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焚き火跡に発生「ツチクラゲ」が林を枯らす? 迷惑キャンパーへの警告拡散...専門家の見解は

   キャンプ用地以外で焚き火をしたせいで、マツの木などを枯らすとされる茶色いキノコ「ツチクラゲ」が発生したとして、キノコに詳しい人がツイッターで迷惑行為を止めるよう訴えている。

   バーベキューに使った炭のようなものが見える中で、脳みそのような茶色いものがいくつも地面に姿を見せている。

  • 迷惑キャンパーによる焚き火の跡(写真は、渋谷卓人@kinoko_bonsaiさん提供)
    迷惑キャンパーによる焚き火の跡(写真は、渋谷卓人@kinoko_bonsaiさん提供)
  • 迷惑キャンパーによる焚き火の跡(写真は、渋谷卓人@kinoko_bonsaiさん提供)
  • 焚き火跡に発生したツチクラゲ(写真は、渋谷卓人@kinoko_bonsaiさん提供)

「燃やした後の炭などを取り除いて隠した形跡があった」

   これがツチクラゲだとして、きのこ盆栽家の渋谷卓人(@kinoko_bonsai)さんが2022年9月11日、ツイッターに写真3枚を投稿した。

   迷惑キャンパーによる焚き火跡だといい、渋谷さんは、「これからキャンプ、登山シーズンになりますが、キャンプ用地など指定された場所以外での焚き火(特に林地)は絶対にやめてください」と呼びかけている。

   続く投稿によると、登山道の中腹で見つけたという。ここは、以前から焚き火の跡や埋めて隠したとみられる使用後のアルミホイルが見つかって、苦々しく思っていたという。今回も、燃やした後の炭などを取り除いて隠した形跡があり、「ツチクラゲというきのこを、このような状況で見つけたくはなかった...」と嘆いていた。

   渋谷さんは、「さすがに看過できない」と考え、この登山道周辺を管轄する市に対し、焚き火によるツチクラゲの発生を報告するとともに、焚き火禁止看板の設置を依頼したとしている。

   渋谷さんは12日、J-CASTニュースの取材に答え、ツチクラゲは、キャンプ場ではなく、登山道中腹の広場のように開けた場所で10日に見つけたとした。周辺の木については、これから枯れる被害が始まると考えていると明かした。

   ツチクラゲの生態について、林野庁所管の森林総合研究所(茨城県つくば市)で研究専門員をしている佐橋憲生さんが同日、取材に解説した。

「松原全体まではいかないはずだが、数メートルの範囲で被害がある」

   それによると、ツチクラゲは、キノコの一種(カビの仲間)で、普段は胞子の状態で土の中でじっとしている。山火事などで土の温度が上がると、競合する菌類が減ったり死滅したりすると同時に、高温が引き金となってツチクラゲの胞子が発芽して活動を始めると言われている。

「焚き火や山火事をきっかけに、ツチクラゲが発生しやすいのは事実です。マツの木などに病気を引き起こす能力があり、数年にわたって火が出たエリアの外側の木を枯らします。エリアの端から徐々に数メートルの範囲に被害が広がり、5メートルに達することもあります」

   また、ツチクラゲの被害でマツの木などが弱ると、マツ枯れ(マツ材線虫病)の病原であるマツノザイセンチュウを媒介するマツノマダラカミキリが衰弱木に産卵する可能性があるという。

「ただ、ツチクラゲ病は全国的なまん延が問題になっている『マツ枯れ』のように、大規模な被害を引き起こし深刻な状態になることはないと考えられます。小さな焚き火なら被害がそれほど大きくならず、ヘクタール規模で松原が枯れることは、たぶんないでしょう。大きな山火事の後ではそれなりに被害が大きいですが、焚き火なら、大きな被害になることはなく、ほとんど大きな問題になることはないと思います」

   とはいえ、海岸の松原では、ツチクラゲが発生するため、焚き火は厳禁だと自治体が看板を立てたケースもあったとした。

「松原の一部が枯れると、景観的に見栄えが悪くなってしまいます。また、マツが枯れますと、林業に被害が出ることもあります。焚き火を禁止するかは、自治体の判断によると思います。ツチクラゲの生態については、まだ分かっていないことの方が多く、科学的根拠に基づいた防除法がないのが現状だと思います」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)