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「車両の古さ」逆手に集客アピール 「国鉄型の聖地」で注目、JR岡山支社の観光戦略

   JR西日本の岡山支社エリアが、国鉄時代の車両が根強く現役で活躍する「国鉄型の楽園」として注目を集めている。

   岡山支社もそうした鉄道ファンの熱気に着目。「国鉄型の聖地」をうたった企画を展開するなど、観光施策として活用している。

   2022年7月から9月にかけて開催される観光施策「岡山デスティネーションキャンペーン」に関連し、JR西日本岡山支社では「おか鉄フェス2022」と銘打った鉄道イベントを開催する。

   その中には、「国鉄型の聖地」と銘打って支社管内の国鉄時代の車両を活かしたものも。

   かつて岡山~鳥取間を津山線・因美線経由で運転していた急行「砂丘」や、関西から四国への連絡列車として大阪~宇野間で運転の急行「鷲羽」のリバイバル運転を行い、津山線ではキハ40・47系による「みまさかスローライフ列車」の運転が3年ぶりに復活する。117系電車による夜行運転も可能なイベント列車「WEST EXPRESS銀河」も岡山エリアへの運行が決まった。

  • 381系特急「やくも」と115系の普通列車。どちらもファン注目の存在だ(岡山駅にて)
    381系特急「やくも」と115系の普通列車。どちらもファン注目の存在だ(岡山駅にて)
  • 381系特急「やくも」と115系の普通列車。どちらもファン注目の存在だ(岡山駅にて)
  • 「おか鉄フェス」のキービジュアル。115系・381系・キハ47系などの国鉄型車両も多く登場する

「国鉄岡山」にファン注目

   これらイベント列車以外にも、岡山支社エリアには今や全国的には希少になった国鉄型車両が多く残っている。電車では1960年代から80年代まで量産された113系・115系電車が山陽・伯備・宇野・赤穂線の大半の普通列車を担い、気動車も1970~80年代増備のキハ40系が吉備線・津山線で活躍している。

   国鉄末期から1990年代のJR初期には全国各地で見られたこれらの車両群は各社で淘汰が進み、JR東日本では22年3月で115系が定期運用から引退した。JR西日本でも2010代年までは広島エリアや関西エリアにも残っていたこれらの系列は置き換えられ、広島都市圏では2018年秋以降、すべての電車がJR発足後のものになった。

   岡山~出雲市間を走る特急「やくも」にも国鉄型の381系電車がいまだ現役で、22年3月から1編成が赤とベージュの国鉄特急色に塗り替えられファンの注目を集めている。こんな状況を鉄道ファンが通称して呼んでいるのが「国鉄岡山」というワードだ。

   鉄道ファンからの熱い視線を察知してか、岡山支社も前出のように国鉄の遺産をPRし始めた。津山市には旧津山機関区の蒸気機関車時代の機関庫を活用した車両展示施設「津山まなびの鉄道館」もあり、鉄道づくしの観光ができるエリアでもある。

23年度から新型車投入、過去のものに

   「2022年は日本の鉄道開業150周年にあたりますし、因美線全通90周年の節目の年でもあります。岡山備後は交通の要衝でもあり、鉄道とのかかわりは深いエリアです。車両の古さも今となっては全国的に珍しいことですので、国鉄型も強みとしてPRできればと思います」と、5月26日に取材に応じた岡山支社の担当者は話す。

   1972年3月15日の山陽新幹線岡山開業から50年、山陰方面への「やくも」と、岡山駅に乗り入れるJR四国の特急「南風」「しおかぜ」が四国島内で運行を始めてから50年と節目の多い2022年。瀬戸大橋を鉄道で渡って四国にアクセスでき、「サンライズ瀬戸・出雲」も岡山駅で分割・併合を行う。各地から多種多様な列車がやってくるエリアだ。

   しかし、岡山が国鉄車両の楽園でいられるのも長くはない。23年度以降から岡山エリアでは新しい普通列車用の電車の投入が始まる計画で、115系や113系は置き換えられていく。「やくも」にも24年度以降新形式の投入が決まっており、ほどなく現在の光景も過去のものになる。

   「置き換えが始まる前のこの時期に早めに楽しんでいただければと思いますが、岡山備後には国鉄型の他にも観光列車『La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボア)』や『トワイライト瑞風』の運行予定もあります。鉄道の聖地としての岡山を幅広く楽しんでいただきたいですね」とJR西日本岡山支社は話している。