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処分やむなしの介護用ベッド・車いすを救った「SNSの力」 高校の告知拡散→全物品の譲渡先決まる

   埼玉県立新座高等学校が介護用ベッド6台、車いす26台、白杖40本の引き取り先を探している――SNS上では2021年8月19日ごろから、こんな情報が拡散され、話題になっている。

   J-CASTニュースが20日、同校に取材すると引き取り先を探していたのは事実。SNSでの呼びかけが拡散され、全ての物品の引き取り先が確定したとのことだった。

  • 介護ベッドや車いすなどを譲渡すると話題に(画像はイメージ)
    介護ベッドや車いすなどを譲渡すると話題に(画像はイメージ)
  • 介護ベッドや車いすなどを譲渡すると話題に(画像はイメージ)

引き取り先も売却先もなく、このままでは処分に...

   新座高校の担当者によれば、これらの物品は福祉の授業で用いられていたもの。教育課程が変更となったため、福祉の授業がなくなり不要となってしまったのだという。物品は福祉実習室で保管されていたが、同教室を通常教室として利用できるよう、処分する必要が出てきた。

   高校は県の規定に則り、物品の引き取り先や売却先を探し回ったが行き先は決まらなかったと、担当者は話す。

「埼玉県の規定に基づき、保管転換という形で同じ県有施設に引き取り先がないか当たりました。ところが購入から10年以上経過しているもので、使用には耐えるけれどもかなり古く重いものですので、引き取り先はございませんでした。
次に売却を検討し、リサイクルショップなど調べましたが、売却先は見つかりませんでした。さらにその後、埼玉県ではなく市町村の福祉課や社会教育委員会(社教)に連絡し、必要としている施設はないか探しましたが見つかりませんでした。福祉物品を必要とするボランティア団体への寄付も検討しましたが、県立学校の予算では届ける送料を捻出できませんでした」

   これらの物品はもう処分するほかなかった。しかし年数が経ってているとはいえまだ使える物品を処分するのは忍びなく、さらには処分にかかる費用を捻出するのも厳しいという事情があった。高校は、欲しい施設や病院がないか探し続けていた。

拡散以前は3件しかなかった引き取り先

   新座高校は16日、フェイスブック上で福祉物品の引き取り先を探していると告知した。18日までに引き取りを申し出た人は3人しかいなかった。

   事態が一変したのは19日。ツイッター上で、同校が福祉物品の引き取り先を探していると紹介する投稿が相次いだ。もっとも拡散された投稿は9000リツイートを超えた。

   同行の担当者によれば、フェイスブックの告知が拡散され、さらにその投稿をスクリーンショットしたものがLINEやツイッターなど様々なSNSに転載され広がっているという。

   その影響か、引き取り希望者からの連絡が殺到し、すべての物品の行き先が確定した。担当者は、突然多くの問い合わせが寄せられたことに驚きを隠せずにいる。

「本校でもこんなに問い合わせがあるとは思っていませんでした。そもそも社教やリサイクルショップなど学校で知りうる限りの譲渡先や引き受けを探した結果、1つもなかったものですから。ごみにして捨てるのも忍びなく、どこか1か所でも有効活用してくださるところがあればありがたいと思い、気軽な気分で告知していました」

   一方で大きな注目を集めたことによって、SNS上では「税金で買ったものを譲渡していいのか」といった批判的な声もあがっていた。しかし高校の担当者は、譲渡する物品は税金で購入したものではないと説明した。

「本校では県有の公費で購入したものと保護者の寄付金で購入したものがございます。
今回出しているものは、10数年前に保護者の方々の寄付金で購入したものであって、税金で購入しているものではございません。処分することについては後援会の会長にも了承をいただいたところでございます」

   埼玉県立新座高校で不要となった介護用ベッド6台、車いす26台、白杖40本は、無事に新たな人のもとで活用される見込みだ。

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)