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ググって分からず図書館へ→2日で解決 こんなにすごい「レファレンスサービス」

   「皆さんも活用してみては!すごいよ司書さん!!」

   ある地名の由来を調べるため図書館を利用したところ、司書が調査に協力し、予想以上の対応に驚くツイートが話題になっている。図書館に理由を聞いた。

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千葉県我孫子市の地名「妻子原」の由来は...?

   話題となっているのは、ツイッターユーザー・事務員G(@ZimuinG)さんによる2022年7月4日の投稿だ。5つのツイートで経緯を報告し、5日には詳細をメディアプラットフォーム「note」で伝えた。

   事の発端は、千葉県我孫子市をドライブ中に「妻子原(さいしはら)」という地名表示を発見したこと。ツイッターでは「『妻と子の原...?何か歴史的な逸話が?』ってそれから毎日ずっと気になっちゃって」などと切り出した。

   名前の由来をインターネットで検索するも情報は得られず。後日訪れた都内の図書館で資料探しに苦戦していると、司書に声をかけられたという。その後の対応について、

「色々聞かれて、最終的に『少しお日にち頂けますか』って。電話番号を伝えて帰ったら、さっき、たった2日で電話掛かってきて」

とツイートしている。電話で伝えられたのは次のような内容だ。我孫子市民図書館への問い合わせや、ネット経由で国立国会図書館の資料を確認して分かったという。追加の調査も可能だと伝えられた。

「地元ではもともと『さいしっぱら』『さいしょっぱら』『さんしっぱら』...の様な発音で呼ばれていた地名のようです。(地名の訛りはきちんと文字化できない部分もある)」
「その由来は、妻子原がある場所が高台になっているので『日の出を最初に見ることが出来る場所』の意味で"最初っ原"となった説や、『山椒の木がたくさんあったから』の意味で"山椒っ原"となった説を確認しました」
「どこかのタイミングでその呼び名に『妻子原』という漢字が当てられ、近代にこの字を普通に読んだ『さいしはら』が地名になったと考えられます」
(事務員Gさんが公開したnoteより)

   予想外の丁寧な対応を受け、事務員Gさんはこのようなツイートで感動を表している。

「分からないことを司書さんに調べてもらったの人生初なんだけど、すごく嬉しかったです...!皆さんも活用してみては!すごいよ司書さん!!」

「問題集や宿題の答え、法律・人生・医療に関する相談など回答できないものも」

   発端となった投稿は、1万4000件以上のリツイートや6万件超の「いいね!」を集め、「すごいなー図書館司書ってそんなお手伝いもしてくださるの」「おそらくGoogleもたどり着けない境地 プロや...」「司書さんナイスプレイ!」といった声が寄せられている。

   事務員Gさんは5日のツイートで、調査には3人の司書が関わっていたと明かし、「『ぜひ皆様もお気軽にご利用下さいね』との伝言をことづかりました」としている。

   J-CASTニュースでは、7月8日、この調査を行った区立図書館のレファレンス担当者に話を聞くことができた。この担当者によると、ツイートやnodeで紹介された事例は、図書館の基本的なサービスにあたる「レファレンスサービス」に当たる。レファレンスサービスは「情報を求めている方に、調べている事柄の事実関係が分かる資料を提示したり、文献探しのお手伝いをしながら課題解決を支援する」ものだと説明した。

   この図書館では「資料をお探しされている様子の方や、なにか質問をされたいといった様子の方にはできる限りお声掛けをするようにしています」。基本的に複数人で調査にあたるという。

   質問は電話やファクス、手紙、公式サイトからも可能だが、「問題集や宿題の答え、法律・人生・医療に関する相談など回答できないものもあります」。図書館の公式サイトに詳しい案内が載っている。

   今回のレファレンスに関しては、「ご紹介できる資料がなかったため、参考になりそうな資料を所蔵している他の自治体の図書館に問い合わせを行っただけ」とし、「反響の大きさに戸惑っています」と驚いた様子だ。

年に2000件の質問が寄せられる

   この図書館では、年に約2千件の質問が寄せられるといい、「(質問が)多い時にはレファレンス担当が総動員で調査しても人手が足りないことがあります」。一方で、投稿が大きな反響を呼んだことを受けて、「まだまだ全国的にレファレンスサービスの認知度というものは低いのだということを感じました」とも話した。

   投稿者の事務員Gさんも、図書館は暇潰しで稀に訪れる程度で「司書さんに何かをお願いする事はないなと思っていました」と、6日の取材に答えていた。大抵の調べ物はインターネット検索で済ませるといい、

「いわゆるサーチ力にはある程度の自信がありましたので『意外とネットには載ってない事だらけなんだな』と思いましたね」
「司書さんが現地の別の図書館の司書さんに連絡してくださった事のように、司書さん同士のネットワークにも大変助けられたものだと思います」

などと図書館の機能に感心していた。今後の調べ物については自己解決を心掛けるとしながら、

「どうしても分からないときなどは『知のプロ』である司書さんのお力添えを頂くことで、効率よく資料に行き着く事ができると思います。そういう場合はぜひまた利用させていただきたいと思いました」

と話した。

全国の図書館から事例集めた「レファレンス協同データベース」も

   先の図書館の担当者は、投稿が話題になったことについて

「レファレンスサービスというものはどういうものか、どこまで回答してくれるのか、どんな質問が寄せられているのか、という疑問や興味を抱いてくださった方もいらっしゃるかと思います」

と話し、全国の図書館に寄せられた質問を国会図書館のウェブサイトに集約した「レファレンス協同データベース」の参照を勧めていた。さらに、レファレンスサービスを利用する際には「ぜひ出来るだけ時間の余裕をもってお尋ねいただけますと、担当者も落ち着いて調査できますので、より良い回答につながるかと思います」と呼びかけた。