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まるでアート?理科室にずらっと並ぶ骨付き肉 実は「生ハムの聖地」、廃校活用して製造

   小学校の理科室にスライス前の生ハムの塊、いわゆる「原木」と呼ばれる骨付き肉がたくさん吊るされている――こんな珍しい状況を映した写真がツイッターで驚かれている。

   実は、廃校を改修した生ハムの製造工場で撮影されたものだ。工場の取り組みについてメーカーに聞いた。

  • ツイッターユーザー・田村淳一(@tam_jun)さんの投稿より
    ツイッターユーザー・田村淳一(@tam_jun)さんの投稿より
  • ツイッターユーザー・田村淳一(@tam_jun)さんの投稿より
  • 廃校を活用した工場、写真提供:しらかみフーズ
  • 写真提供:しらかみフーズ
  • 写真提供:しらかみフーズ
  • 写真提供:しらかみフーズ
  • 写真提供:しらかみフーズ

理科室に肉塊、「ホラー映画みたい」の声も

   話題の発端となったのは、ツイッターユーザー・田村淳一(@tam_jun)さんによる2022年10月5日の投稿だ。「廃校を活用して教室で生ハムを製造している現場を視察。アート作品のような空間」と、実際の様子を写真で紹介している。

   入口の札に「理科室」と書かれた教室には、鉄パイプで組まれた枠組みいっぱいに、上下2段で沢山の生ハムの原木が吊るされている。

   田村さんが取り上げたのは、秋田県産の豚を使用した「白神生ハム」を販売するしらかみフーズ(秋田県大館市)の工場。同社公式サイトによると、廃校になった大館市の旧山田小学校を改修した。田村さんは投稿で「素晴らしい取り組みでした」と振り返る。

   投稿は6800件以上のリツイートや2万件超の「いいね」を集め、「廃校を利用した素晴らしい取り組みですね」と評する声があがったほか、写真の珍しい状況に注目して「ちょっと芸術性のあるホラー映画みたいです」「生徒が...とか思った私はホラゲーのやりすぎかしら」「『理科室』ってのが良いですね」と楽しむ声も寄せられている。

   工場の訪問目的について田村さんは6日、岩手県の地域産業の振興などに携わっていることもあり、参考のため訪れたとJ-CASTニュースの取材に説明した。撮影場所の理科室は、たまたま案内された場所だったという。

   しらかみフーズの代表取締役・夏井雅人さんも同日取材に応じ、反響に喜びを表した。「購入されたお客様から嬉しいお言葉を頂戴することも多々あり、コロナの影響で大変な時期もありましたが、諦めずに続けて良かったと実感しております」と述べる。

   また「アート、芸術性、ホラー、シュール、お化け屋敷などなど散見しますが全て励ましのお言葉と受け止めております」と伝える。

原木を「生徒さん」に例える夏井さん

   同社が販売する生ハムは、養豚以外の製造から出荷まで全てを元校舎の工場で行っているという。夏井さんは、「田村さんのツイートにありました白神生ハムは教室で卒業(出荷)を待つ生徒さん達でございます」とユーモアを交える。

   取材回答時点では、1年熟成と2年熟成の商品をオンラインショップで販売しており、年明けには3年熟成も加わる。

   毎年1月~3月に約1500~2000本を手作業で仕込むといい、具体的には成形、血抜き、塩すりこみを経て1か月ほど寝かせ、塩抜き後、熟成庫にあたる校舎2階の教室に吊り下げる。現在は約3500本が熟成中。「年2回、教室内の席替え(生ハムの位置替え)も作業の一つです」と夏井さん。

   熟成庫のほか、当時の1年生教室を生ハム造り体験室、給食室は製造室、教材室を資材保管室、職員室を事務所、などといった形で転用している。

   校舎は11年前から賃貸物件として市から借りている。その背景として、同規模の工場を一から建造した場合は莫大な費用がかかってしまうと事情を説明。地域住民にとって思い出深い小学校を、外観はそのまま、内装を改修して活用することにした。

   ただ、白神山地の麓に位置する元校舎を活用するにあたり、生ハムの敵となる虫には煩わされている。窓の内側に網を設置したほか、冬以外は常に虫の侵入を監視する必要があるうえ、校舎周りの広大な土地の草刈りも頻繁にしなくてはならず、「体力的にも苦労しております」と裏側を明かす。

「最後に行き着く生ハムの聖地」

   元校舎を工場にするメリットとしては、南北に大きな窓があるため、生ハム製造初期の表面乾燥にもってこいの環境と説明。さらに1本12キログラムの生ハムが数千本、という重量に耐えうる鉄筋コンクリートの構造も重要だという。

   工場について、少人数の見学は予約限定で受け付けている。タイミングによっては、原木から切り出した生ハムの試食が可能な場合もあるという。

   夏井さんは、同社の生ハムを次のように誇っている。

「国内の生ハムを食べつくした猛者様から以下のようなお言葉をいただきました。『最後に行き着く生ハムの聖地』。うれしいですね!聖地に恥じぬようこれからも衛生面第一に考え皆様に愛される生ハム造りに励みたいと思います」