J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「ロシア友好国」ベトナムが「ウクライナに人道支援」表明 岸田首相、外交で「大きな1歩」強調

   東南アジアと欧州を歴訪中の岸田文雄首相は2022年5月1日、ベトナムのファム・ミン・チン首相と会談し、ロシアによるウクライナ侵攻について「国際法及び国連憲章の基本的な原則、特に独立・主権や領土の一体性を尊重する原則が守られなければならないこと」を確認し、「即時停戦と人道支援の重要性」「大量破壊兵器による威嚇や使用、国際人道法に反する民間人や民生施設の攻撃への反対」の2点で一致した。ベトナムは、ウクライナに人道支援を行うことも初めて表明した。

   ベトナムは今でも社会主義国家を標ぼうしており、旧ソ連時代からロシアとの結びつきが強い。ベトナムは今でも直接のロシア批判は避けているものの、会談でウクライナ情勢をめぐる一致点があったことを岸田氏は「前向きな1歩」だと評価。ベトナムのように、G7と同様の対応をしていない国は「相当数存在する」として、「このような国からできるだけ理解と協力を得るよう努めることが重要」だと話した。

  • 岸田文雄首相(左)とベトナムのファム・ミン・チン首相(右)。ベトナム側はウクライナへの人道支援を表明した(写真はベトナム国営紙のウェブサイトから)
    岸田文雄首相(左)とベトナムのファム・ミン・チン首相(右)。ベトナム側はウクライナへの人道支援を表明した(写真はベトナム国営紙のウェブサイトから)
  • 岸田文雄首相(左)とベトナムのファム・ミン・チン首相(右)。ベトナム側はウクライナへの人道支援を表明した(写真はベトナム国営紙のウェブサイトから)

ロシアから武器輸入、対露決議案には棄権&反対

   ベトナムとロシアは軍事的にも関係も深い。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の報告書によると、ベトナムの16~20年の5年間の武器輸入額の66%をロシアが占めている。

   こういった背景は、国際社会での行動にも影響している。国連総会の緊急特別会合で3月2日(現地時間)に採択されたロシア非難決議には141か国が賛成し、北朝鮮など5か国が反対。35か国が棄権し、ベトナムはこの中に含まれる。ロシアの国連人権理事会の理事国としての資格を停止するよう求める決議案が4月7日(同)に採択された際には、93か国が賛成し、58か国が棄権、24か国が反対した。この時は、ベトナムは反対に回った。

   こういったベトナムの立ち位置を踏まえ、今回の会談は「大きな1歩」だったと岸田氏は強調した。具体的には、次のように述べた。

「少なくとも、国際法に違反する、あるいは力による現状変更の試みを、ヨーロッパのみならず、アジアを含めてあらゆる地域で許してはならないということ、こういったことについて一致をしたことは、大きな一歩であると思っている」

「G7と同じ行動は取れない国」と「基本的考え方」すり合わせることが大事

   岸田氏はベトナム以外にも「色々な理由でG7と同じ行動は取れないという国はいる」とも。その上で、そういった国々との一致点を探すことの重要性を強調した。

「しかし、そういった国の中にあっても、今言った基本的な考え方は一致していく、こういったすり合わせを行っていく、こうした努力を我が国は特にアジアを中心に行っていくことが重要」

   記者からの質問に、若干語気を強めて応じる場面もあった。

「意思疎通を図って、最終的にG7と同じ立場を取れなくても、何か1歩でも前進があれば、それでアジアの国々が少しでもG7に近い立場を取ればそれでいい、という風にお考えか」

という問いに対して、岸田氏は「『それでいい』と言っているわけじゃなくて、『それが大事』だということを申し上げている」。ベトナム側が会談の場でウクライナへの人道支援を表明したことは「我々のこうした姿勢や思いに共感してくれた部分ではないか」とみている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)