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アイドル提供楽曲が別人名義で無断使用 作詞作曲しほり勝訴も事務所対応なし...代理人弁護士に聞く刑事告訴の見通し

   女性アイドルグループに楽曲を無断使用されたと1年前に訴えたシンガーソングライターのしほりさんが、訴訟にも勝ったものの所属事務所が何も対応しないとして、刑事告訴の構えを見せている。

   一体どんな状況になっているのか、しほりさんの代理人弁護士に取材して話を聞いた。

  • 楽曲無断使用を訴えたしほりさん(インスタグラムshihori94から)
    楽曲無断使用を訴えたしほりさん(インスタグラムshihori94から)
  • 楽曲無断使用を訴えたしほりさん(インスタグラムshihori94から)

「別人名義の作詞作曲によるグループの曲としてリリース」

   しほりさんは、女性アイドルグループ「Buono!」が歌う「初恋サイダー」の作曲で知られ、水樹奈々さん、ももいろクローバーZなどへの楽曲提供も行っている。

   しほりさんの公式ツイッターによると、ある女性アイドルグループに自身が作詞作曲したデビュー曲を提供したが、グループの所属事務所は、しほりさんが著作権管理を委託している日本音楽著作権協会(JASRAC)との契約を拒否し続けた。

   2021年6月になって、所属事務所がしほりさんにお金を支払わないまま、別人名義の作詞作曲によるグループの曲として公表してリリースしたことが分かり、しほりさんは、ツイッターで怒りを露わにした。

   このときは、グループ名などを明かさなかったが、22年6月3日になって、「青空のプラネタリウム」に提供した楽曲「アステリズム!」だったとツイッターで明かした。この曲は、チバテレビで放送されたバラエティ番組「AKB48のナイショ哲学」のエンディング曲にも使われていた。

   ツイートでは、東京地裁に提訴した結果、地裁がしほりさんの主張を全面的に認めて勝訴し、判決は5月6日に確定したと報告した。著作者人格権の侵害による損害賠償や楽曲利用の差し止め、公式サイトでの謝罪がその内容だった。所属事務所側は、裁判に出廷せず、15分で判決が出たという。

   ところが、青空のプラネタリウムは突然、活動を停止し、5月1日からグループ名を「NSTAR」に変えて活動を再開した。所属事務所の名前も、楽曲のリリース直前に「Ready株式会社」から「MILENIA株式会社」に変わっていたという。

   しほりさんは、グループを紹介してもらったプロデューサーがいる音楽出版社を通じて再三協議を要請したが、所属事務所側は、これに回答をせず、沈黙したままだという。謝罪などはなく、「アステリズム!」のリリースを現在も続けているため、弁護士と相談して刑事告訴の準備を進めていると明かした。

「適切に対応していただけずに大変残念です」

   エンタメ関連訴訟を多く手がけるレイ法律事務所代表の佐藤大和弁護士らがしほりさんの代理人をしており、佐藤弁護士は6月3日、J-CASTニュースの取材に対し、しほりさんが今回ツイートしたことで、同日昼過ぎ現在では、所属事務所側からの反応はまったくないとした。

「裁判において対応していただけると考えておりましたが、適切に対応していただけずに大変残念です。刑事については、現在、警視庁の原宿警察署に相談しております。来週には担当警察官と話をする予定で、受理していただけると考えております。刑事告訴は、著作権法違反であり、具体的には、しほりさんの公表権侵害と氏名表示権侵害となります」

   勝訴した民事訴訟では、この2つが含まれる著作者人格権侵害が認められて、総額220万円の賠償命令が出たとした。

   「アステリズム!」は、しほりさんがJASRACに自身の作品として届け出て、21年6月に受理されて登録している。

   楽曲の著作権を持つJASRACでは、所属事務所がリリースしていることへの対応について、広報部が取材にこう説明した。

「今回は、著作者人格権に関する訴訟ですので、こちらが関与していません。しほりさんが現在対応されていますので、今後所属事務所側にこちらが申し入れなどをすることは現時点では考えていません」

   J-CASTニュースでは、所属事務所側に対しても、ツイッターなどを通じて取材依頼している。回答があれば追って伝える。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)