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「北斗の拳」ミュージカルが感じさせた「原作リスペクト」 愛称は「アタタミュ」...その魅力に迫る

   週刊少年ジャンプのヒットマンガ「北斗の拳」の初のミュージカル化作品「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」は2022年1月16日の名古屋公演(愛知県芸術劇場)で千秋楽を迎える。

   「北斗の拳」を舞台化するという異色の作品は21年12月8日に東京公演(日生劇場)で幕を開けると、SNSで徐々に評判を上げ、「アタタミュ」の通称まで生まれ、原作コミックのファンからも好感を得ているようだ。

  • ミュージカル「北斗の拳」での躍動感あふれる大貫雄輔さんのケンシロウ(舞台初日の大貫さんのインスタグラムより)
    ミュージカル「北斗の拳」での躍動感あふれる大貫雄輔さんのケンシロウ(舞台初日の大貫さんのインスタグラムより)
  • ミュージカル「北斗の拳」での躍動感あふれる大貫雄輔さんのケンシロウ(舞台初日の大貫さんのインスタグラムより)
  • 加藤和樹さんとダブルキャストでトキを演じた小野田龍之介さんの舞台姿(ツイッターより)

重厚な人間ドラマながら「名台詞」もしっかり

   「北斗の拳」といえば原作マンガは週刊少年ジャンプで1983年から88年に連載されブームとなった。核戦争で荒廃した世界で男たちが戦うハードボイルドアクションだが、ホリプロの制作で初のミュージカル化が実現、主演のケンシロウが大貫勇輔さんで、ユリアを平原綾香さんとMay'nさん、トキを加藤和樹さんと小野田龍之介さんのダブルキャストなど、ミュージカル界で実績ある俳優陣が揃った。

   とはいえ、マンガは筋骨隆々のキャラクターが戦い、「ひでぶ」「汚物は消毒だ」のように強いインパクトを残してネットミーム化した描写も。これらを舞台でどう表現したのか、初日舞台を取材したライターの五月女(そうとめ)菜穂さんはこう話す。

「ミュージカル化のニュースには演劇ファンは『えっ!』と驚きの反応もあり、『どんな舞台になるんだろう』と興味半分・おそるおそる半分で受け止めていたところもあったと思います。でも幕を開けてみると、演出の石丸さち子さんの手腕で重厚な人間ドラマが展開されていました。バトルシーンはワイヤーアクションや映像で舞台上でも違和感なく表現しています。ギャグ風の場面もありますが、北斗神拳をめぐってのシリアスな男たちのドラマを堪能できます」

   主演の大貫さんは公演に合わせて身体づくりを行い、ケンシロウの肉体美をイメージさせる。さらには「お前はもう死んでいる」「ひでぶ」「あたたたたーーっ!」などのマンガでの印象的なセリフも舞台で話されているそうだ。「3時間の舞台で原作マンガの物語をまとめ、しっかりリスペクトも感じさせる舞台でした」と五月女さん。「あたたたたーーっ!」のセリフから「アタタミュ」という略称がファンの間で生まれ、いまやSNSで出演俳優や舞台のアカウントまでも使っている。

原作者も涙させたミュージカル

   原作者の武論尊さんは舞台のツイッターアカウントで公開されているインタビューで「ああいうアクションものが舞台でどういう風になるのか、歌って踊るわけですからコメディかな?とも最初思ってたんですけど、全く予想を覆されました。ちょっと泣いてしまった自分がいました」と話し、作画の原哲夫さんも「歌が...泣きましたね。上手すぎて」「ダイジェスト感もありましたけど、こんなに全部網羅していただいて...クライマックスの連続で飽きさせないですよね」と感想をコメントしている。

   本作はフランク・ワイルドホーンさんの書き下ろし楽曲により、しっかりミュージカルとしても成り立っている。

「ワイルドホーンさんによる壮大なミュージカルナンバーで人物の感情と物語が表現されるところは聴きごたえがありますし、大貫さんが得意なダンスでの表現力もみどころでした。もちろんメインキャスト以外にも、アンサンブルの俳優の皆さんも歌とダンスで舞台を引き締めています」(五月女さん)

   トキを演じた小野田さんのビジュアルがSNSで原作ファンの目に留まり反響を呼ぶといった出来事もあり、マンガファンからもポジティブな評判になっている。「ホリプロは2015年にも『DEATH NOTE』をミュージカル化していて、日本オリジナルのミュージカルで、日本マンガを世界に広めるという意気込みで舞台化しました。『アタタミュ』も同じ狙いで、22年秋には中国でのツアー公演も予定されています。いざ幕が開くと演劇ファン・マンガファンのどちらも楽しめる舞台になったと思います」(五月女さん)

   東京・大阪・名古屋での公演で約1カ月の公演期間を完走した「アタタミュ」こと「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」。マンガ舞台化の歴史にしっかり名を連ね、観客と原作ファンに記憶されたようだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)