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意外とアナログ?大型旅客機の「大掃除」 ブラシでゴシゴシ、15人がかりで6時間

   全日空(ANA)は2021年12月27日、超大型旅客機のエアバスA380号機を水洗いする様子を成田空港で報道陣に公開した。作業が公開された1号機(JA381A)は、22年1月1日の「初日の出フライト」で、1か月ぶりに乗客を乗せて飛行予定。新年の乗客をピカピカの機体で迎えられるように、「今年の汚れは今年のうちに」落とすことにした。

   水洗いの方法は、機体にホースで水をかけ、先端に洗剤がついたブラシやモップでこすって汚れを落とす、というオーソドックスなものだ。他の機種よりもサイズが大きいため、普段よりも人出を増やして作業に臨んだ。

  • 巨大なA380型機を洗うのは「人力」だ
    巨大なA380型機を洗うのは「人力」だ
  • 巨大なA380型機を洗うのは「人力」だ
  • 2階席部分もモップを使って洗う
  • 操縦席付近の危機には事前にマスキングが施されている
  • 垂直尾翼は高所作業車から作業した
  • 翼の裏も念入りに洗う

ボーイング777の2.5倍の作業量

   A380は総2階建てで、乗客520人を乗せることができるのが特徴。ANAのA380には、ハワイでは神聖な生き物だと考えられているウミガメのハワイ語の愛称「ホヌ」にちなんで、「空飛ぶウミガメ」の意味を持つ「FLYING HONU」(フライングホヌ)という愛称がついている。ハワイへの新たな足として19年に就航したが、ほどなくコロナ禍の影響が深刻化。20年3月25日にホノルルから成田に戻った便を最後に定期便としては運休が続いている。

   それでも21年は、1号機だけでもハワイを1往復したほか、国内線の遊覧飛行を26回行った。それ以外にも、空港に駐機する機内で機内食を食べて旅行気分を味わうイベントも開かれた。

   1号機の最後の水洗いは21年4月。8か月分の汚れをまとめて落とした。作業は15人がかりで6時間かかる。小型機のボーイング737型機は9人で2時間、大型機のボーイング777型機は9人で4時間かかるといい、単純計算すると、A380はボーイング777の2.5倍の作業量だ。使用する洗剤と水の量は、ボーイング737型機と比べて3.5倍、ボーイング777型機と比べても1.75倍にのぼる。

   機体につく汚れは、大気中の「ちり」や、雨が降った後の「雨だれ」、可動部から出る油など。特に落ちにくいのが油汚れだといい、落ちにくさに応じてブラシ棒→モップ棒→パッド棒と使い分ける。柄の長さは最長で6メートルもある。

A380だと「(作業位置が)上に上昇するし、作業範囲が増えるところが一番大変」

   作業を担当した羽田空港グランドサービスの佐藤皇太さん(27)は、その苦労を「A380だけ2階建てなので、その分(作業位置が)上に上昇するし、作業範囲が増えるところが一番大変」と語った。A380の作業で気をつけていることのひとつが、「車両の止め位置」だ。A380は全長72.7メートル、全幅79.8メートル、全高24.1メートルに及ぶ。4台の高所作業車を駆使し、最大で6メートルほどの棒を使って機体を洗ったが、それでも1台の作業車から作業できる範囲は限られている。「決まっているところに止めないと作業が難しくなってしまう」といい、車両の位置が作業効率を上げるコツのようだ。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)