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首相は言及減、立憲からは「辺野古」消える 与野党そろって「軽量化」する「基地負担軽減」の決意

   沖縄戦の組織的戦闘が終結した「慰霊の日」にあたる2022年6月23日、糸満市の平和祈念公園で全戦没者追悼式が開かれた。コロナ禍の影響で20、21年と2年連続で県外からの招待を見送られたが、3年ぶりに首相を招待した。

   玉城デニー知事は「平和宣言」の中で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への移設断念を求める一方で、岸田文雄首相は「基地負担軽減の目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げていく」とあいさつ。菅義偉前首相が21年に寄せたビデオメッセージよりも基地負担軽減に関する言及は減り、例年同様「辺野古」の単語は登場しなかった。大きく変化したのが立憲民主党が出した談話だ。21年に枝野幸男前代表が出した談話では「辺野古移設工事は中止」することをうたったのに対して、今回、泉健太代表が出した談話からは「辺野古」の文字が消え、「この不条理を解決することが政治の役割に他なりません」などとするにとどまった。

  • 「慰霊の日」に開かれた全戦没者追悼式で「平和宣言」を読み上げる玉城デニー知事(写真右、写真は沖縄県の配信動画から)
    「慰霊の日」に開かれた全戦没者追悼式で「平和宣言」を読み上げる玉城デニー知事(写真右、写真は沖縄県の配信動画から)
  • 「慰霊の日」に開かれた全戦没者追悼式で「平和宣言」を読み上げる玉城デニー知事(写真右、写真は沖縄県の配信動画から)

返還の実績に関する言及も消える

   この1年で、国政の与野党ともにトップが交代。双方のあいさつで、基地負担の軽減に関する部分が簡素化された。

   21年に菅氏が寄せたビデオメッセージでは、

「これまで多くの沖縄の方々と直接お会いし、基地負担について率直なお気持ちを伺い、沖縄のため、具体的な成果をあげるべく、全力を尽くしてきた」

として、菅氏が官房長官を務めていた第2次安倍政権で実現した北部訓練場や西普天間住宅地区跡地の返還に言及。

「引き続き、『できることはすべて行う』との方針の下、沖縄の基地負担の軽減に向け、一つ一つ、確実に結果を出していく決意」

などと述べた。

   一方、岸田氏のあいさつでは、沖縄県に基地負担が集中していることを「重く受け止め」た上で、

「引き続き、基地負担の軽減に全力で取り組んでいく。在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小を進めており、基地負担軽減の目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げていく」

と述べた。

枝野談話では辺野古への移設断念と地位協定の改定を主張

   質・量ともに変化したのが、最大野党の立憲が出した談話だ。基地負担の軽減をめぐる部分では、枝野氏の21年の談話では

「我々は、沖縄の民意を尊重し、軟弱地盤の問題などが明らかになった辺野古移設工事は中止し、沖縄の基地のあり方について見直して米国に再交渉を求めていきます。ましてや、辺野古新基地建設に、多くの沖縄戦犠牲者の遺骨が眠るこの沖縄南部地区の土を使うことなどあってはなりません。さらに、地位協定について、米軍、軍人等に対する国内法の原則順守などについて米国と協議し、米軍駐留のあり方を改善する努力を続けます」

として、辺野古への移設断念と地位協定の改定を明示的に主張していた。一方で、泉氏の談話では、次のような記述にとどまった。

   「沖縄は今も米軍基地の重い負担を担わされています。加えて先島地域では、近年、防衛体制が急速に強化されています。県民にとって、日々生活する島が緊迫した国境の最前線に立たされているのが現状です。この不条理を解決することが政治の役割に他なりません。対話外交によってアジア地域をつなぎ、共に発展する『万国津梁』の島々にしていくことが最重要です。

   立憲は7月10日に投開票される参院選に向けた公約の柱のひとつに「着実な安全保障」を掲げる。その中では、

「弾道ミサイル等の脅威への抑止力と対処能力強化を重視し、日米同盟の役割分担を前提としつつ、専守防衛との整合性など多角的な観点から検討を行い、着実な防衛力整備を行います」

とうたう一方で、次のように辺野古移設断念の主張は維持している。

「辺野古新基地建設を中止し、沖縄における基地のあり方を見直します。南西諸島の防衛力整備については、住民との十分な対話と丁寧な手続きを旨とし、国民保護の徹底を図ります」

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)