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「子供の診察中にスマホ撮影しないで!」 親のマナー違反に小児科医が本音...「せめて確認して」

   子供の診察中に動画撮影しないで――。ある小児科医が投稿した、保護者へ向けた注意喚起がツイッターで注目を集めている。

   一方、ネット上では撮影が可能な旨を公表している病院もみられる。注意を呼び掛けた小児科医と、撮影OKをうたう病院の双方に事情を聞いた。

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「初回の予防接種時に特に多い」

   首都圏の病院で小児科医として勤務しているというツイッターユーザーのYzさん(@yzpedinvest)が2022年3月、

「診察中に動画撮影するのやめやがれください 生後2か月の初回の予防接種時に特に多い」

と訴えた。投稿は3000件近くリツイートされたほか、2万2000件の「いいね」を集めるなど注目されている。

   28日、J-CASTニュースの取材に答えた投稿者によると、診察を撮影する人を見かけるようになったのは5年前ごろから。最近は頻度が増している印象があるといい、動画の撮影が中心だという。

   撮影を禁止する理由についてはツイートで、「意図せず個人情報が入ってしまう可能性があることと職員のプライバシーを守るため」だと説明している。

   スマートフォンでの無断撮影が横行していることなどから、今回の注意喚起に至ったという。

   投稿を受けてツイッターでは「カメラまわす発想がなかった」「なぜ動画を録るのかよくわからない」といった反応が出る一方、予防接種時の動画や写真をSNS上で見かけたことがあるといった報告も寄せられている。

   Yzさんは撮影目的を把握できていないとする。しかし写真がFacebookに投稿されているのを目にしたことはあり、「禁止の周知をさらに徹底したこともあります」という。

対応は施設によって異なる

   Yzさんによると、撮影に関する病院の対応はまちまちで、「施設単位で禁止している場合」や「医師によって可否はそれぞれ」などのパターンがあるという。また次のような印象を述べた。

「規模の大きな医療機関ほど禁止する傾向が強いと感じます。診療所レベルでは(施設単位で)禁止しているところは身のまわりでは多くはありません」

   さらに「NICU(編注:新生児集中治療室)や長期入院する施設などはSNSに投稿しなければ制限付きで許可している場合もあります」とも補足する。

   勤務先の病院では撮影禁止、非常勤先の診療所では医師ごとに判断する形が取られているという。職場の反応については、

「『自分が写り込んでしまってはいやだ』『なぜ撮影したいのか感覚的についていけない』といった感想をよく聞きます」

と伝える。「自分が写らなければ気にはしない」といった声を聞くこともあるとする。

   診察中の撮影を禁止しているのは、Yzさんの勤務先だけではない。小児科の取り扱いがある総合病院の公式サイトを確認すると、少なくとも10施設以上が撮影を禁止または原則禁止とする旨を公表していた。

   他方、撮影を許可している病院もある。どのような考えなのか。J-CASTニュースは31日、予防接種時の撮影が可能だとホームページで公表している小児科の院長に話を聞いた。

撮影を許可する病院も...理由は?

   院長によると、子供が初めてワクチンを接種する風景を撮りたいという親の要望は昔からあり、同院ではサービスの一環として応じてきた。看護師が撮影をする。

   昨年、サイトを改修した際にページ上でも案内を始めることとなった。その後は「今までは何となく諦めてたお母さんたちがぜひ撮ってほしいと」などの反響があったという。

   撮影に対する見解は次のように伝えた。

「子供の記録として、1歳のお宮参りと同じような感覚で初めてのワクチン接種を撮っておきたいというのは気持ちとしては分かるので。だからまぁ頼まれたら断る理由はないかなと」

   なお院長はSNSを利用していないため、話題になった投稿は「全然知らなかった」。医療行為を撮影されるという点において「先生によっては嫌がるかも分かりません」と理解を示す。

   投稿で言及された懸念点に関して、職員のプライバシーについては「(子供を)押さえるために映ってるかも分からない。でもうちの職員はそのことも承知で押さえている」。患者の個人情報も「映らないように撮ってると思います」。

   ただし大前提として、あくまで個人の記録として所有することを想定しているとする。

SNS投稿の可能性「全く予想外」

   しかし実状としては、個人で所有するに留まらず、各SNS上に予防接種の風景を投稿するユーザーも存在する。これについて院長は、

「正直言って、SNSに公開するということは全く予想外だった。全世界に自分の姿を発信するという今の若い方たちの考え方に初めて気づいた」

と驚きを示す。これまでは、撮影者の良心を信じていた部分があったと振り返り、「第三者に何の断りもなく出すっていうのが、ちょっと私には良く...世代的に分からない」と戸惑いをみせた。

   また親が子供の写真などをSNSに投稿することに関しては「自己責任」だとしながら、職員らの姿が不特定多数に公開されてしまう行為には拒否感を示す。

   院内では撮影に関して議題にあがったことはないというが、院長は改めて職員らと情報を共有したうえ、撮影方法などを再検討するとした。

   先述のYzさんは撮影に関して次のように訴えている。

「患者サービスとして撮影を許容したり促したりする施設もあるようですが、撮影の可否は施設ごとに異なります。少なくとも撮影前に確認するマナーは求めたいです」