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北欧で航空機にGPS干渉、一部欠航に 4年前の同様事例では「ロシア関与疑惑」

   ロシアのウクライナ侵攻で各国の航空会社がシベリア上空の飛行を避けるようになっても、ロシアによる「空の安全」へのリスクは残る可能性もありそうだ。フィンランドの運輸通信庁(Traficom)が2022年3月10日(現地時間)、「航空機でGPS信号の干渉が観測されたという多数の報告が寄せられている」と発表した。

   現時点でこの原因ははっきりしないが、過去の同様の事例ではロシアの関与が疑われたことがある。さらに、米国とフィンランドの首脳会談で防衛協力を議論した直後に干渉が始まっており、そのタイミングにロシア側の意図を疑う向きもある。

  • ヘルシンキから迂回(うかい)ルートで東京に向かうフィンエアー機。ロシアの飛び地、カリーニングラードに近いリトアニア上空を飛行している(写真はフライトレーダー24から)
    ヘルシンキから迂回(うかい)ルートで東京に向かうフィンエアー機。ロシアの飛び地、カリーニングラードに近いリトアニア上空を飛行している(写真はフライトレーダー24から)
  • ヘルシンキから迂回(うかい)ルートで東京に向かうフィンエアー機。ロシアの飛び地、カリーニングラードに近いリトアニア上空を飛行している(写真はフライトレーダー24から)

リトアニア機が3日間にわたって欠航

   Traficom の発表によると、3月8日には、フィンランド南部のミッケリ、中部のユバスキュラ、中部のクオピオ周辺を飛行していた航空機から干渉の報告が複数寄せられた。この干渉の影響で、リトアニアの航空会社、トランサヴィアバルティカは3日間にわたって、エストニアの首都タリンとフィンランド南部のサボンリンナを結ぶ便の欠航を余儀なくされたという。発表では、

「飛行の安全は確保されている。航空会社には、GPS信号が途絶えた場合の手順がある。航空機は他のシステムを使って安全に航行・着陸することができる」

とする一方で、

「最終進入には、GPS信号を必要としない従来の進入システムもある。航空会社は、GPS信号の干渉が分かっている地域で運航できるかどうかを独自に判断している」

とも指摘。原因については「Traficomでは、何が干渉を起こしているかについて承知していない」として「状況を監視し、情報収集を進める」としていた。

「2018年に同様の干渉がラップランドで観測され、ロシアの関与が疑われた」

   ただ、フィンランド国営放送は、トランサヴィアバルティカの欠航を報じる記事の中で、

「2018年に同様の干渉が(フィンランド北端の)ラップランドで観測され、ロシアの関与が疑われた」

と指摘している。

   ロイター通信は、フィンランドのフィンエアーが2月9日、ロシアの飛び地のカリーニングラード付近でGPSの干渉に気付いたと報じている。さらに、フィンランド当局の話として、それ以外の航空機でもロシアとフィンランドの東部国境付近で同様の問題が報告されたとしている。

   フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領は米ワシントンで3月4日に米バイデン大統領と会談し、関係を深化させることで合意している。会談ではフィンランドと北大西洋条約機構(NATO)の防衛協力の強化についても議題になったといい、ロイターは、干渉が「その(会談の)直後に始まった」としている。

   カリーニングラード州は、北と東側はリトアニア、南側はポーランドと国境を接する。西側はバルト海に面している。フィンランドのフィンエアーは、フィンランドと南ヨーロッパを結ぶ路線やルート変更後の日本路線で、カリーニングラードに近いリトアニア上空を通過している。ロイターは、

「当社のパイロットはここ数日、カリーニングラード付近でGPSの干渉に気づいている」

とするフィンエアーの談話を報じている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)