1番のサビが終わった後のストリングスのユニゾンで演奏される間奏なのですが、今まで一度も出てこなかった三連符を多く使用したフレーズになっており(しかもフレーズ自体も超かっこいいですよね)、その意外性におおっ!っとまたもや惹きつけられてしまいます。

   それ以外にも2番のサビが終わって始まる新しいパートの最後は楽器の演奏が消えボーカルだけになる大胆なアレンジが施されているほか、メロディも9小節で構成されるイレギュラーなものになっており、いい意味での違和感があり印象に残ります。

   そして、最後のサビが終わった後に、曲が終わるのかと思いきや、今までにはなかったラップのパートが始まり、最後の最後まで予想を裏切ってくる盛りだくさんの展開になっています。

   このようなサービス精神満載の楽曲を聴くととても刺激を受けますし、情報量が増加した現代のJ-POPシーンを象徴するような楽曲だなと思いました。