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「同じラッパーとして恥ずかしい」 批判殺到の密フェス、同業者からも相次ぐ失望の声

   密状態で開催されたとして批判が相次いでいるヒップホップ系野外フェス「NAMIMONOGATARI2021」について、同フェスに出演していない「同業者」のアーティストらから、落胆の声が相次いでいる。

  • 参加者で密状態だった会場(出演者MC TYSONさんのインスタグラム投稿動画から)
    参加者で密状態だった会場(出演者MC TYSONさんのインスタグラム投稿動画から)
  • 参加者で密状態だった会場(出演者MC TYSONさんのインスタグラム投稿動画から)

「あれやられたら僕らの苦労が一瞬で水の泡になる...」

   2021年8月29日に愛知県常滑市の会場で開催された音楽フェス「NAMIMONOGATARI2021」をめぐっては、酒類の販売があったほか、観客が密になってのステージを鑑賞する姿などが報告されていた。

   大勢の観客らがもみ合いになりながら歓声をあげる様子などを映した動画もSNSで拡散され、インターネット上では批判の声が殺到。30日には、愛知県と常滑市側それぞれが主催者へ抗議をした。

   今回の騒動をめぐっては、「同業者」のヒップホップアーティストからも、ツイッターに落胆の声が続々と投稿されている。

   「Creepy Nuts」のDJ松永さんは、会場となった常滑市の市長・伊藤たつや氏と愛知県知事の大村秀章氏による同フェスへの抗議ツイートをリツイートしたのち、NAMIMONOGATARIに直接は明言していないものの、

「悲しいし、恥ずかしいし、情けないし、悔しいし、気持ちの整理がついていない状況です」

と投稿した。

   SEAMOさんは「あれやられたら僕らの苦労が一瞬で水の泡になる...。愛知県にも、お客さんと共にしっかりと感染症対策をやっているライブイベントもあるのに」と、厳しい状況下で踏ん張る多くのライブイベントに触れ、やるせない気持ちを吐露している。

「小さなライブハウスですら営業止めてるとこばかりなのに」

   今回のフェスの会場がある知多半島・東浦町出身の17歳ラッパーREINOさんは、真っ直ぐな言葉で抗議の気持ちを綴っている。

「#NAMIMONOGATARI 出たラッパー、リスペクトしてる人たくさん居たけど。ガッカリ。失望。同じラッパーとして恥ずかしい。般若さんやANARCHYさん、自分が尊敬してるアーティストばかりなだけに本当に悲しい」
「これはお客さんよりも、ラッパーの責任ですよ みんな音楽で食えてるはず。無理してライブしなくても大丈夫な人たちばっか。なのに緊急事態宣言下での野外出演を了承して、ファンに声かけて、声出しさせて...小さなライブハウスですら営業止めてるとこばかりなのに。ホントに失望」

   ヒップホップグループ「RHYMESTER」の宇多丸さんは、30日放送のラジオ番組「アフター6ジャンクション」(TBSラジオ)に出演し、今回のフェスをめぐり持論を展開した。

「『波物語2012』で1回、僕らは出たこと(ある)。出る側のメンツも、いらっしゃるお客さんも、どっちかっていうとヤンチャ寄りな感じの空気のイベントで。ちょっとワイルドにやっちゃったのかな、っていう」

と、当時のイベントの空気感について振り返った。

「『行ってダメでした』なんていうのは言い訳にならない」

   さらに宇多丸さんは、ヒップホップ業界全体として、「いろんな意味で時代の先を走っているべき」と指摘。そのうえで、

「ヤンチャであるっていうことと、今回みたいなちょっと周りから見て『そういう意識の持ち方なんですか?』なんて言われるようなのはちょっと恥ずかしいっていうか。ヒップホップシーンこそがそういうところでいち早く進んだ手を打つというような。いろんな面に関してね」

と語った。

   今回のフェスをめぐる問題については「反省しろとしか言いようがないけどね」としつつ、「でも、今回の一件を見てより、本当に自分で......要するに『行ってダメでした』なんていうのは言い訳にならないなっていうか」とイベント出演者としての心構えをしっかりと持っておくべきだと強調した。

   「あと、もうひとつさ、それこそ客席もそうだけど。俺、ぶっちゃけ、感染対策がゆるゆるなところのバックステージとか、絶対に行きたくねえし。俺もかかりたくないから。全員のために気をつけたいと思う」として、出演者・観客ともに感染を防ぐ取り組みが必要だと語った。

   また、感染対策の甘さ以外にも「会場がゴミだらけだった」などの指摘が相次いでいることに対し

「僕は何度も言うけど、ヤンチャであることと美意識高く持つことは全然両立することで。そこがちゃんといけることがヒップホップのかっこよさでもあるんだから。これはヒップホップシーン全体が、意識面からももうちょっと先に進もうぜって考え直す契機になれば、せめて......」

と業界をあげての意識改革の必要性を訴えた。