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井上尚弥は「PFP1位でもおかしくない」ドネア戦を識者大絶賛 「あの右クロスは井上にしか出来ない芸当」

   プロボクシングの世界バンタム級3団体王座統一戦が2022年6月7日、さいたまスーパーアリーナで行われ、WBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋、29)がWBC世界バンタム級王者ノニト・ドネア(フィリピン、39)を2回TKOで下し王座統一に成功した。

  • ドネアの顔面に左を決める井上(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)
    ドネアの顔面に左を決める井上(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)
  • ドネアの顔面に左を決める井上(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)

初回のダウンで試合の半分ほどが決まった

   井上は1回終了間際に右クロスでドネアからダウンを奪い、続く2回にドネアをロープに追い詰め左フックでキャンバスに沈めた。19年11月の初戦は2回にドネアの左フックで右目上をカットするなど苦戦を強いられ判定までもつれたが、2年7カ月ぶりのリマッチで衝撃的なTKO勝利を収め世界の「モンスター」を証明した。

   世界3団体の王座統一を果たした井上は今後、世界4団体王座統一を目指しWBO世界バンタム級王者ポール・バトラー(33)との対戦を熱望。年内開催に向けてバトラー陣営と交渉に入る見通しで、日本ボクシング界史上初の主要世界4団体の王座統一が現実味を帯びてきた。

   世界5階級制覇のレジェンドをわずか264秒で仕留め、改めて「モンスター」ぶりを世界にアピールした井上。世界4団体統一、そしてスーパーバンタム級への転級。J-CASTニュース編集部は、協栄ジムの金平桂一郎会長(56)にドネア戦を分析してもらい、今後の展望を占ってもらった。

   世界が注目したリマッチはわずか2回で決着が付いたが、金平会長は初回のダウンで試合の半分ほどが決まったと指摘した。

「2回であっさりと倒すなんて誰も思ってない」

「あの右クロスは狙っていたと思います。ドネアは右に頭を傾ける癖があり、ドネアのパンチ、距離を見切っているからこそ打てたパンチ。あの短い距離であの強いパンチを打てるのは井上選手しかできない芸当でしょう。お互いに危険な距離でしたが、井上選手は見切っているからこそ踏み込んでいけた」

   井上のパンチで大きなダメージを受け試合後の会見をキャンセルしたドネアは、自身をプロモートするプロベラム社の公式サイトでコメントを発表し、井上の右クロスについて「何が起こったのか分からなかった」「パンチが見えなかった」「頭の中が完全に真っ白になった」などと言及している。

   金平会長は戦前、井上のKO勝利があるとすれば中盤までに効果的にボディーを攻撃し、終盤にかけて倒す展開を予想していたという。

   「序盤の2回であっさりと倒すなんて誰も思っていなかったと思います」と振り返り、「昨日の内容でしたらパウンド・フォー・パウンド(PFP=階級の壁を越えた最強ランキング)1位になってもおかしくない。ドネアは5階級を制覇していますし、ここのところ調子が良かった。その相手に圧勝ですから。今のタイミングでは1位だと思います」との見解を示した。

「第一人者がそれにふさわしい試合をした」

   世界的な評価が高い井上は、海外メディアが独自に作成するPFPランキングで常に上位にランクされている。米国の権威ある老舗専門誌「ザ・リング」では現在PFP3位にランクしている。米スポーツ専門局「ESPN」では2位にランクされ1位を視界にとらえている。

   これまで各メディアのPFPランキングで1位に君臨していた世界スーパーミドル級4団体統一王者サウル・アルバレス(メキシコ、31)が、5月7日にWBA世界ライトヘビー級王者ディミトリー・ビボル(ロシア、31)に判定で敗れPFPランクを落としたため、1位を狙う絶好の好機でもある。

   次戦はWBO王者バトラーとの王座統一戦の可能性が高く、開催場所に関しては日本、米国、英国などが候補に挙がるとみられる。

   金平会長は「イギリスに乗り込んで井上尚弥の強さをヨーロッパに見せつけるのがいいと思う」と言及し、改めて「この日は短い試合でしたけど日本のボクシング界をけん引している第一人者がそれにふさわしい試合をしたと思います」と評価した。