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いたずら119番続出→消防士が人物特定に動くも停職3か月 「かわいそうだ」と擁護も...習志野市の見解は

   千葉県習志野市内で相次いだいたずら疑いの119番通報について、通報した人物特定に動いた消防士が、守秘義務違反などで市から停職3か月の処分を受けた。

   これに対し、ネット上では、処分が重すぎる、消防士がかわいそうだとの声が相次いでいる。どんな根拠から処分が行われ、妥当性はあったのだろうか。

  • 処分された消防士に擁護の声が(写真はイメージ)
    処分された消防士に擁護の声が(写真はイメージ)
  • 処分された消防士に擁護の声が(写真はイメージ)

消防士の行動後、いたずら119番はピタリと止まったが...

   習志野市がサイト上で行った2022年6月29日の発表や地元紙の千葉日報などの報道によると、1、2月に公衆電話から「火事が起きた」といたずらでかけた疑いのあるウソの119番通報が6件も相次ぎ、男性消防司令補(47)は2月14日、通報で駆け付けた同市内の店で、防犯カメラの映像を見せてもらい、通報者と特定した人物の映像を部下の私物スマホで撮らせた。そのうえで、この人物が関係すると思われた施設に出向いて、「この人を知っているか」と関係者に確認した。司令補は、このことを習志野署に事後報告していた。

   司令補のこうした行為の後、いたずらの119番はピタリと止まった。しかし、司令補が出動報告書にこうした経緯を書いたことから上司の目に留まり、市では、職務上知りえた情報を漏らした地方公務員法上の守秘義務違反などに当たるとして、司令補を停職3か月の懲戒処分にした。

   司令補は、「いたずらを食い止めたかった。悪意を持って行動したのでない」と説明しているという。

   その処分が地元紙などに報じられると、ネット上では、司令補を擁護する書き込みが相次いだ。「よくやったと思うけど」「これで処罰されるのは何だかな」「処分は重すぎなのでは?」といったものだ。

   一方で、その行為は職務から逸脱していたとして、「これが行きすぎた正義感というやつか」「警察官の仕事だろそれ」「もう少し冷静に行動する必要があった」といった声も出ていた。

   習志野市消防本部の消防総務課は7月1日、J-CASTニュースの取材に対し、司令補の処分について次のように説明した。

「違法行為は1つではなく、処分の内容は妥当だと考えている」

「第3者に防犯カメラの映像を見せるといった守秘義務違反のほか、カメラの映像を見て『捜査』の行動を取った個人情報保護条例違反や、私用のスマホを業務に使う市のセキュリティポリシーの内規違反もありました。これらを総括して、職務上の命令ではない規定外の行為をした地方公務員法第32条違反として処分しました」

   司令補は、自らの行為が違反になることに少し気づいていたというが、そのことへの反省の弁はなかったという。市では、処分を伝える際に、異議申し立てができると説明したが、司令補が申し立てに動いているかは把握していないとした。

   実は、司令補は、職員へのパワハラ行為があったとして、4月12日も市から10分の1の減給2か月の懲戒処分を受けている。21年12月に他部署のこの職員が自分の部下を注意したことが気に食わず、「生意気なんだよ。やるのか来いよ。表に出ろ」などと声を荒らげたという。

   このパワハラ行為も今回の処分に影響があったかについて、消防総務課では、ゼロではないとしたものの、今回の行為がパワハラ処分前であったことも考慮したとしている。

   これまでの司令補の勤務態度については、普通だったとし、これら2件以外の処分はないと説明した。

   ネット上で司令補を擁護する声が多いことについて、消防総務課では、認識しているといい、電話やメールでも、同様な意見が一部で寄せられていると明かした。処分が重いことは認めたものの、「懲戒処分の指針に照らし合わせ、審査して決めました。違法行為が1つではないことが加味されており、処分の内容は妥当だったと考えています」と述べた。

   いたずらの119番通報をした人物について、千葉県警の習志野署は7月1日、通報が相次いだ当時は捜査していたとしたものの、火災が起きた事実はなく、公衆電話上の指紋など証拠につながる情報がなかったため、現在は捜査をしていないと取材に答えた。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)