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西九州新幹線の開業で「観光列車」も変化? 「36ぷらす3」現行ルートの継続難しく...動向が焦点

   2022年秋に予定されている西九州新幹線の部分開業(武雄温泉~長崎間)で、九州の観光列車の楽しみ方が少し変わることになりそうだ。JR九州は21年10月27日、観光列車「ふたつ星4047」(ふたつぼし・よんまるよんなな)の運行を新幹線の部分開業に合わせて始めると発表した。列車が走る佐賀、長崎両県を「ふたつの星」になぞらえ、車両はキハ40、47形気動車(ディーゼル車)を改造することにちなんだ愛称だ。

   現時点で両県に乗り入れる観光列車のひとつが、在来線特急の「つばめ」などで活躍した787系電車を改造した観光列車「36ぷらす3」だ。だが、長崎本線の一部で電化設備の撤去が決まっており、実質的に現在のルートで運行を続けるのは難しくなるとみられる。新列車は、この非電化になる区間を補完する面もありそうだ。ただ、新列車は元々非電化だった大村線も走行することになっており、「36ぷらす3」では見られなかった景色も楽しめるようになる。

  • JR九州のキハ40形気動車。新しい観光列車「ふたつ星4047」はキハ40、47形気動車を改造する予定だ
    JR九州のキハ40形気動車。新しい観光列車「ふたつ星4047」はキハ40、47形気動車を改造する予定だ
  • JR九州のキハ40形気動車。新しい観光列車「ふたつ星4047」はキハ40、47形気動車を改造する予定だ
  • 2022年秋に運行が始まるJR九州の観光列車「ふたつ星4047」(ふたつぼし・よんまるよんなな)が予定している運行ルート。午前に運行される往路は長崎本線を、復路は大村線を通る(写真はJR九州のプレスリリースから)
  • JR九州が運行する観光列車「36ぷらす3」。西九州新幹線の部分開業後は長崎本線の一部が非電化され、長崎駅への乗り入れができなくなる可能性が高い
  • 肥薩線で走っていたJR九州の観光列車「いさぶろう・しんぺい」。キハ47形、キハ140形気動車を改造した

往路は有明海、復路は大村湾を眺める「西九州の海めぐり列車」

   「ふたつ星4047」のコンセプトは「西九州の海めぐり列車」。土日祝日を中心に武雄温泉~長崎間を1日1往復する。西九州新幹線が「内陸の『山』」を走るのに対して、新列車は「『海』に面したルート」を通るのが特徴だ。午前出発の往路は有明海を眺めながら長崎本線を通って長崎に向かい、午後出発の復路は大村湾に沿って走る大村線を北上して武雄温泉に戻る。車両デザインや社内サービスの概要は改めて発表予定。デザインは、多くのJR九州の観光列車を担当してきた水戸岡鋭治氏が担当する。通常の特急と同じ水準の料金で乗車できる。

   JR九州では、観光列車のことを「D&S(デザイン&ストーリー)列車」と呼んでおり、発表資料では

「2022 年秋からは西九州新幹線『かもめ』、D&S列車『36ぷらす3』、そして『ふたつ星4047』で佐賀・長崎の旅をお楽しみください!」

と、3つの列車が楽しめることをうたう。この中の「36ぷらす3」は、20年にデビューし、博多~佐賀~肥前山口~諫早~長崎のルートを週1回往復している。このルートの一部は西九州新幹線開業後に電化設備が撤去されることが決まっているため、別途ディーゼル機関車を用意しない限り、「36ぷらす3」の長崎乗り入れは不可能。今後の動向が焦点だ。

電化設備をわざわざ撤去する理由

   九州新幹線の部分開業で「並行在来線」になる長崎本線の肥前山口~諫早間(60.8キロ)は乗客の減少が見込まれる。そのため、JR九州が引き続き運営することは困難だとして、線路管理と列車運行の事業者を分ける「上下分離」が行われることになっている。前者は両県が出資する「佐賀・長崎鉄道管理センター」が、後者は引き続きJR九州が担う。

   肥前山口~諫早間は電化路線の維持コストの方が重荷になるとみられるため、電化設備を撤去し、気動車の運行に切り替えることで07年に両県とJR九州が合意。その後、特急電車の運行区間を伸ばしたり、運行コストを削減したりする目的でJR九州が肥前山口~肥前浜間(18.0キロ)の電化維持を提案していた。その結果、現時点では肥前浜~諫早間(42.8キロ)の非電化が決まっている。

   JR九州の広報部では、西九州新幹線開業後の「36ぷらす3」の運行について「今後の方向性については決まっていない」と話している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)