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「ゆっくり茶番劇」騒動、ドワンゴが4つの対策発表 「一切権利行使しない」防御手段としての商標取得を実施へ

   「ニコニコ動画」を運営するドワンゴは2022年5月23日、「ゆっくり茶番劇」の文字商標が登録された騒動をめぐり、記者会見を開いた。

   専務取締役の栗田穣崇(しげたか)氏は、商標登録による独占の防止を目的とした「ゆっくり」関連用語の商標を出願すると発表した。

  • 話題となっている「ゆっくり」(東方ダンマクカグラ 公式YouTubeチャンネルより)
    話題となっている「ゆっくり」(東方ダンマクカグラ 公式YouTubeチャンネルより)
  • 話題となっている「ゆっくり」(東方ダンマクカグラ 公式YouTubeチャンネルより)

「コミュニティが築き上げてきた文化を独占・私物化するような行為」に憤り

   発端となった商標は2月 24日に登録された。「ゆっくり茶番劇」は、同人サークル「上海アリス幻樂団」が手掛ける作品群「東方Project」の二次創作から発展した動画ジャンルとして、ファンらの間で知られていた。ニコニコ動画でも一定の人気を誇り、キーワード検索をすると騒動以前に投稿された動画は2000件を超える。

   第三者にあたるYouTuberの柚葉さんが15日、「ゆっくり茶番劇」の商標権を取得したとツイッターで報告。商用利用には10万円の年間使用料を要求するとし、ネット上で物議を醸すこととなった。

   ドワンゴは「コミュニティが築き上げてきた文化を独占・私物化するような行為」に憤りを覚えているとし、今回の記者会見に先立ち20日に「文字商標『ゆっくり茶番劇』に関するドワンゴの見解と対応について」を発表した。

   騒動を受け柚葉さんは16日、「今後、使用料(ライセンス契約)は不要」と一部の発言を改めている。しかしドワンゴは、商標権を保持したままであれば「いつでも前言を撤回できる状態」が続くと、危機感をあらわにする。原作者や法律事務所と相談したうえで複数のアクションを行うとし、23日には記者会見「『ゆっくり茶番劇』商標登録に関するドワンゴのアクション」を開いた。その模様はニコニコ生放送でも中継された。

   栗田専務取締役はまず、「ゆっくり茶番劇」について解説し、事前に発表した同社の見解を紹介。その後、新たに下記の4つの対応を行うと発表した。

・商標権の放棄交渉
・「ゆっくり茶番劇」の商標登録に対する無効審判請求
・使用料を請求されてしまった方への相談窓口の設置
・商標登録による独占の防止を目的とした「ゆっくり」関連用語の商標出願

「ドワンゴが権利行使をするために出願するわけではございません」

   ドワンゴは、「ゆっくり茶番劇」という言葉は動画ジャンルを指す言葉の1つとして認識しているという。動画投稿サイトのプラットフォーマーという立場に加え、取り扱うジャンルが商標登録されてしまったという点ではこの問題の当事者でもあるとして、対応を行うとしている。

   柚葉さんが所属するライバーコミュニティ「Coyu.Live」は 21日、柚葉さんが23日から放棄手続きを開始する意思を示したと伝えている。しかしドワンゴは現時点では、商標取得者が商標取得を発表した柚葉さんと同一人物であるとは確認できてないという。商標権がまだ放棄されていないという認識から、まずは商標取得者と接触し、交渉を進めたいとしている。

   権利者が商標「ゆっくり茶番劇」の放棄に応じなかった場合には、登録を無効とする特許庁の審判「無効審判請求」を行うとした。さらには、商標の使用料や損害賠償を請求された人が現れた時に備え、無料相談窓口の設置を行うと発表した。相談内容に応じて、警察や法律事務所など適切な機関に繋げられるようにするとしている。

    最後に「ゆっくり」関連用語の商標登録の出願を行うと発表した。そもそも「ゆっくり」とは、「東方Project」の二次創作キャラクター等を指しており、そのキャラクターを用いた掛け合いは「ゆっくり動画」などと呼ばれている。これらの派生形の一つに「ゆっくり茶番劇」や「ゆっくり実況」などがある。

   栗田氏は商標登録の出願の狙いについて、次のように説明する。

「ドワンゴが権利行使をするために出願するわけではございません。ジャンルカテゴリを示す単語として一般的に知られていることを理由に、特許庁が商標登録を拒絶すれば、だれも商標登録できないことが明らかになります。
一方、その文字列について商標登録がなされてしまった場合においても、取得した『ゆっくり』関連の商標権について、弊社は将来にわたって一切の権利行使をしないことをここでお約束します」

   これらの取り組みは「ネットクリエイターを守るための取り組み」だとして、原作者であるZUN氏の了承を得ていると説明した。