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早大教育学部の入試国語めぐり著者が問合せ→回答に猛反発「誠実な対応を」 大学「発信は認識」

   早稲田大学教育学部の入試で出題された国語の問題について、問題文に一部内容が使用された書籍の著者である明治大学の重田園江教授(政治思想)が、自らの問い合わせに説明がなかったことに納得できないと、教養情報サイト「SYNODOS(シノドス)」上で早大に抗議した。

   早大からは、個別に説明していないなどと回答があったという。重田教授は、大学側には説明責任があると指摘しているが、早大の広報課は、担当部署に確認したうえで「重田教授の発信は認識している」とだけ取材にコメントした。

  • 早稲田大学
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学部の解答例は、大手予備校3校と違うケースも

   2022年2月19日に行われた教育学部の入試では、国語の第1問で、重田教授の著書『フーコーの風向き-近代国家の系譜学』(2020年)から出題があった。第1問には、問1~8まであり、重田教授は、このうち学部が示した問1~4までの解答例について、3月14日のシノドス投稿で疑義を示した。

   「入試国語選択問題の『正解』について――早稲田大学教育学部の説明責任」。こう題して、解答例について問い合わせをした経緯を長文でつづっている。

   それによると、問1については、イロハニホの5つの選択肢のうち、学部は「イ」を正解とした。大手予備校3校は、入試後に「ホ」が正解だとしていた。これに対し、重田教授は、「イ」は正解の1つでありうるが、「ホ」もダメだとはいえないとし、フーコーの論調全体を考えると、「ハ」が正解だとした。問題文だけを考えると、「ホ」が正解だという。

   問2は、学部も予備校も「ハ」が正解だとし、重田教授も、誤りを除く消去法を使うと同じだと明かした。しかし、難解かつ複雑な概念のため、厳密に言えば、「正解なし」が正しいとし、学部はなぜ「ハ」を正解としたか説明すべきだとした。

   問3は、学部は「ニ」を正解とした。消去法を使えば、一部の予備校のように「ハ」が正解になり、「ニ」との違いが不明だとも指摘した。

   最後の問4は、学部は「ホ」を正解とし、予備校2校もこれを選んだ。しかし、別の予備校1校が選んだように、重田教授は、消去法を使うと「ニ」が正解だとしている。

「納得する人がいるとは思えない回答」

   シノドスの投稿によると、重田教授は3月4日、早大の入学センターに対し、こうした点についての説明を求めてメールで問い合わせした。これに対し、大学側からは、9日になって、次のような回答が返信されてきたという。

「ご意見いただきありがとうございました。頂いたご意見に基づき、学部内で検討した結果,いずれの設問についても訂正の必要はないとの結論に至りました。入試問題への問合せについては、個別にお答えはしていませんので回答は差し控えますが、今後の参考にさせていただきます」

   一方、この返信について、重田教授は、「納得する人がいるとは思えない回答」だったとし、9日中に改めて問い合わせた。しかし、翌10日にまったく同じ回答が来たため、問い合わせの際に予告したように、シノドス上で今回のことを公表したそうだ。

   重田教授は投稿で、「受験生にとってできるかぎり公正な入試問題と解答を作成するとともに、疑義に答えることは、問題作成の役割を担う大学教員にとって、守るべき最低限の誠実さではないだろうか」と苦言を呈し、「大学側に誠実な対応を改めて求めたい」としている。

   重田教授の抗議をどう考えるかなどについて、早大の広報課は15日、J-CASTニュースの取材に対し、入試担当部署に確認したとしてこうコメントした。

「明治大学重田教授がウェブ上でご自身の考えを発信したことは認識しています。いただいた質問事項に関して回答はありません」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)