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赤ちゃんの「おしりふき」は口まわりにも使える? SNSで議論...業界団体・メーカーは「使用可能」

   赤ちゃんの「おしりふき」を手や口まわりにも利用して良いのか、ツイッターで議論になっている。発端は、子供の口まわりをおしりふきで拭っていた女性が怒声を浴びていたという目撃談が拡散されたことだった。おしり以外への使用の是非はたびたび話題になるが、実際に使用は可能なのか。

   J-CASTニュースは2022年10月上旬、大手2社と業界団体を取材した。

  • 赤ちゃんの「おしりふき」は口まわりにも使える? 
    赤ちゃんの「おしりふき」は口まわりにも使える? 
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「お口まわりの拭き取りにもご使用可能です」

   おしりふきは、主に赤ちゃんのおむつを取り替える際のおしりのふきとりを想定した商品だ。パッケージには、手や体の拭き取りも可能だと記載されていることが多い。多数のおしりふきメーカーが所属する業界団体・日本衛生材料工業連合会(以下、日衛連)も公式サイトで次のように説明する。

「化粧品基準に基づいて設計・製造された基布含浸型化粧品で、主に赤ちゃんのおむつ取替え時のおしりふきを目的としたものです。おしりの他に手や身体ふきにも使えます」

   それでは、口まわりは可能なのか。取材に対し日衛連は、手や体はもちろん、口まわりにも利用可能だと答えた。おしりふきは医薬品医療機器等法(薬機法)で化粧品に定められており、その基準に従っている。

   ベビー用品ブランド「ムーニー」でおなじみのユニ・チャーム(東京都港区)も、「お口まわりの拭き取りにもご使用可能です」と回答。「おしりナップ」という商品名でおしりふきを販売するピジョン(東京都中央区)も、「おしりだけでなく手や身体などお肌全般のふき取りにもお使いいただけます」と述べる。

   日衛連によると、厚生省(当時)の複数の事務連絡によって、乳幼児の皮膚の清浄に使用する旨を標榜する清浄用綿類(紙綿類を含む)は、使用部位を限定せずに基布含浸型化粧品として取り扱われている。おしりに限定した用途を標榜した商品は特記表示に当たるおそれがあるという。

「ウェットティッシュ」との違いは?

   おしりふきとウェットティッシュには違いがあるのか。日衛連は公式サイトで次のとおり説明する。

「『赤ちゃんのおしりふき』は薬事法上は化粧品に分類され、一般的に皮膚の弱い乳幼児を対象としていますので、原料の不織布も液成分・分量もより安全を考慮しています。
これに対し、一般用の『ウエットティシュ』は乳幼児以外(老人を含む)を対象とした商品です。使用用途は『健常な皮膚の汚れの除去・ふき取り』です」

   さらに東京都の公開する「妊産婦・乳幼児を守る災害対策ガイドライン(2014年3月改訂)」でも、次のように説明されている。

「ウェットティッシュは、手、皮膚等を清潔にするために使用する、不織布(レーヨン等)を、(社)日本衛生材料工業連合会の安全衛生自主基準で定めた成分液に浸すものである。おしりふきと異なり、薬事法の適用は受けない、油脂の除去のために、アルコール・洗浄剤を含んでおり、乳児の肌が傷む場合がある。
一方、おしりふきを通常のウェットティッシュとして使用することは可能」

   ピジョンも災害時への備えとして、おしりふきを推奨している。

「『おしりナップ』は災害時、水が使えない時などにお子さまの身体を拭いてあげたい、という時などにも非常に役立つアイテムです。このお話をお客様にお伝えした際『その発想はなかった!』というお声が多かったので、このことを広く知っていただき、いざという時の備えとして『おしりナップ』を少し多めにお持ちいただければ幸いです」

   このように「おしりふき」はおしり以外のふき取りにも便利だが、人体以外への利用は想定されていない。ピジョンは、「テーブルなど対物への使用はメーカーとしておすすめできない」と述べた。

「手口ふき」とは?

    また多くのベビー用品メーカーは「おしりふき」とは別に、手や口をぬぐうことを目的とした商品も販売している。

   ピジョンでは、口回りや口に入れやすい手などのふき取りには食品用原料で製造している「手・くちふきとりナップ」を推奨している。こちらもおしりふき同様、「化粧品」として薬機法上の対象商品に指定されており、災害時の備えにもおすすめだという。このような商品展開には、次のような意図があるという。

「赤ちゃん向けのナップ類の使用方法については様々なお考えがありますので、当社は『選択肢があること』がとても大事だと考え、ラインアップしております。皆さまのお気持ちやお考えに近いものをお選びいただければ幸いです」

   ユニ・チャームも「手口ふき」を販売しているが、次のような違いがあるとしている。手口ふきは、肌当たりのよい不織布を採用し、ふき取り後にベタつきにくい含侵液(水分)を調整しているという。おしりふきは、便をふき取りやすくするために含侵液を多めに含んでいる。ただし、いずれも社内の厳格な安全基準に基づいて生産していると念押した。