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議論呼ぶ「乳がん検診啓発ポスター」 日本対がん協会が謝罪「患者や家族の気持ちを傷つけてしまった」【追記あり】

   乳がん検診の受診を呼びかける「ピンクリボンデザイン大賞」の受賞作をめぐって批判が集まっていた問題で、主催する日本対がん協会は2022年2月21日、「お気持ちを傷つけてしまった患者さんやご家族のみなさまにお詫びを申し上げます」と謝罪した。

  • ピンクリボンフェスティバル公式サイトより
    ピンクリボンフェスティバル公式サイトより
  • ピンクリボンフェスティバル公式サイトより
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「ハッとする表現をしたいと思いました」

   議論となっているのは、21年10月に発表された第17回ピンクリボンデザイン大賞のポスター部門グランプリ作だ。

   同賞は、「乳がんの早期発見の大切さを伝え、検診受診を呼びかけるとともに、正しい知識の習得と自分に合った適切な行動を促す作品」を一般募集した。日本対がん協会、朝日新聞社などが主催し、後援には厚生労働省、東京都、日本医師会、日本看護協会、日本乳癌学会が名を連ねる。

   コピー部門とポスター部門の2つがあり、計2万件以上の応募があった。コピーライター、アートディレクターと広告関係の6人が審査員を務めた。

   ポスター部門グランプリは、「『まさか、私が』と毎年9万人が言う」と書かれた作品だった。中央にくじ引きに使う抽選器が描かれている。回した後とみられ、受け皿にはピンクの玉が転がっている。

   応募者は制作意図について次のように解説している。

「『まさか、私が』誰もが一度はそう思った経験があるのではないでしょうか。短いけれどぐっと刺さるその言葉を、見る人の身近なイメージや経験と結びつけ、よりハッとする表現をしたいと思いました」
「何気なく参加した商店街の福引きで当たりが出た時の『まさか』という情景を思い描き、胸に見立てたガラガラ抽選器をデザインしました。何でもないような日常の中に『まさか』が隠れているかもしれないことを伝え、多くの人が乳がん検診を意識するきっかけになればと願っています」

   ニュースサイト「AdverTimes」によれば、審査委員長の中村禎氏は「各部門のグランプリは、審査会で議論をする中で、そんな見方もあるのかと魅力を見つけていけた作品。胸を張って世の中に出ていってほしい」と講評した。受賞者には50万円が贈られ、交通広告として掲出されたほか、多くの自治体で活用されるという。

日本対がん協会の見解

   ポスターは22年2月中旬にSNSでにわかに注目を集めた。

   乳がん経験者らから、当事者への配慮が足りないなどとして批判が次々に投稿された。過去の受賞ポスターも問題視され、賞自体の是非も議論となっている。

「女性は、なんでもデキル。仕事もデキル。恋もデキル。遊びもデキル。育児もデキル。乳がんもデキル」(第7回)
「おまえひとりの、おっぱいじゃないんだぞ」(第12回)
「僕の健康は、母の健康で成り立っている」(第13回)
「午前中、空いてるじゃない 行きなさいよ、乳がん検診」(第14回)

   J-CASTニュースは21日、日本対がん協会に取材を申し込むと、同日に公式サイトで声明を発表した。

   これまでの入選作品に対して問題点を指摘する意見が多く寄せられているとして、「選考の責任はわたくしども協会にあり、お気持ちを傷つけてしまった患者さんやご家族のみなさまにお詫びを申し上げます」と謝罪した。

   また、「偏った価値観に基づいて作品が選ばれているとのご批判もいただきました。ご意見を真摯に受け止め、よりよい啓発活動のあり方を探ってまいります」としている。

   (2月22日追記)日本対がん協会に21日、賞の審査基準やプロセスなどを尋ねると、広報・がん教育グループは次のように回答した。

「ご質問に対し、まとめてお答えいたします。デザイン大賞は、乳がんの早期発見の大切さを伝え、検診受診を呼びかけるとともに、正しい知識の習得と自分に合った適切な行動を促す作品を募集しており、その趣旨を踏まえて選出されたと認識しています]
「5段階ある審査の過程では、患者会審査を設けており、さまざまなご意見をいただいておりますが、審査過程については非公開となっており、詳細はお答えできません。ポスターについてご要望に応じ、協賛企業、自治体、病院などに送付しております」
「これまでに患者さんやご家族のお気持ちを傷つけたとのご意見や、偏った価値観に基づいて作品が選ばれているとのご批判をいただいております。お気持ちを傷つけてしまった患者さんやご家族のみなさまにお詫びを申し上げます。また、偏った価値観に基づいて作品が選ばれているとのご批判も含め、ご意見を真摯に受け止め、よりよい啓発活動のあり方を探ってまいります」