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国際線往復でPCR検査代「4万円」 「安くなればなぁ」JAL社長が問題意識

   日本航空(JAL)の赤坂祐二社長は2022年5月6日の記者会見で、出入国時のPCR検査のコストを下げる必要性に言及した。往復で4万円かかるケースもあるといい、「そのあたり何か工夫がないかなぁ」「安くなればなぁ」と問題意識を披露した。

   23年3月期の業績予想では、国際線の旅客需要は「コロナ前」の45%程度にまで回復すると見込んでいる。ただ、これは1日あたりの新規入国者数が3万人に引き上げられることが前提。現時点の上限は1万人で、上半期のうちに3万人に引き上げられないと「多分この数字に多分なっていかない」と焦りをにじませた。

  • 23年3月期のJALの業績予想では、国際線の旅客需要は「コロナ前」の45%程度に戻るとみている
    23年3月期のJALの業績予想では、国際線の旅客需要は「コロナ前」の45%程度に戻るとみている
  • 23年3月期のJALの業績予想では、国際線の旅客需要は「コロナ前」の45%程度に戻るとみている

観光客受け入れ再開「大いに期待している」

   1日あたりの新規入国者数の上限は22年4月10日から1万人に引き上げられた。ただ、この中には観光客は含まれていない。ただ、岸田文雄首相が英国で5月5日(現地時間)に行った講演で

「6月には他のG7諸国並みに円滑な入国が可能となるよう、水際対策をさらに緩和していく」

と述べ、観光客の受け入れが再開されるとの見方も出ている。

   赤坂氏は岸田氏の講演内容を

「そういった点(観光客の受け入れ再開)をこれから取り組んでいただけるというお話もあるので、大いに期待している」

と歓迎した上で、「ちょっと細かいんですけど...」と出入国時のPCR検査に言及した。

   すでに観光客の受け入れを再開し、入国後の隔離や待機を求めていない国でも、ワクチンの接種証明やPCR検査による陰性証明を求めている国は多い。これらの国に行く場合、出発前に国内でPCR検査を受けて英文の陰性証明書を取得し、搭乗手続きの際に空港係員が確認する仕組みになっている。

   それに加えて、帰国時にもPCR検査が必要だ。具体的には、滞在先で出国前72時間以内にPCR検査を受け、その陰性証明書を帰国便の搭乗手続きで見せる必要がある。日本政府は「原則として厚生労働省の所定フォーマットを利用」することを求めており、滞在先の検査機関が日本政府フォーマットに対応しているかどうかも事前に確認する必要がある。

   この段取りだけでも負担は大きい。赤坂氏は次のように話し、コスト面での負担軽減を訴えた。

「お客様にとっては往復で、かなりご負担かなぁ...、そのあたり何か工夫がないかなぁ...という風に思う。2回自分で受けると4万円ぐらいかかるという、そんな話もある。安くなればなぁ、こういう風に思っているところだ」

需要回復が早いのは北米、東南アジア路線

   中期経営計画と同時に発表した22年3月期連結決算(国際会計基準)の純損益は、1775億円の赤字だった。2期連続の赤字だったが、前年度(2866億円の赤字)から大幅に改善した。売上高は41.9%増の6827億円。23年3月期の連結業績予想では、純損益は450億円の黒字転換を目指し、売上高は103.6%増の1兆3900億円を見込む。国内線旅客需要は「コロナ前」の19年度の90%程度、国際線では同45%程度まで回復するとみており、その分を業績予想に織り込んだ。

   地域別に見ると、北米は8割、東南アジアは6~7割程度戻るとみているが、厳しい水際対策が続く中国、香港、台湾といった東アジアは回復が遅れる見通しだ。「45%程度まで回復」は、1日あたりの入国者数が3万人に引き上げられることが前提で、赤坂氏は

「上期に3万人にならないと、多分この数字に多分なっていかないと、焦っています」

と漏らしていた。

   一方、ANAホールディングスが4月28日に発表した2022年3月期連結決算は純損失1436億円で、前期の4046億円から改善。売上高は40.0%増の1兆200億円だった。23期3月期の純損益では210億円の黒字を見込む。売上高は62.7%増の1兆6600億円を予想している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)