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消えた年末の風物詩 日テレ「笑ってはいけない」18年の歴史を振り返る

   今年の年末は、「笑ってはいけない」がない――。

   日本テレビの大みそかの人気番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」の「笑ってはいけないシリーズ」は、2021年は放送されないことが決まっている。代わりに、生放送のお笑い番組「笑って年越したい!笑う大晦日」が放送される。

   年末の風物詩となっていただけに、大みそか当日のインターネット上では、放送がないことを嘆く声や、過去のシリーズを懐かしむ声が続々と出ている。そこでJ-CASTニュース編集部は、過去18回にわたって放送された「笑ってはいけない」の歴史を振り返ることにした。

  • 松本人志さん(2016年撮影)
    松本人志さん(2016年撮影)
  • 松本人志さん(2016年撮影)

第1回の罰は「吹き矢」だった!

   「笑ってはいけないシリーズ」の第1回は、2003年7月から8月にかけて「ガキ使」の通常放送において、4回に分けて放送されていた。そう、シリーズの始まりは大みそか番組ではなかったのである。

   さらに、笑ってしまった際の罰が、今と全く異なるものだった。罰をめぐっては第2回からムチなどが使われているが、第1回のみ、その執行手段は「吹き矢」だったのである。

   後のガキ使の通常放送で明かされたところによると、吹き矢の構造はシンプルなもので、工作用の木製の棒に縫い針を取り付けただけのハンドメイド感あふれる手作りの製品。それを、罰を受ける出演者の尻目がけて吹き矢として発射し、これを命中させるというものだった。

   針は実際に出演者の尻に刺さっており、このため、命中の瞬間は大きな悲鳴が上がることに。近年の棒よりもハードな罰、と言っていいだろう。

   また、シリーズに参加するメンバーにも違いがあった。2006年までは、「ガキ使」のレギュラーが全員参加していたわけではなく、通常放送における対決企画の敗者に対する罰ゲームとして開催されており、勝者は仕掛け人として笑わせる側に回っていたのだった。なお、大みそかの放送となったのは同年からであった。

毎年の趣向を凝らしたテーマに視聴者は魅了された

   「笑うと吹き矢や棒で罰を受ける」という理不尽なルールに加え、毎年設定されるテーマもまた、視聴者を魅了したのだった。

   2003年と04年の第1回と第2回はそれぞれ山梨県内の温泉旅館と湯河原温泉(神奈川県)の旅館で、出演者たちが襲い掛かる笑いの刺客からの攻撃に耐えるというものだったが、05年の第3回は「絶対に笑ってはいけない高校(ハイスクール)」という明確なテーマが設定され、以降、毎年、「絶対に笑ってはいけない○○」というタイトルとなった。

   テーマが設定されて以降、出演者は「病院」(07年)、新聞社(08年)、「ホテルマン」(09年)といった、職業をロールプレイングしながら、襲い掛かる笑いの刺客からの攻撃に耐えるというフォーマットが定着したことが分かる。

   その職業は年によっては「スパイ」(10年)「大脱獄」(14年)「トレジャーハンター」(18年)といった職業となる年もあったほか、「地球防衛軍」(13年)という荒唐無稽なものになることも。

   また、同一、もしくは類似のテーマとみなせる放送回も存在する。「高校」がテーマになったのが第3回(05年)と第17回(19年)、似たテーマでは、第4回「警察」(06年)と第15回の「アメリカンポリス」が存在する。

笑いの刺客が「みそぎ」として登場することも

   回を追うごとに笑いの刺客が豪華になっていったのも、「笑ってはいけないシリーズ」の歴史を振り返る点で重要な点だ。そして、後期になると、その年に世間を騒がせてしまった著名人が「みそぎ」の形で出演し、出演者を笑わせるシーンも増えていった。

   17年に放送された「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」では、同年に不倫を「週刊新潮」に報じられた袴田吉彦さんが笑いの刺客として出演。漫画「変態仮面」の衣装に身を包んで(?)登場して視聴者を笑いの渦に突き落とした。

   19年に放送された「絶対に笑ってはいけない青春ハイスクール24時!」では、同年に「週刊文春」に不倫を報じられた原田龍二さんが、変態仮面の衣装と同様、非常に露出度が高い衣装で、「みそぎの先輩」たる袴田さんと共に登場し、大爆笑をかっさらったのだった。

   なお、「笑ってはいけないシリーズ」の裸芸に関しては原田さんの方が先輩であることも申し添えておこう。16年放送の「絶対に笑ってはいけない科学博士24時」で、原田さんはアキラ100%さんと共に「丸腰デカ」として出演していたのだった。

大問題になったシーンも

   たくさんの笑いを届けてきた「笑ってはいけないシリーズ」だが、演出が問題視されたこともある。

   17年放送の「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」の冒頭、出演者の5人が収録用の衣装に着替えた際、「ダウンタウン」の浜田雅功さんは顔を黒塗りにして登場。テーマが「アメリカンポリス」ということで米映画「ビバリーヒルズ・コップ」のエディー・マーフィーさんを意識した扮装だったが、これに対し、黒人差別ではないかとの指摘が上がったのだ。

   この演出に対しては年明けから番組を批判する論調の報道が目立ったほか、騒動を報じた「ハフィントンポスト」の取材に対し、日本テレビが、マーフィーさんを意識したものであり、差別する意図はなかったとしつつ、「本件をめぐっては、様々なご意見があることは承知しており、今後の番組作りの参考にさせていただきます」と回答するなどした。

   21年8月24日には、放送倫理・番組向上機構(BPO)が、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」を審査対象とすることを発表した。発表では「個別の番組を対象とするものではない」としつつ、

「視聴者やBPOの中高生モニターから、出演者に痛みを伴う行為を仕掛け、それをみんなで笑うような、苦痛を笑いのネタにする各番組は、『不快に思う』、『いじめを助長する』などの意見が継続的に寄せられてきていること等を踏まえ、」

   と、審査対象とするに至った経緯を説明している。

   これを受け、松本さんは9月5日放送の「ワイドナショー」では「『ダウンタウンの番組は大丈夫なんか?』ってネットニュースがあおるわけよ。別にBPOさんはダウンタウンのことなんか何も言ってない」と発言したほか、「笑ってはいけない」の休止が発表された後となる同月26日には同番組で、3月頃には休止することが決まっていたとしつつ、「BPOにやめさせられたと言うていこうかな」とボケてみせたのだった。

コロナに負けなかった20年の「GoToラスベガス」

   「笑ってはいけないシリーズ」が現時点で最後に放送されたのが20年。この年は「絶対に笑ってはいけない大貧民GoToラスベガス24時!」とのタイトルで、ラスベガスをテーマに放送。コロナ禍の撮影ではあったが、途中で例年にはないクイズコーナーを挟むも、これまで通りのフォーマットで撮影されたシーンは多く、大きな影響を感じさせない内容になっていた。

   そして、その翌年となる2021年の大みそかには......残念ながら「笑ってはいけないシリーズ」は放送されない。同時間帯には日本テレビ系で生放送の後継番組「笑って年越したい!笑う大晦日」が放送されるが、どんな番組になるだろうか。

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)