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「子供もいて借金は残せない」社長が苦渋の決断 青森・はちのへ温泉、源泉枯渇で無念の営業終了へ

   青森県八戸市の天然温泉・はちのへ温泉が、2022年5月31日をもって営業終了することが分かった。源泉の枯渇が進んでいるためだとしており、営業が困難になれば終了を前倒しする可能性もあるという。

   運営会社まるともの横田和広社長は4月8日、取材に対し、日ごろから愛用している利用客たちに申し訳ないと無念を語った。

  • はちのへ温泉が営業終了
    はちのへ温泉が営業終了
  • はちのへ温泉が営業終了
  • はちのへ温泉の外観

「どこかで線を引かなければならない」と悩み続ける

   はちのへ温泉は、2019年3月末に閉店したはちのへ温泉旅館に併設されている。尻内温泉を源泉としており、赤褐色のナトリウム塩化物泉を楽しむことができる。日帰り入浴料金は450円で、毎日通う客もいるという。

   4月上旬、館内に次のような掲示をした。

「源泉の枯渇が進み、温泉の営業の継続が困難となりました。
何とかそこまでは持つのではないかという希望的観測のもと、令和4年5月31日(火)まで営業いたします。
その前に営業が困難となった場合は終了が前倒しになる可能性もあります」

   横田さんは、閉店までの経緯を次のように説明した。最初に異変が起きたのは今年2月末のこと。温泉をくみ上げるポンプが夜に動かなくなってしまった。翌日には業者が来て、ポンプを再稼働させることはできた。しかし数日後、ポンプを引き上げて源泉の様子を確認すると、想定よりも水位が下がっていることが明らかになった。横田さんは「どこかで線を引かなければならない」と約1か月、悩み続けた。

   横田さんは「いつか枯渇するのは分かっていた」と振り返る。2014年ごろには、源泉が枯渇する見通しが立っていたのだという。そのため、現在用いている源泉から30メートル離れたところを掘り進め、新たな源泉を獲得し、行政からの利用許可も得た。しかし新たな源泉は温度も低く、水量も足りなかった。当初は現在の源泉の枯渇を抑えるために、補助的に用いることも検討したが、それすらも難しくなってしまったため、現在は利用していないという。

   現在用いている源泉は限界に近付いている。温泉を新たに掘りあてるのには多額の費用が掛かる。これ以上の営業は困難だと判断し4月、閉店を決意した。

常連客からも惜しむ声が寄せられる

「新たに掘り進めても、確実に温泉が出るという確約はありません。博打のようなものです。子供もいて借金は残せない。それでも掘り進めるという決断をするのはあまりにも・・・」

   横田さんは声を詰まらせた。はちのへ温泉は1980年代、横田さんが中学生の時にオープンした温泉だ。祖父が掘り当て、家業として引き継いだ。2006年には浴槽などをリニューアルし、現在まで多くの人が訪れたという。地元の人々に愛され、長期休暇に帰省した人が立ち寄ることもあったと話す。

   横田さんは毎日温泉につかっており、閉店を告知してからは、風呂場で常連から惜しむ声が寄せられたという。温泉を愛用していた人々に対しては次のように心境を述べた。

「源泉の切り替えがうまくいかず、ごめんなさい。祖父はあてられましたが私はダメだった。毎日うちの温泉に入るなど生活の一部にしてくださる方々からは、無くなると寂しいという声も寄せられました。私自身も大変悲しいですが、こればっかりは本当に申し訳ございません」

   横田さん自身、子供のころから親しんできた温泉であり、自分の代で閉店を余儀なくされたことは非常に残念だと話した。

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)